9.19〜24日記

9.19月
ドヤで迎える朝。お昼から北加賀谷造船所跡地に出勤。今日もデザインフェスイベントで流しの過酷なお仕事。昨日で細馬さんは帰ってしまわれたので、今日のもうひとりの流しミュージシャンは京都の長谷川健一さん。控室で実行委員さんたち数名と打ち合わせ。途中で今回誘って下さった岸野雄一さんが到着して、お顔みたらちょっと元気が出た。何故なら、わたし昨日からのこの流し仕事、誰一人面識もなく完全アウェーなところへひとりでほっぱなされていたので、こう見えて人見知りしちゃう人間やから、無理して気張って社交的に頑張ってはいたけど正直限界なのでござった!でも岸野さんにお会いしたらパーって気持ちが明るくなった。打ち合わせで、やはり企画的にふたり一緒に歌える方がいいということになって、長谷川さんの100曲レパートリーの歌詞本を見ても、ほとんどの曲知らないわたし! 一緒に歌えそうなのを一生懸命探し、「にんげんていいな」「アンパンマンマーチ」など童謡をご一緒することに決まり、しばしふたりで練習。そして本日も長丁場、流しのお仕事がんばりました。流し感を大事にという企画意図のため本日はマイクも取り上げられ、あんな体育館ぐらいあるざわざわした会場で声聞こえないし泣きかけでしたが、岸野さんがマイクあった方がいいよねって鶴の一声を上げてくださり、途中からマイク使わせてもらえてちょっと救われました。後半はもう流しとかだんだん関係なくなってきてて、(というかあの環境ではほんと成立しない!)長谷川さんとこっち側で勝手に決めた曲をどんどんやったりしちゃったけど、やっぱりそういう方が圧倒的にやりやすかった。わたしたちミュージシャンはそもそもが蚊帳の外感満載の立ち位置だので、その達成感を分かち合うことはどう考えても無理やったけど、イベント自体はすごく盛り上がっていて、実行委員さんや200人いるらしいボランティアスタッフの方たちもすごく充実感に溢れていて、そういうのを傍から見ててああそうか、これはちょっとアカデミックでインテリ寄りの学祭と文化祭みたいなものやったのかって気づいて、そういえばわたしは学生時代からそういう行事ごとではいつも肩身が狭くて居場所がないものやったから、それはこうやって大人になった今でも変わらないものやわあって実感。色々過酷な二日間やったけど、でも岸野さんがトークの中でおっしゃってた、「ストレスがあるから人生は豊かになるんですよ」って言葉がすごく響きました。確かに、わたしはきっつーて思いながらも、なんやかんやこういった場で居場所なくてしんどい気持ちになることも、ひえ〜なにこれっでもこの状況ちょっと笑えるやんおもろっなんかのネタになるかも、みたいな別の意味ですごく楽しんでいたし、このようなしょっぱい経験はすごく大切なこと。勉強になった二日間やった。打ち上げは凄まじい人数でアート界隈の内輪の方々でどんちゃん騒ぎが予想されたのでわたしは今日も不参加、変わりに岸野さんとふたりでサイゼリアでお茶しておしゃべり。この時間がいちばん楽しかった☆ 深夜、電車がなくなったのでタクシーでドヤに乗りつけるというVIPな帰り道。しかしこの運転手が「西成警察のそばなので西成警察目指してください」てゆうたらめっちゃびびりだしてすごい嫌そうな顔して屁理屈ばっかりこねだして、結果的にすごい遠回りされたし、最後の最後までしょっぱい日やった。

9.20火
朝から大阪は台風が到来。ドヤは早朝から物々しい感じで日雇い労働者のおっさんたちはこんな日は仕事もないし、でもお天気心配な模様でずっと入口のドアに鈴なりになって張り付いてて、それがなんか可愛くってきゅんとした。アウトドア系の(要するに公園で段ボール暮らしの)おっさんたちは身の危険を察して、なんとかしてドヤに入れてもらおうと必死に受付でゴネていて、でも受付のおばちゃんは逞しく断っていた。一階の受付のそばの部屋だったので、そういうやり取り全部聞こえるからずっと楽しかった。夜は台風一過して雨やんだので、徒歩で味園ビルへ遊びに行った。道中、西成パトロールしてみたけど、飲み屋も壊滅的に「台風の為休みます」て書いてて、ジャンジャン横丁も結構閉まってる店あった。味園も人通り自体があんまりなく静か。まずは銭ゲバでムヤニーさんとおしゃべりして、その後一緒にアニマアニムスとマンティコア、と3軒飲み歩いた。わたしそもそもお酒飲めへんからバーに行くって習慣がないし、東京でもゴールデン街とかはパンピーお断り業界臭が怖くって、あと普通にチャージ高いし、だからまだ片手で数えるくらいしか行ったことないけど、味園は銭ゲバなんかチャージないし、他もあっても200円〜500円くらいで安いし、業界臭も別にないから楽チンでふらっと遊びに行きたくなる。マンティコアで店主リシュウさんたちと映画館あるあるを喋っててリシュウさんがすごい可愛い映画館エピソードを披露したり、映画館おしっこ問題から大人おむつがいちばん効率がいいって結論になったりして爆笑。愉快な人たち。今日は終電あるうちに帰路。

9.21水
朝からちょっとメルマガ用の勝手な取材がてら某地へ。でもちょっと思ってたんと違うくって、またしてもメルマガのエッセイ原稿に今月も悩んでいる。昼から西宮の、わらびすこ舎元副舎長Mちゃんが今年の春にオープンしたセレクトショップquiet room http://thisquietroom.com/へ遊びに行く。すごい、おもてた以上にしっかりちゃんとお店屋さんになってて感動! お金が山盛りあったらほしいもの色々あったけど、貧乏なのでMちゃんおすすめのライオンボール(コーヒー茶碗にライオンの顔がくっついてる作家さん手捻りの器)を購入。Mちゃんが惚れ込んで買い付けたらしい片桐功敦という人の『Sacrifice―未来に捧ぐ、再生のいけばな』ていう被災地に移り住んで現地のまさかのあんなものやこんなものに花を生ける写真集がすごいかっこよくて感動した。途中からバイヤーIちゃんも合流して、可愛くラッピングしてくれた☆ 「喫茶ファンタジーと喫茶ドリームどっちがいい?」ときかれ、近い方の喫茶ドリームへ3人でお茶しに行くことに。なかなか不思議なお店やった。アイスコーヒーが最初からシロップ入ってる甘いやつで懐かしかった。いきなり大雨が降りだして、今日は天気晴ってなってたから傘持って来てなくて、止むまでしゃべろ〜て感じで3時間ぐらいおしゃべりしてたけど止むどころかどんどん大雨になってきたので、Mちゃんがお店に余ってる傘を取りに行ってくれて、傘お借りして帰路。

9.22木
朝、ドヤをチェックアウトして名残惜しくも西成とグッドバイ。30分前におばちゃんが起こしに来た(とっくに起きてたけど)。なんか寮母さん的な存在なんかな? 喫茶ニュープリンスでモーニングして、そこから某有名ヤクザ事務所A組の事務所の前を社会見学しに行く。西成のど真ん中に普通にあって、すぐ隣はぼろっちい民家やったり、個人商店やったりするし、別に警備員が見張ってるとかもなくって、すごい自然にあってびっくりした。キャッツアイ事件のK口親分(映画『ヤクザと憲法』の主役の)とかここにおるんかな〜とか考えたらワクワクしちゃうね。ひとりで社会見学して、梅田からバスに乗って名古屋へ。2時間半くらいで着くので名古屋大阪間はバスでも楽々☆ 名古屋について、ちょっと時間あったのでトランク引きづりながら前から行きたかった(前いったら閉まってた)喫茶すずっていう喫茶店へ。おじいちゃんマスターとママさんがやってる素朴な喫茶店で居心地抜群。奥のテーブルで保険屋らしい兄ちゃんとママがしゃべってて、なんで昔からの喫茶店てこういう中二階な感じの作りが多いかなって思ってたけどその謎が解けた。昔は消防法的に普通に二階建てが建てられへんかったらしい。喫茶すずを出て、JR名古屋から中央線で高蔵寺。会場のカフェ花音へ。ちょっと早く着いたので店主M橋さんとおしゃべりしてたら、ツーマン相手の日比谷カタンさんも到着。2曲ほど一緒に演奏する曲があって、でも合わせるのははじめてやったのでそれの練習。す、すごくむずかしー! ドタバタ開場時間になったので片づける。開演までの時間、向かいにすごくいいスーパーがあるっとカタンさんが言うので、一緒に行ってみる。クリエイトっていう一見ドラッグストアやけど広くて殆どスーパーみたいに品揃えよくて安くて、確かにこれはすごくいいスーパー。カタンさんは見かけによらずスーパーが好きらしい。わたしも好き。開演になって、まずはわたしのソロを50分ぐらいやって、その後カタンさんソロ、ほんで最後にきゃりーぱみゅぱみゅの「もんだいガール」と乃木坂46の「制服のマネキン」を一緒にカバーしました。カタンさんのライブ、ひさしぶりに拝見したけど、見る度に違う、小芝居をしても、時事ネタをいじっても、「シン・ゴジラ」ネタをやっても、なにやっても圧倒的に面白い! おなか抱えて笑った。お客様もあったかくて、みんな、拍手もなく微動だにせずにシーンと聴いてくださって、でもMCでは笑ってくださって、すごく幸せな環境でのライブやった。東京から来てくださった方もいて感激。終わってしばしお客さんと歓談し、その後、花音はいつも晩ご飯を作ってくださるんやけど、鮭のトマトチーズ焼き、サラダ、おしんこ、おみそ汁、どれもすごくおいしくて愛情たっぷり栄養たっぷりご飯をいただいて満腹で身も心も満たされた。打ち上げでカタンさんと花音のM橋さんご夫婦、スタッフNちゃん、花音常連M浦ファミリーたちと深夜1時半ごろまで語らい、その後上のゲストハウスに、カタンさんスタッフNちゃんわたしの3人で泊る。順番にお風呂に入り、蒲団を3枚並べて就寝。カタンさんは寝付くスピードびっくりするぐらい速く、わたしとNちゃんはピロートークというか寝入るまでにお蒲団の中でたぶん4時ぐらいまでは語らっていた。なんか修学旅行みたいで楽しかった。

9.23金
7時にはひとりで目が完全に覚めてしまったので、キッチンの方でしばらくパソコン開けて文章書いたりしてて、8時半からNちゃんの目覚まし、シンゴジラのテーマが鳴り響きまくり、スヌーズ機能で何回も流れて面白かった。結局みんなばっちり起きたのは10時とか11時とかで、下の喫茶花音に降りて、3人で超豪華なモーニングをいただく。花音でライブすると上に泊れるどころかなんと1泊二食付きで朝ごはんまで作ってくださるんである。サラダ、ゆでたまご、ヨーグルト、ホットドック、ハムロールパン、コーヒー。朝からこんなしっかり良いごはん食べるなんて。満腹! 食べた後またちょっと上の部屋でゆっくりして、昼過ぎにカタンさんとスタッフNちゃんは今日は鶴舞でライブなので、いってらっしゃい。わたしは今日ももう1泊泊めていただき、上の部屋で小説の続きを書いたり調べものをしたり。家ではついつい本とかテレビとか誘惑あって気が散るけど、旅先はそういうのがないから書き物が捗る、気がする!どこかおでかけしようかとおもったけど、結局ずっと上の部屋で過ごした。夜、花音店主M橋さん夫妻にお茶にお呼ばれして、閉店後の喫茶店でコーヒー飲んでくりきんとんをいただいた。ほんまにわたし、名古屋きてずっと食べてるんちゃうか。花音にはM橋さんの愛娘1歳9か月のRちゃんと、常連さんの娘さん3歳くらいのKちゃんというちびっこふたりがいて、わたし子ども本来苦手なのに、このふたりはなんか不思議とわたしなんかにも懐いてくれて、昨日今日と結構遊んだ。子どもがしゃべる名古屋弁がめっちゃんこ可愛くってときめいた。子どもは絶対標準語より方言交じってる方が可愛いよね。可愛さが5倍増しになる。なんか、ふたりと遊んでると、わたし子どもいけるんかもて錯覚を起こしますがたぶん気のせいです。

9.24土
早朝6時に花音ハウスを出発し、名古屋駅からバスで今日のライブの現場、山梨富士吉田へ。わたし名古屋〜富士山間って近いと思ってたら、かなり遠かった。4時間ちょっとかけて到着。バス停下りると今日の主催のN植さんが迎えに来てくださってて、こそぶる雨の中、まずはN植さんちへお邪魔する。N植さんちはほんとに森の中にあるすごく可愛い全部が手作りなおうちで感動。ここはギャラリー兼雑貨屋さん兼喫茶店? のようなお店でもあって、奥様がお茶とお菓子を出してくださる。しばし談笑し、わたしとN植さんはいづみやという食堂へ。ご主人と奥さんがふたりで営む田舎の食堂って感じですばらしい。わたしはたぬきうどんを食べた。昨今富士山は外人観光客が増えてるらしく、いづみやでも我ら以外全員外人というやった。ごはんのあとは一旦ホテルへチェックインして、準備して、また5時すぎにまたN植さんが迎えに来てくださり、車で会場へ。月江劇場は地元の劇団さんがもっている劇場?兼稽古場というか、元々は誰かの民家やったのを改造した感じの、すごく誰かの実家感が溢れる素敵な場所。N植さんはじめ地元の劇団民の方々が手伝ってくださり、ライブは2部制でたっぷり2時間歌いました。ライブってほんとに場所によってお客さんの空気が違うくて、名古屋はシーンとみんな息もひそめて聴いてくださる感じやったけど、山梨はほっこりあったかい感じで拍手もめっちゃするし、MCにつっこみも入れてくださる和やかな感じ。どっちもいいけど、どっちも東京の空気とは全然違うから、新鮮でありがたかった。終わって、この月江寺周辺はええ感じのレトロな飲み屋街が並んでて、劇団員さんが経営しているピンクフラミンゴというお店で打ち上げ。ごはんもメニュー豊富でおいしいし、飲み物もソフトドリンクも充実していて良いお店やった。そして山梨のみなさま、とっても愉快な方々で終始楽しかった。1時すぎにお店を出て、劇団員の方にホテルまで車で送っていただき、さすがに身体は疲れているのでベッドにどーん。でも2時間で目が覚めて、4時ぐらいにホテルを出てひとりで夜中散歩をした。色んな虫が鳴いてて気持ちよかったけど早朝の富士山、極寒やった。長いツアーが終わるなあ、名古屋も山梨も、地方に行くとものすごく手厚くもてなしてくださるから、楽しいし良い気分が味わえる。でもこういう良い気分にばっかりさせてもらって調子に乗ってたらあかん。ちゃんと身の程を弁えて、明日からは足立区へ帰って背筋を正して生きていかないといけない。