9.25〜10.2日記

9.25日
朝、富士吉田のホテルをチェックアウトして、しばしおみやげ屋さんをひやかし、それから鈍行列車で東京の方へ向かう。いや、東京の方というか、横浜、今日は東京へ帰るんじゃなくてこのまま直で横浜黄金町へ行って、試聴室のキメうた選手権で審査員をしにいくのであーる。キメうた選手権て言うのは要するにカラオケなんやけど、ミュージシャンたちが本当にカラオケでトーナメント戦で勝ち上がっていくとても白熱する戦いで、毎年試聴室でこの時期にやってるイベント、わたしは一昨年も審査員でお呼ばれして、去年は違うライブで出れなくて、ほんでまた今年審査員。14時頃に試聴室についたらもうすでに盛り上がってる感じ。そして審査員席が今年はちゃんと椅子が用意されていて感動! 今まで地べたで、しかもお客さんがどんどん増えてくるとアウシュビッツ状態で身動き取れず6時間ぐらい審査しないとあかんかって、身体的にかなりきつかったけど、これが今年からはかなり楽チンに。とはいえ、戦いは熾烈で審査するのはメンタル的にきつい部分もたくさんある戦いやった。15時開幕で、しょっぱなから我が盟友飯田華子さんが。わたしはもう、個人的な感情のみで審査しまーすと最初に宣言してたので、堂々と飯田さんに票を入れれた。飯田さんはどんどん勝ち抜いていって結局決勝の3人にまで残り、ミュージカル瞳ちゃんをやったときのアキラさんの恰好で出てきて、大阪ヤクザエレジーみたいな小芝居をやりながら歌った中島みゆき「命の別名」がめっちゃ感動的やって(最後撃たれて血を吐いて絶命)、普通にわたし泣いてしまった。ところで感動したといえば、歌の戦いとは違うところで、わたしの真ん前の席が審査員長大谷能生さんやったんやけど、司会で店主の三沢さんと要所要所でこっそりアイコンタクトとりながら進行してて、カラオケ機材が調子悪くて三沢さんが困ってるときとかも率先して原因究明したりしてて、そういう仲良しの男同士の助け合い、みたいなのを間近で見れて勝手にきゅんとしていた。色んなドラマがあったキメうた選手権やった。長丁場やったけど楽しかった。帰りは飯田さんと足立区まで一緒に1時間半かけて帰還。ツアーでも色々を飯田さんに聞いてもらったりして、ひさしぶりにおしゃべり出来てうれしかった。このまま飲みに行きたかったけどわたしはこのまま明日朝から労働やったため泣く泣く帰宅。8日ぶりに帰宅した我が家。雨続き&湿気がとても溜まりやすい家なので、壁にちょいちょいカビ的なものが生えていてショック! そしてなぜか蜘蛛屋敷かってゆうぐらい蜘蛛が這っていた。

9.26月
シャワー浴びて朝、わたしはすっぽんぽんで髪を拭きながら究極の選択を迫られていた! パンツが! もうないのであーる! もともと下着の数が少ない上に、ツアーで洗ってない洗濯物を詰めたままのトランクは富士吉田から宅急便して、届くのは今日の夜。昨日履いてたパンツをそのままもう一回履くのか? いや、それも気持ち悪くていやよね。よし、もうこの際、ノーパンや! と、人生で初のノーパン出勤というのをしてしまった! 31歳にして! ノーパンデビューであーる! ノーパンとはいえ、わたしの職場では一応黒いタイツで膝丈の黒いスカート、エプロン、と、しっかり下半身は覆っているのでね、陰部が剥き出しというわけではない! なので、そんな卑猥な感じはないのです。ノーパンでタイツ直ばきというのは最初すーすーして気持ち悪いけど、ものの10秒ぐらいで慣れて、そこからはもうノーパンであることも忘れて普通に元気に夕方まで労働した。勿論誰にもばれていないし口外していない。意外とノーパンでも問題なく過ごせる、労働も出来るということが実証されました☆

9.27火
昨夜からモーレツにメルマガの原稿を書きまくり、なんとか書けたので編集M井さんに送って、すっきりして夜は浅草橋ルーサイトギャラリーへ、千絵ノムラさん主宰のお芝居を見に行った。清水邦夫って人の脚本が面白いのか、全員元唐組系でお芝居自体が上手な方々ばかりやからか、テンポよくっておもしろく見れた。しかしルーサイトほんとにいいロケーションやな。「女中たち」のときを思い出す。隅田川にはピンクや紫にライトアップされたお船がぷかぷか浮いていて、橋の上を総武線ががたんごとん言うのも良い。しかしこの清水邦夫脚本の「楽屋」ていうお芝居は、芝居小屋の楽屋に住み着いた、一生プロンプターのまま死んじゃった女優の幽霊が、夜な夜な女優さんごっこをしているというようなお話なんやけど、「女中たち」にすごく似ているおはなしでびっくりした。「女中たち」は夜な夜な奥様ごっこをしている女中姉妹の話やったので。片や日本片やフランスやけど、シチュエーションが結構かぶる。そしてどっちの脚本もこれ、女優さんがやりたがる作品なんやってね。わたしは去年からちょっと女優的なこと時々やらしてもらったりしてるけど、メインは女優ではないからその心意気はわかるようでわからん。

9.28水
朝からちょっと映画の劇伴の音楽と格闘して、お昼から中野の某所へ。K井さんにお声かけてもらって、わたしが日本でいちばん大好きな某最強劇団K組の稽古を見学させていただいた。これがもう、めっちゃんこすごい現場で終始震えながら拝見、とっても貴重な体験をさせていただいた! あんまり内側のことを外に漏らすのは美しいことじゃないのでこんな日記なんかには詳細は書けません。稽古のあと、K井さんと、K井さんと仲良しの編集者のGさんと3人で飲み屋。最初はちょっとこじゃれた感じのワイングラスとかぶら下がってる感じのお店で飲んでいたのやけど、若者がわっしょいしてて賑やかであんまり落ち着けなかったので、ちょっとして出て、2軒目、静かそうな大衆酒場の2階席へ。ここは安くて寛げて静かに喋れていいお店、やっぱり大衆酒場万歳。愉快な話をたくさん聞いた。閉店まで楽しく語らって、あ〜今日はなんだか本当にすごいものを見て聞いて、すごく刺激的な日やった。

9.29木
朝イチ病院。電車が遅延しててちょっと遅刻。採血の看護婦さんがめっちゃ下手くそで、腕に立派な10円玉サイズの血だまり内出血が出来上がって、これじゃまるでシャブ中の腕やんけ! がーん! 病院後、中野へ。パソコン持ってきていたのでミスドでちょっと小説の続きを書く。ミスド、ひさしぶりに来たらいつのまにかロイヤルミルクテイーのおかわりまではじまってた! とはいえわたしはカフェオレ派。この店は店員さん親切におかわりをわんこそばレベルの素早さでがんがん注ぎに来てくれちゃうから、どんどん飲んじゃって最終的にオエっと餌付く。2時間ぐらいわんこカフェオレして小説を書いて、それから今日も某稽古場へ。K井さんに明日も来る?っておっしゃっていただいたので、本当にのこのこ来てしまった。そして今日のお稽古もものすごーくドラマチックで、そう、K組はもう稽古からドラマチックで、なんというか、おすもうでいうところのぶつかり稽古的な、パーソナルのぶつかり稽古って感じで、すごく見ていておもしろいし胸が熱くなる! それ以上の詳細はやっぱりこんなとこには書かない方がいいやろって思うので書かれへんけど、今日も凄まじいものを見せていただいた。終わって今日もK井さんとGさんと昨日と同じ大衆酒場へ。今日もとっても楽しいおはなしをたくさん聞いた。

9.30金
普通に労働。今日はちゃんとパンツ履いていった(当たり前)。特筆すべきことはなし。

10.1土
今日は待ちに待った、東京拘置所開放デー! 一年に一度だけ、東京拘置所の門が開かれて、一般人もその敷地内に入れる、拘置所のお祭りの日。去年も一緒にまわったけど、ご近所の、わたしの唯一の女友達I田さんとふたりで連れ立って遊びに行った。あいにくの天気予報やったけどなんとか雨は上がり、曇天。でもこれぐらいの灰色の空がよく似合うのが小菅の町。形だけの手荷物検査を突破して、いざ拘置所の敷地の中へ! 今年はちょっと乗り込んだのが遅く、13時に行ったら、なんとプリズン弁当はもう売切れ! がちょーん! でもきっと、去年とおなじようなラインナップやと思うので知ってる味やろう、と潔く諦める。グルメにありつけなかった代わりに、今年は体験ものをやろう!っと、消防車のはしご車?あの高いところまで登れるやつ、あれの体験をやってたから二人で並びに行ったら、これは抽選で当たった人しか登れないやつやったガッデム! なかなか選ばれし人しか楽しめないのがこのお祭りなのかもしれない。これまた諦めて、今度はショッピングへ。日本全国の刑務所や拘置所の人々が作業所で作ったらしい、小物や日用品なんかが結構安く売ってたりする。I田さんとお揃いで、横須賀刑務所の人が作ったピンクのカニさんの石鹸を買った。どっかの女子刑務所がレース編みをしたやつを売ってて、ちょっとゾゾっとした。それから開かずの門の前で記念撮影したりして、性格診断テストコーナーへ。これは少年鑑別所がやってる、精神鑑定的なやつの簡単なマークシート式のテストで、結果をその場で出してもらえる。わたしはなんと、繊細さの棒グラフがMAXで、「あなたは大人しく控えめでデリケートな感受性の持ち主です」とか書かれてしまってすごく恥ずかしいし最悪! わたしは、わざと人に嫌味を言うときに罵る表現として「○○さんは繊細ですもんね」とかゆっちゃうタイプなので、繊細って褒め言葉じゃなく罵倒の言葉。まさか自分がそんな結果になるとは、、、最悪や!でもそれ以外はそこそこ当たってる結果やった。I田さんと結果票にらめっこしながら、拘置所を出て、お弁当買えなくておなか減ってきたので、我らのいきつけの飲み屋Kちゃんへ。ぬかづけ、モツ煮、しょうが天で乾杯。I田さんとは週に1回は会いたいのやけど、このところツアーとかで会えなくて、こないだもキメうた選手権でどたばたの中やったからじっくり喋れず、今日はひさしぶりにゆっくりじっくり会える日。Kちゃんで3時間ぐらい飲んで、今一緒に作ってる共作の本の打ち合わせなんかもちゃんとしつつ、その後I田さんちへ移動して二度目の乾杯。ここですごく面白い事件が起きた! さっきふたりで西友に買いだしに行って、そこでI田さんはワインを1本買ったのやけど、これを開けようと家でコルク抜きを刺したのに、コルクが固すぎて棒が刺さったまま抜けてしまった! それを頑張って抜こうとあれやこれやの手を尽くし、2時間格闘するも全然抜けない。アイスピックをコルクに刺して崩していく作戦に出たのやけどそれもダメで、今度はアイスピックの棒が刺さったまま抜けてしまった! コルクはうんともすんとも動かない。I田さんはワインを目の前に2時間、ずっと飲めないなんてこれ、目の前のにんじんぶら下げられて食べれない馬の如し。アイスピックが刺さったコルクをこのまま逆に、抜くんじゃなく押し込む作戦に変更し、トンカチないので櫛の背の固い部分でトントンしてたら、カーン!と元気な乾いた音が鳴り響き、なんと今度はこの櫛がまっぷたつに折れた! ええええー! ちょっとこのコルクのクラッシャーっぷりえげつないやろ! I田さんちのものいくつ壊すねん! 結局もう一度西友行って、ちょっと高めの、腕を万歳させるみたいな形のコルク抜きを購入。帰って再び格闘。抜けないアイスピックなどが刺さったままのため、これでもなかなか空かない。苦労に苦労を重ねてやっと、あいた! わ〜おめでと〜! ってすごくわたし拍手喝采を送ってしまった。あいたら早いもんでI田さんはものの1,2時間でワイン1本飲み干してしまった。さすが! ここ数日間の近況報告などをI田さんに聞いてもらったりして、とても楽しい宴。12時過ぎまで飲んで、今日は11時間一緒に遊んだわけか。あ〜楽しかった!

10.2日
すっかり寒くなったので冬布団を出して干した。それから洗濯もして干して、ピアノの練習。映画の劇伴をちょっと3曲くらいまた作って監督さん側に送って、あとは今夜のライブの練習。今夜はかの友川カズキさんの前座をさせていただくのであーる。夕方、赤坂の会場へ。到着したら、もう友川さんはいなくて、リハ一瞬で終わらして飲みに行ったそうな。はやっ! で、わたしもリハ、たぶん15分ぐらいで終わった。まあ今日はピアノ弾き語りやからそんな大そうな感じちゃうしね。早くリハが終わり、今月は25日もここ赤坂でタブレット純さんとのライブがって、そのテーマソング「ムーンライト赤坂」を作らないとあかんので、しかしわたし赤坂がどういう街かさっぱりしらないのでちょっくら取材がてら散歩したけど収穫なし。会場戻って、開演、まずはわたしの前座。途中で飲み屋から帰還された友川さん、わたしの「千の針山」「解放」という坂口弘シリーズを気に入ってくだって感激やった。友川さんのライブは素晴らしかった。ずっと色んな物事に対して怒っているのに、ちゃんと面白いしかっこいいってすごいこと。怒りの感情を忘れたらあかんってすごく背筋を正された想いやった。「青いアイスピック」て歌が、ホームレスの歌で印象的やった。終わって、お客さんやスタッフさん率いて総勢20人ぐらいで打ち上げへ。近くの安くておいしい中華料理屋さん。友川さんは飲みの席ではとてもクレバーで、酔っ払いつつも気配りを常に忘れない、そしてサービス精神も満点でみんなを笑かしてくれる、素敵な酔っ払いやった。坂口弘の話ができたのがめっちゃうれしかった。お隣の席でおしゃべりしててお顔を近くで拝見しているとものすごく眼光が鋭くて、あれは殺傷機能になる眼光やと思った! とても楽しい打ち上げやのに、わたしは終電のためお先にお暇。駅まで走ってたら、2回転びかけたけどぎりちょんで転ばなかった。