9.12〜18日記

9.12月
普通に労働。料理長が手作り雪見だいふくくれた。美味。あの雪見だいふくの表面のうすいおもちって売ってるらしいね。あの皮だけ無限に食べたい。その他は特筆すべきことはなし。

9.13火
普通に労働。料理長がたいやきくれた。その他は特筆すべきことはなし。

9.14水
猛烈にピアノの練習。ツアーの大阪の流し企画のカバー曲、わたしは10曲しかレパートリーないのやけどそれでもひいひい状態やねんけど、柴田聡子ちゃん、長谷川健一さん、みなさんJポップとか歌謡曲100曲ぐらいレパートリーに書いてはってたまげた。今週はこの宿題が心配すぎて他のことが手につかない。要するに、全然小説が進んでいない。この間に相方飯田さんが書き進めてくれているであろうと勝手に希望を託す。

9.15木
朝から虎の門の病院。待合室、座る場所ないぐらい混んでいて辟易。病人ばっかりぎっしりの部屋ってなかなかきついね。って病院てそもそもがそういう場所やけど。いつも通り流れ作業の診察&採血&お注射。一旦帰って、ちょっとピアノの練習したりゴロゴロしたりして、夜は中野へ。K井さんと飲み屋へ。中野ってわたし、タコシェに納品行くときぐらいしか立ち寄らない場所やったけど、ちょっと裏道入ったらすごい飲み屋街が広がっているのやなあ。入った焼き鳥屋さん、一本60円とかで我らが足立区顔負けの安さやった。おしゃべり楽しくって結局閉店まで長居。K井さんと飲むのは本当にたのしい。「女中たち」や母親教室のときの忌憚なき感想なんかも話してくれて、お忙しい中見に来てくれて感想もくれるって、すごくうれしい、K井さんはほんまに誠実なお方やなあ。&お茶目。たのしくはっぴーな夜やった。帰り道、電車の改札入ったところから床にぽたぽた血痕が落ちてて、辿って歩いてみたら最後ホームに消えた。ということは、線路に落ちたってこと? いや違う逆か、線路から血まみれで上がってきたのやろうかな? ホラーやね。

9.16金
朝から映画の劇伴の曲作り。監督と電話会議をしてご意向を聞き、新たに4曲作って送った。ほんで今日も流しの練習。わたしすごい今週はミュージシャンづいてるんじゃね?! 普段練習しなさすぎなだけやけど。夜、大阪でご一緒する細馬さん(芸名はかえるさん)から、造船テーマソングが送られてきた。この流し企画、大阪の海辺の造船所跡地で行われるので、企画のひとりの岸野雄一さんからロバートワイアットの「shipbuilding」を日本語カバーしてみてはっとご提案いただいており、流しチーム細馬宏通さんが日本語超訳してくださり、これもご一緒に歌う予定。原曲聞いてたら英語やしメロディがザ外人の節回しやから全然頭に入ってこなくて覚えれなくてこれ歌うとか無理や〜て感じやったのやけど、細馬さんが作ってくださった日本語詞で聞くと魔法のように、童謡のように、するっと頭と心に入ってきて、これなら歌えそう。細馬さんすごい。しかも歌詞がすごくいいの。わたしの勝手な解釈やけどこれ戦争といものを目の当たりにするときの日本人の諦念が歌われていて、「世界のため 命を張る 張りたくはないのに」て最後の歌詞。

9.17土
朝から本棚でにらめっこ。今日は漫画家河井克夫さんにお誘いいただいて河井さんのバンド、メスコアラ・アンリミテッドにゲストメスコアラとして参加することになっていて、何をするかというと朗読をすることになってて、河井さんのおはなしではこのバンドは文学サークルとのことで、演奏しながらみなさんが好きな本を口々に音読するいう集まりで、そのためにわたしも好きな本を持ってきてくださいとのことやのです。河井さんといえば、なんか谷崎かなって感じで、谷崎の「お艶殺し」、あと河井さんはダダかなってことで辻潤「絶望の書ですぺら」、ほんでからわたし自身が単純にエロい言葉を発したい気持ちになったのでオクターヴ・ミルボー責苦の庭」、あとなんとなく中上健次「岬」住井すゑ橋のない川」をチョイス。入りは夕方やので、それまで明日からのツアーの準備をしようとトランクあけているけどあんまり進まず、流しのカバーのピアノの練習したりゴロゴロしたりしてたらそろそろ夕方、というか夕方に会場吉祥寺に到着するには足立区を1時間前には出ないとあかんので3時半くらいにおうちを出る。5時からリハ。わたしはバンドメンバーさんははじめましての方ばっかりで河井さん以外誰もしらなかったので最初人見知りしちゃったけど、みなさん穏やかなほっこりした方々やので安心してすぐ打ち解ける。ライオンで打ち合わせがてらコーヒー飲んでおしゃべりして、あっという間に本番、がはじまったらいつの間にかみなさん着替えたりお化粧したりマスク被ってたり光るグラサンかけてたり、えっちょっとプロレスですか?ってカラフルのギンギラビカビカの恰好してはってびびる。でもやはり文芸サークルではあって、ステージ真ん中の机にみんなが持ってきた本がどーんと積んでて、河井さんも、他のメンバーも演奏しつつもそれを音読したりしている。途中で急に「ゲスト朗読者北村早樹子」って河井さんに呼ばれて、客席からおろおろステージにあがり、本を音読。たまたまやけど全員、谷崎を持って来てたので(でも作品はかぶってなくて)最後は全員が谷崎を口口に読むという谷崎地獄で終わった。わたしは楽器ないから音読したあとは河井さんが持ってきたオモチャの、猫の鳴き声出るやつとかイルカとかを並べて鳴らして遊んだ。なんか、もうライブというかこれはなんやろうか!? て感じやったけど、メスコアラはこういうバンドならしい。この日は河井さん含めガロ系の漫画家さんのバンドが色々出ている感じのイベントで、ラストは逆柱いみりせんせいのバンド漏電銀座ていうやつやったのやけど、画風のイメージとは180度違うものすごい元気満点フレッシュネスな感じのバンドやって、しかもいみりせんせいも衣装キメキメで誰かわからん恰好なってて、結論としては、漫画化さんは音楽が好きでバンドも好きなんやんやな〜。帰りに河井さんがやんごとなき理由で高級な果物たちを支給してくれて、ピカピカのリンゴをもらった。

9.18日
2時間だけ寝て起きて、マッハでツアーの荷造り。ほんで昨日河井さんがくれた高級リンゴを食べて、7時半出発! ぷらっとこだまで大阪へ。調子こいてパソコン広げて文章打ってたら速攻で酔って気持ち悪くなって瀕死。そこから読書も出来ないし、だからといって眠気もこないから寝られず地獄の4時間。なんとか命からがら新大阪到着。御堂筋線で動物園前、まずはどでかいトランクをドヤに放り込む。今回は前回の一畳1000円ドヤではなく、はりこんで三畳1500円のちょっとええドヤ。クーラーも冷蔵庫もついている! これは快適に暮らせるわ〜。しかし寛いでる暇はなく、荷物を入れ替えて着替えて、北加賀谷名村造船所跡地へ。会場、すすすごい、凄まじい量の人。しかもみんなキメキメイケイケのファッショナブルでシャレオツなアート界隈の若者たちって感じで、普段触れ合わない(触れ合えない)人たちがたくさん。すごく場違いなところへ来てしまった予感。でも全体の企画は、大きなデザインフェスタ?のような、デザイナーとか建築家とかアカデミックな方たちが講演をなんぼんも行っていたりする合間に、我ら流しをやってくれというオファーなのやけど、わたしは流しというからてっきり、スナック的な、小さな小部屋でね、おっさん相手に歌謡曲歌ってよろこんでもらう感じをイメージしてたら、全然違った! これは過酷なミッションの予感。。。わたしは岸野雄一さんにお誘いいただいて参加したのやけど、岸野さんは本日は不在。流しのもう一人のミュージシャン、かえるさんこと細馬宏通さんが、唯一の救いで、控室でデュエットの練習などして、で、実際会場の方でピアノのサウンドチェックしましょうってゆっていたのやけど、結局もうそのサウンドチェック自体が本番その1になって、リクエスト制で歌ったのやけど、この一回目が非常につらい空気でわたし一瞬で心折れて、そしたらマイク自体がポキンと折れて(マイクスタンドがゆるかった)直しても直しても折れるので、わたしもいつもの下ネタスイッチが入って、いや〜わたしの色気がないから、このおちんちんもふにゃちんになるんやね、よしゃ脱ぎましょう! とかゆってカーディガン脱いで、ほぼ30分ひとりで下ネタをしゃべっているだけであった。でもオファーの中にはお客さんとのコミュニケーションもしてくれって書いてたので、あれはわたしなりのコミュニケーションなのでありました。ほら、趣味あわずとも下ネタなら万人共通のおはなしやんか〜。1ステージめがおわって、控室でスタッフさんとミーチング。スタッフさん曰く、さっきのわたしのは普通のライブぽくなりすぎてたのでそれは企画意図と違うらしく、もっとただ音楽が流れているだけっぽく(「流し」ってそういう意味で流れてるだけの音楽てことらしい)やってほしいらしく、なんならBGMのようにしないとあかんらしい。正直、ライブをやる側として、歌を歌うとき、ただのBGMとして聞き流されてしまうのはいちばん嫌なことで、それもナマで歌ってて聞き流されるというのは歌い手として失敗や、とわたしなんかは思ってるんやけど、でもそんなん言いだしたらこの企画むちゃくちゃになるのでそういう個人的な気持ちはこらえて、これは仕事仕事、ジョブなのや、と自分に言い聞かせて、企画に沿うことだけを考えて、2ステージめ3ステージめも頑張りました。せっかく少なくはあれどわたしの歌を聴くことを目的にいらしてくださったお客様もいたから、その方に向けてはじっくり歌いたいけど、そういう普通のライブ感はNGみたいな感じで色々と不思議なことを企画者さんがおっしゃるので、正直、机上の空論を投げられてる気持ちにしかならなくて、ひさしぶりにプッチンきそうな瞬間もあったのやけど、細馬さんがすごく支えてくださったので、本当に命拾いしました。最後は予定にはなかったけど、細馬さんがユーミンをいっぱい弾いてくれてわたし、ユーミンをたくさん歌い上げたりして、細馬さんとコンビでやったのはとても楽しかった。アカデミックでシャレオツな方々と打ち解けておしゃべり出来る気がしないので、打ち上げはお邪魔せずにドヤへ帰宅。まだ11時くらいやったので、味園遊びに行こう悩んだけど、疲れというとメンタル的なあれか、口内炎からベロまで腫れる例の変な病気がまた出始めてて、ツアー初日でこれは体調的に危険なので、夜遊びはおあずけ。色々先行き不安なツアー初日であった。