8.31〜9.6日記

8.31月
普段は神戸に在住のわらびすこ舎副舎長Mちゃんが、東京に来ているとのことで真昼間から渋谷はハチ公前で待ち合わせ。MちゃんMちゃん、と周囲を見回してたら戦場カメラマンがおった。どうでもいいけどちょっとオッてなった。そこから視線をスライドさせた延長上に、おもっくそ包帯ぐるぐる巻きの華奢な腕で本読んでるMちゃん発見。2か月前に自転車で激突&転倒して亀裂骨折したらしーイッター。しかもそんな手な上に、ちょっと前には熱中症で倒れて入院してたらしーまじで身体弱すぎやでーとかゆってて、そんな感じな癖にMちゃんは日本が戦争するってなってる昨今、とりあえずボクシング始めようと思うってまじで言い出して、骨折して治ったら骨強くなるらしいでとか言い出して爆笑。しかも実は柔道やってたという、見た目からは信じられない過去を話し出し、人投げるのはいけるから、あとは打撃、だからボクシング始める! て結論らしい。やっぱりこの人おもしろいわ〜ってバーミヤンで餃子食べながら話す。なんかMちゃんと会うときいつも餃子たべてる気するわ〜我らいつも餃子たべてへん? て話になって餃子食べれる相手=気取らんでいい相手やわ〜てことになって確かにね。そんな相手にすっかり気が緩んでしまったわたしは、ちょっと恥ずかしいガチな相談をしてしまった。いや〜これは切実な大問題なのやけど、まさかこんなところには書けないし、そうそう言える相手もおらないので、聞いてもらってちょっと楽になった&気の利いたアドバイスもくれて、舎長は勇気が出ました! Mちゃんありがとう! 

9.1火
労働後、今日はレコーディングのドラム録りがおこなわれているのでマッハでスタジオへ向かおうとしてこれから向かいますーてN村さんに電話したら、今日の録音はもう終わりましたーと言われたので拍子抜け。そっかー、ほなら映画の日やしってイメージフォーラム安川有果監督の『Dressing Up』見に行く。チケット買って、でもレイトやからまだ上映まで3時間ぐらい時間あったので久しぶりに青山ブックセンター行く。わたしは、いつかお金持ちになったら、あの大きな本屋にあるカートにばんばん本入れて買いまくりたい! という夢があって、あのカートはそういうお金持ちが持ちきれない本をばんばん入れるために使うものやと思っている。思っていた。のやけど、新種の用途を目撃した。恐らくもうだいぶ長時間おるんやろな〜って風情のおばさんが、壁に置いてある椅子に座って本座り読みしてて、そしてあのカートを机代わりにしていたんである。ほー! そういう使い方があるんかー! 確かに高さ的にもちょうどよね。なるほどねー。まあ真似はできひんけどねー。先週買うのやめたミランダ・ジュライの新刊をちょっとじっくり座り読みさせていただいてたら冒頭からすんばらしくって、あっこれは買おう! てなって結局1週間ごしに購入。なんやかやで9時で、イメージフォーラムへ戻り『Dressing Up』鑑賞。ちょっと前にU波さんが北村さん絶対好きだと思うから見て下さいって熱く勧めてくれていて、確かにどんぴしゃやった。祷キララちゃんの、静かで平熱なんやけどソリッドなきれっきれの存在感、顔つき、低音の大阪弁も素晴らしく、そして出て来る景色が、天王寺が、なつかしくてジーン。しかしわたしの知ってる天王寺とはだいぶ変わってしまっていた。しっかりこってりした大阪弁をひさしぶりにたくさん聞いた。子ども達の本物の無邪気な大阪弁はいいなあ。最後に一瞬だけ出て来る友達役の子の、あっ今日食べにいくんやった! て言うセリフがあって、そう、食べに行くって表現、大阪の人は外食することを、ごはん行く、とは言わず、食べに行く、て言うんやった。なつかしい。○○を食べに行く、とはいわず、ただ、食べに行こか、てだけ動詞だけで使うのがポイント! なんか、こういう生の大阪弁に触れると郷愁スイッチをぱちんと押されてしまうよね。だけど逆に、お父さん役の鈴木卓爾さんだけ大阪の人ではないので大阪弁が下手くそすぎて、うーてなったよね。

9.2水
虎の門の方の病院デー。珍しくすいていて、そんなに待たず診察、検査。しかし尿検査が、おしっこがどうしても出なくて、持参していたヨーグリーナちゃんを飲みほしても全然、もう一滴たりとも出てくれなくて、お会計終わった後も粘って、何回もお便所いって絞り出したけどやっぱりだめで、恥ずかしいのやけどすみません、どうしてもおしっこが出ませんでしたって受付に申し出る。と、80円返金された。わたしのおしっこ80円。さて、そんなことをゆうて平和に暮らせているのかというと残念ながら全くそんなことはなくて、今週もわたしは怒っている。先週に引き続き怒っている。何故ならば、H氏がまた新たなる事件を起こしてくれたからである! 今回はわたしを怒らせたというとか、わたしがたいへん尊敬している超超先輩歌手に、もう、これ以上ないんではないかというぐらい最大に最強に最低な失礼をぶっこいたからである! 信じられない、なんでそんなことをしてしまえるのか、ここに詳細は書けないのだけれども、書けないくらい最低な失礼を、しやがったのである! その超超先輩歌手に申し訳なさ過ぎて、わたしから謝ってもなんかちょっと違うはなしなのやけどもしかしわたしがそもそも巻き込んでしまったゆえのご迷惑なので、もう、ほんとにすみませんと謝罪しまくり、そしたらその超超先輩歌手はお怒りになりつつも心配してわたしに直接お電話をくださり、1時間ほどお電話ではなし。色々ためになるアドバイスもくださり、ああ申し訳ない。そんなこんなで色々あって、ほんとにすんごく色々があった結果27日のアップリンクでのイベントのチラシをわたしが手描きで書くことになり、もう、本当に美術的なセンスが皆無なのやけどがんばって図画工作して作ったのがこれ! 

学芸会かよ!おたのしみ会かよ!ってつっこみは既に何件も入っています。。。あーしかしなんでここまで、何件も何件も事件が起こるのやろ。

9.3木
H氏がぶっこいてくれた失礼への申し訳なさ&怒りでなんかもう精神状態がめちゃくちゃではあるけれども、労働先に行って労働している8時間はわりと無になっているので不思議と楽に過ごせる。労働先は至って平和よなあ、って今までそんなことは思わなかったのにしみじみ思った。同僚に、九州からこの春に上京したての20歳の女の子がいて、この子はほんとになんというか、明るくあたたかなところで太陽の光たくさん浴びてまっすぐ育った健康健全を絵に描いたよな子なので、わたしは何をしゃべったらいいか全然わからなくて仕事の最低限のやりとり以外全然しゃべらないのやけど、ふと、雨降って来たね〜て言ったら、あ〜布団また濡れちゃう〜もう2週間ずっと布団干したままなんですよね〜、とか言い出して、は? このところ毎日雨やで、どういうこと、いや、もうその布団絶対カビだらけで腐ってるよ、て言ったら、え〜やっぱりもう駄目ですかね〜いつか乾くと思って出しっぱなしなんですよ〜って、本当になんの衒いもない素の顔でまっすぐ言うもんやから仰天。信じられない、そんなこと考えられる? まっすぐにイカれた子には敵わん! 自分が如何につまらない普通の常識人かということを改めて思い知らされた気持ち。

9.4金
労働からの、大学病院、自動受付を通っていつもの待合室行ったら過去に見たことがない人の量で、椅子が足りないぐらい待ってる人がいて、なんなんこれなにごとなん?! てなって、しばし観察してたらどうやら待ってる人は全員とある一人の先生のクランケであることが発覚して、尋常やない人気ドクターがいるのか! しかし一体どんな診察をしはるんやろ。そんなけ名医ってことなんやろうから、どこが人気ポイントなのか気になる。超気になる。とか思ってたらわたしの番が来て、わたしのドクターは人気度たぶん普通なのでほぼ時間通りに名前を呼ばれ診察おわって、お薬待つのはあらかじめ諦めて院外処方にしてもらって後日取りに行くことにして、そこから今日はさら行くところがあり、マッハで渋谷の某所へ。謝罪&謝罪&謝罪。しながらも結局は素晴らしいライブを拝見し、その感動と、H氏への怒りと、やはり先輩歌手への申し訳なさで、今日も精神状態が異常な感じに。というか一日のうちに、喫茶店員・病人・北村さん、いやまあ全部北村さんやけど、でも三種の顔を使い分けていたのでなんか三日分過ごしたような感じで、帰りの電車ではすごくグロッキーになりつつも、素晴らしいライブを拝見し、その音楽に触発されて愛についてすごく色々考えて納得したり疑問符が浮かんだりして、なんかもうとにかく体も心も脳みそもよく動かした一日やった。

9.5土
二十四の瞳ちゃん』という来月やるミュージカルの顔合わせ&読み合わせで、ご近所の飯田華子ちゃんちに集合。飯田華子ちゃん、千絵ノムラさん、山田参助さん、ドルショック竹下さん、わたしというメンバー。(はっとりさんは欠席)脚本をもらう。すごい、これはまたどえらいことになっている。さすが飯田さんの脚本。切実で猥雑で愉快でえげつなくてロマンチックでセンチメンタル。初見で読み合わせしたのやけど、参助さんのキャラクターの引き出しびっくり箱っぷりがすさまじくて、この人なんやの!? てなる。ドルショックさんのテンションもキマりすぎている。というかこのおふたりは本職漫画家さんなのやけど、なんやのこの芸達者っぷり! おもしろすぎて笑いとまらん。でも今回のキャスト陣、元唐組で現在は自分の劇団主宰もしている千絵ちゃん以外、全員、漫画家&ミュージシャンの集まり。それは愉快なことになるよね。チラシが刷り上がってそれも配布される。これまたどえらいことになっている、なにこのチラシ! こんな演劇のチラシみたことがない! 飯田さんのセンス最高やなあと改めて感動。そのチラシがコチラ!

よく出来たピンクチラシやよね完全に。ポケットティッシュに入れて配ったらいんちゃうん、新宿の東南口とかで。それかポストに突っ込んで回ったらいいんちゃう、とか普通のチラシの配布方法以外のばっかり思いつく。帰って、今回また、ひさしぶりに8年ぶりぐらいにとある曲を歌うとになりそうやから、昔出した『おもかげ』てアルバムをぴっぱり出してきて自分の曲をじぶんでみみこぴ。何気なく歌詞カードの紙開いたら、スぺシャルサンクス的な位置に、おかあさん、おとうさん、愛する妹、とか書いてて自分でドン引きする。そうか、当時、9年前とか、もうすでに北村家の崩壊ははじまっていたけど、まだわたしはそんな心境やったんやなあとか思うと赤面。当時北村家は今ほどめちゃくちゃにはなっていなかったけど既に崩壊ははじまっていて、でも、わたしはまだほんの少し家族たちへの希望を残していた。ピュアやったのやなあ。今はもうどれも失ってしまった。

9.6日
『瞳ちゃん』お稽古のため北区の方の稽古場へ。ふれあい館というほっこりした名前のついたここ、生ピアノもおいてあって値段は区の施設やから激安で、良い感じ。そこでまた軽く読み合わせから、歌もいれつつ後半立稽古までやる。今日は参助さんはお休みで逆にはっとりさん初参加やったのやけど、ミュージシャンなのに芝居もうまくて、所謂演劇ちっくな感じもしっかりだせる人やった。しかもあんまりパーソナルがどんな人かわかってなかったら、結構ひとりでずっとくねくね謎の踊りを踊ってるような人やって衝撃うける。稽古前に発声練習的なやつを千絵ちゃんにおそわり、みんなが突然雄叫びを上げ始めて、そういうのはじまったらわたしは突然黙ってしまうというか、ああいう自己解放的なやつが一切合切出来ない人間で、保育園とかでもあったけど、さ、やってみましょ、てなっても何もできなくて、固まってしまう感じ、口パクだけしてる感じ、なんか自分でなつかしくなった。だけどみんなは元気よくやっておられて、あーわたし演劇向いてないってつくづく思った。お稽古おわって近所のはっとり邸で猫を撫でながら人によってはお酒のみながら、みんなでちょっとおしゃべりして、帰宅。

☆先月末からはじまった、北村読み物メールマガジン【北村早樹子の「そんなに不幸が嫌かよ!」】、毎月月末に配信。無料です。エッセイやコラムや読書日記やアダルティな小説の連載など。登録はこちら、創刊号のバックナンバーも読めます→http://www.mag2.com/m/0001664038.html