9.7〜13日記

9.7月
雨。今週はレコーディングの歌録りがあるのでなにかというと家ではラフミックスを流したり歌ったりしている。自分の曲をこんなに頻繁に聴いたり歌ったりするのは滅多にない。そして今日はひさしぶりに歌をうたうのがメインのライブで、せっかくやから新曲やろうとピアノ練習練習。実はひっそりこの日の模様を録音して云々、的な計画をN村Pとしていたので、勇んで会場入りしてリハをするも、計画まるつぶれのどうしようもない現実にぶちあたる。お越しくださった方、気づいている方は気づいていたかどうかわかりませんが、実は会場のピアノ、一部のドとレの鍵盤が50%の確率で引っ込んでしまって鳴らないという、まー生ピアノやからこういうことも仕方なくはあるのやけど、ざーんねん! て感じ。だけども録音しない範囲ならまあわたしがちょいちょいミスってんな? て思われるだけなので構わずがっつり弾きたおしてひさしぶりにカラオケなしの弾き語りオンリー小一時間ライブをした。ツーマン相手の双葉双一さんは、高校生の頃に文通していたおねえさんが好きでよく名前は目にしていて、その後たぶん3年ぐらい前に一度ライブも拝見していたのやけど今回のが衝撃的やった。常にハンサムな流し目でしかしよーく歌詞を聴いてると笑っちゃうようなおもしろい歌ばっかりうたってらして、わたし声だして笑いそうになったけど空気はピーンて感じで笑えず我慢。曲終わったあとに、片足つま先ちょんって一瞬踊り子のようなお礼をときどき繰り出すその動きも可愛くて愉快で笑っちゃいそう。この人は笑かそうとしてるのか? とかちょっと思ったけど、双葉さんは笑かすとかじゃないけどたぶんおもしろいことしたいっていうだけなんやろうなあ、てそれはわたしもまったく同じ! はっ! なるへそ! ちょっとシンパシー! てなった。終わってちょっとおはなししていたら、双葉さんも昔足立区に住んでいたらしく、わたしの家らへんもよくマラソンして通ってらしたらしく、ほげー。ま、ピアノの件は残念なライブやったけど、総じて楽しめた日やった。

9.8火
朝、通勤電車に乗ろうと駅で待っていて、わたしは列の最前列でアイホンに目を落としていた。すると、今までに聞いたことのない凄まじい破裂音を聞いた。例えるならば、すんごく分厚くて硬いゴムの風船が割れたような、バッチーンという音が早朝の駅のホームに鳴り響いた。人身事故。ほんの数メートル先で飛び込み。人間がつぶれるときの音をはじめて聞いた。人間は血の入った袋なのやなあと思った。すぐさま駅員がわらわらと集まってきて、警報ベルが鳴り、瞬く間にブルーシートが貼られ、救急車も到着し、そこから電車が止まることの1時間半、身動き取れず。千代田線全線ストップして、この駅は他の線が何も通っていないので振り替え輸送しようにも一つ先の駅までタクシーor徒歩(30分以上かかる)とかそんな状態で、だのでどんどんホームには人が溢れかえり、通勤ラッシュの時間帯なのでみんなの苛々も高まる。都内きってのガラ悪タウンなので、暴言吐いたり駅員に絡んだりする人も出てきて、ひとりごと言って怒ってる人とかもいて怖い、でもそのお気持ちとってもわかる。そんなこんなで新宿まで2時間半かかり労働には遅刻。そのまま一日働くも何故かずっと右肩が痛くて、もしかしたらなんか乗っかってるのかも、とか良からぬ想像をしてしまった。

9.9水
レコーディングの歌録りの日。台風やので電車動かんかも、というか昨日のこともあるのでなにがおきるかわからんし、て早めに家でて、はるばる東京を横断し柴崎のスタジオへ。ボーカル録りって、本当に多種多様なスタンスの人がいて、ものっすごく神経質に絶対に音程外れないように録りなおしまくる人もいれば、わりとエモーショナルな人間味あふれる感じを大事にするため音程はあまり気にしない人もいるし、録り方も一曲通してのノリを大事にするから通して録ることにこだわる人もいれば、もう一文字ずつに分けて録る勢いのパッチワーク法でやる人もいるし、そもそもが実はパソコンでちょちょっと音程直したり可能な昨今なので、そこ頼りでアバウトに録ることも可能やし、しかもどれが正しいとか別にないし、だけどこの手のこだわりが合わない人とやると大変なストレスを被る羽目になる、しかもやってみないとわからない! みたいなどきどきもあって緊張してスタジオに入る。わたしは今までは自分主導で録りたいように録れることが多かったので、その場合ほぼ一発で勢いで歌って、聞き返してあかんかったらその部分は歌い直す、ぐらいな感じでやってて、でも今回はプロデューサーがおるからもう全部まかせよう! て懐に飛び込む気持ちで、N村Pの進め方についていく。N村Pは嫌味なく的確に迅速にそして思いついたことをどんどん指示くれて、でもわたしの気持ちもちゃんと要所要所で確認してくれて、結果的に、今までやってきた歌録りの中でいちばん楽しい歌録りになった! やっぱりひとりで録ってるのとは全然違うくて、結構わたしひとりやと何がいいかだんだんわからなくなってどんどんメンタル的に追い詰められて落ち込んでいくタイプなのやけど、N村Pはちゃんとよかった悪かったを言ってくれるし、変な発想でおもしろい要求をしてくれて、いちばんハッ!? ってなったのが、「じゃ次はちょっと笑いながら、半笑いで歌ってみて」て、全然そんな笑いながら歌う内容の歌じゃないのに! なにそれ! おもしろ! って、でもあーこのおもしろさはちょっとお芝居に似てるなあ、演出されてる感じに似てるなあって思った。そんなこんなで順調に7曲も歌録りがすみ、充実したレコーディングやったわ〜爽快な気持ちでスタジオを出たら、雨は上がって虹が出ていて、何故か空は不思議な黄色になってて、台風過ぎたんや〜ラッキーて帰路についたら、足立区は全然まだ土砂降りで、改めてその距離を実感した日やった。

9.10木
朝、某所から電話がかかってきてどよーんと落ち込む。どんどん洒落にならないことになってきている。ああもうなんで、なんでわたしはいつまでこのことに精神を乗っ取られて煩悶せねばならぬのか! もう完全にちぎれてしまえたらいいのやけど、いや、もうちぎれてしまおうと決意して今年は暮らしていたのやけど、現在は人質までとられているのでわたしは完全に無視することが出来ず結局ずっと悩ませられている。昼過ぎ、N村Pから昨日のラフミックスが送られてきて、聴く。いや〜おもしろい! 色んな意味で今回のアルバムは本当に今までにない感じになっている! 締め切りが差し迫ってきた国語の宿題を一個やって送り、あとはまた朝の電話の内容を反芻して心も脳みそも疲れた日。

9.11金
労働。なんかなんやかんや火曜日の破裂音がずっと残ってて、駅につくたび電車乗るたびに思い出す。別に飛び込んだ人のことを憐れんだりする気持ちはないので、そういうことじゃないのやけど、なんか人間の身体が割れるっていうことを、事象して色々考えてしまう。早川さんの『心が見えてくるまで』が発売日だったので帰りに紀伊國屋で即購入。早川さんの女の子へ求めるあれこれが正直すぎておもしろすぎて、読み終わるのが勿体ないからなるべくちょびちょび読もう、しかしもう半分読んでしまった! 昨日の心配案件のことで深夜に妹と2時間ほど電話。話し合っても特に解決はせず、どうしようもない、我らに出来ることはもうなんにもないな、て結論に。

心が見えてくるまで (ちくま文庫)

心が見えてくるまで (ちくま文庫)

9.12土
朝から洗濯二回まわして干しまくり、昼前に家を出てミュージカルのお稽古で東十条のふれあい館へ。前回と変わった新脚本が配られ、キャスト全員そろってのはじめてのお稽古。お稽古前に恒例の準備運動という名の各々の自己解放の儀式がはじまってわたしがいつものごとくチーンて固まってたらはっとりさんがめっちゃ攻撃してきて怖かった。読み合わせからの立稽古。新たに歌もふえたので掛け合いの練習などもしつつ。衣装もちょっと合わせた。しかしほんとにキャラクターが強烈すぎる面々ばかりが集まっているので、おもしろいけどハチャメチャになってしまわないか心配でもある。まだお稽古3回目やけど、だんだんみなさんの行動をみててパーソナルがみえてきて、ドルショックさんは決まった時間(だいたい夕方5〜6時)にしっかりうんこをするのやということが判明、さすが! かっこいい! うらやましい! わたしは毎日立派な一本糞をする人は問答無用に信用できると勝手に思っている節があり、いや、ドルさんのうんこの形までは知らないけどきっと景気の良い立派なうんこをしてらっしゃるはずや! そしてドルさんはお稽古後のミーティングのときは毎回必ずフランクフルトを食べている! フランクフルトも超似合う! 飯田さんはお稽古のときだいたいいつもお赤飯を食べている。これまた似合う! 今回のお芝居は、演出や音楽についても美術についても衣装についても、なんだか全体をみんな作ってる感が強くて、みんなそれぞれが演出についても思ったことを発言していくスタイルで、今までは(といっても過去に二回したお芝居経験ないですが)確固たる演出家がいて、その人についてけばいいやって感じやったけど今回は色々違う。これはこれでおもしろい作り方やとおもうけど、演出家の飯田さんはこれでいいのかな? とかちょっと心配に。宣伝方法も色々と相談し合い、ドルショックさんが色々とおもしろい提案をしてくれて、たのしげなことも色々決まった。しかしいちばんの懸念事項は音楽班。今回はミュージカルやから芝居班と音楽班に分かれて稽古して途中から合流する、て感じなのでやけど、どうやら音楽班相当雲行きが怪しいらしい。というか曲が全然出来てこない! たのむぜ竹田氏! 

9.13日
今日もミュージカルのお稽古。全体の動きや出ハケの場所を確認して決めて行く作業をして、某シーンがすごくおもしろい感じになりそうでたのしみ! これはほんとに、飯田さん作品ならではというか、普通に経験豊富な演出家と役者が集まっていても絶対出てこないであろうお芝居になっていっている。愉快。えっと、今回わたし、濡れ場があります! イヤンです! でもやっていてとてもたのしい。それは相手役が飯田さんやからであろう。わたしは飯田さんが好きやからである。実は今回のお芝居、飯田さんは作演出な上に出演もするのはたいへんやから、別の人に声かけようと思ってる、と言うはなしが一時期持ちあがっていたのやけど、しかしわたしは、相手役飯田さんじゃないといやいやいや! と駄々をこねて懇願したのである。結局ぶじ愛が通じて、たいへんだけど飯田さんがやってくれることになり満足◎ わたしと飯田さんの濡れ場、ぜひ見に来てほしい! いや勿論濡れ場以外も見どころ山盛りで、配役6人全員にドラマがあり、笑えるけど悲しい、恋の話でもあり、神話や民話のような尊い話でもある! 音楽班ボスの竹田氏の到着を待ってから通し稽古をしようてなっていたのやけど、待てど暮らせど来ない。まあ時間通りに来ないのが竹田氏なので、諦めて先にはじめる。40分遅刻でいつのまにか竹田氏も加わっていたけど通しは止めずに進んで、なんとなく全体の流れは見えてきた。ドルショックさんの持って来てくれていた小道具がおもしろすぎて、それを使うラストのシーン笑ってしまってしゃべれなくなっちゃった。だけどラストもすごく美しくて悲しい、素敵なシーンになるんではないかな! 終わってまたはっとり家でミーティング。お芝居の反省会を終え、竹田氏を詰める会になりはじめたぐらいでわたしはお暇した。ひさしぶりに竹田氏に会ったら、その振る舞いというか逃げこみ方というかキャラで許されてる感が、なんかH澤さんに似てて、あー同族やんけーてなっちゃった。

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