10.12〜18日記

10.12月
朝から、某番組の撮影でおうちに撮影部隊がいらっしゃるため、早朝からばたばたとそうじ。時間ぴったりにピンポンが鳴り、プロヂューサー&ディレクター&ADさんがいらっしゃる。おうちの中を軽くインタビューちっくに撮ってくださるのやけど、わたしが普段何気なく常習している用語って実は放送できない系の言語が多いらしく、逐一止めて言い直し、みたいのが繰り返される。今まで全く意識してなかったけど、わたしは確かに、世間一般でゆってはいけない言葉ほど、声に出して読みたい日本語なので、そらあかんわね。うーむ。日本語ってむずかしい。一通りおうちの撮影が終わって、次はミュージカルの稽古風景を撮りたいとこのことなのやけどちょっと時間があくので一旦帰っていただいて、わたしも準備してお稽古へ。赤坂の稽古場、昨日までのほのぼのとした空気とは一気に変わって、最後の合同練習やからみんな急激に焦りだしたのかな? そう、一応この日が最後の練習になっている。のやけどこれは結構絶体絶命レベルのピンチかもっていう出来栄え。最初抜き稽古を何か所かやって、その後通し稽古を2回。1回目の通しの時に某番組の撮影部隊さんがいらっしゃって撮ってくれたのやけど、お芝居の内容的にもせりふの言葉的にも、きっとほぼ全編アウトなんじゃなかろうか? と心配に。いや、なんかそれだけじゃなく、やっぱり撮影されるてすごくたいへんな行為で、カメラの目があるだけでわたしはいつもと違う疲れ方をしてしまった。でも逆に、わたし以外の出演者たちは、やっぱりパホーマーやからか撮られてることでテンション何倍か上がっているらしく、ノリノリアゲアゲな芝居をしてらしてさすがと思った。差入れに大量のシュークリーム&ぺこちゃんのほっぺをいただいてしまって恐縮、だけどこういうのってうれしいものやなあ。夜までびっちりお稽古して、最終稽古終了。といっても、楽団最後まで全員集合しての練習は出来ずじまいでこのまま本番を迎えねばならないらしい。きつい。でも、もうどうしょうもない。

10.13火
わりと心身ぐったりしたまま労働へ。休憩中に衣装を縫う。仕掛けのある衣装を縫うために、半裸で着たまま職場の更衣室でちょびちょび縫っていたので、これもし誰か部屋入ってきたら一貫の終わりやなって感じ。通勤中や仕事中も小声でこっそりもごもごとセリフの練習。しかし今回のお芝居はうっかり外に言葉を漏らすと本当に気が狂った人と思われてしまうセリフだらけで怖い。

10.14水
この夏を捧げた『ヘンゼルとグレーテル』でお世話になった劇団サンプルの新作『離陸』を早稲田どらま館に見に行く。早稲田の駅前で飯田さん千絵ちゃんと待ち合わせしていたら、同じくヘンゼルとグレーテルでたいへんお世話になった久保井さんとばったりお会い、おなじくサンプルを見に行かれるとのこと。会場ついたら受付に野津ちゃんもいて、この夏まるごとともにすごしお芝居を作ったみんなとの再会になんだかうれしくてにやにやが止まらない。そして『離陸』は作演出の松井さんが今回はじめてご自分も出演なさってがっつり演技されていて、そのものすごく自然体で気色が悪い人間の芝居がめちゃくちゃうまくっておもしろかった。そういえばわたしは松井さんご自身の脚本の作品をお客としてみるのははじめてで、人間のいやらしさや滑稽さが存分に練り込まれている家族のおはなしで、これぞわたしが見たかった松井作品! と思った。そして今回はめちゃんこエロが盛り込まれていて、わたしも瞳ちゃんで濡れ場があるのですごく勉強になった。終わって外に出たら音楽の宇波さんや衣装の小松さんや舞台監督浦本さんもいて、サンプルチームと顔をあわせて懐かしい気持ちが盛り上がる。なんやかんやで打ち上げまでついてってしまい、そしたら隣の席がM山M来氏やって焦る。M山さんはテレビや映画で拝見している印象とは全然違い、すごい庶民的な関西の兄ちゃんって感じの人やった。でも身体むきむきやった。飲み会のトーク内容はサンプル名物マッキーのはなしにはじまり、松井さんの幼少期の危険すぎるエピソードで盛り上がり、ふとM山さんが、最近サカキバラの『絶歌』を読んだのやけど、松井さんの幼少期のはなしを聞いていると一緒や、と言い出して、サイコパス松井をみんなで分析したりして、だんだんなんかゴキブリとかうんちのはなしになっていき、ごはんの席でなんちゅう話題やって感じやけど楽しかった。みなさんより一足先にお暇して帰宅。

10.15木
瞳ちゃん美術づくりのお手伝いをしに、東十条の某家のガレージへ。お手伝いといいつつわたしは本当に全く美術的センスがない人間なので役に立てる自信がなかったのやけど、ここをこの色で塗って、とか飯田さんに言われた絵具を塗ったり、お母様がのるおふねを作ったりしたら意外と楽しかった。ちょっとだけ飯田さんとのシーンと千絵ちゃんとのシーンだけお稽古も出来てよかった。

10.16金
早朝から労働。労働先で唯一はなしが合う仲良しのAちゃんとひさしぶりにシフトが一緒になって運よく担当フロアも一緒になったので、それなりに忙しくはあったけど楽しく労働。後、またまた東十条の某家へ。飯田さんのすさまじいがんばりですごい素敵な美術の背景画が出来上がっている! 感動! 集まれる役者陣だけで不安箇所のお稽古をして、それでは明日がんばりましょうとお別れ。といっても今回の瞳ちゃん、公演場所が横浜なので、横浜宿泊の前乗り組が8割ぐらいいる。わたしはなるべく本番前とかひとりになりたい人間なので足立区へ帰宅。衣装とか色々準備してたら結構な荷物になってトランクを出してガラガラで行くことに。あー色々と不安山盛りやけど、もうここまで来たらなるようにしかならんな。

10.17土
ついに生ミュージカル『二十四の瞳ちゃん』初日。初日に小屋入りしてイチから準備をせねばならんというなかなか強行スケズールなので冷や冷や。会場の日ノ出町シャノアールには紫色のグランドピアノがあってすごくムーディ。そこに飯田さんの描く絵巻物背景画をつり下げて、照明などもどんどん仕込まれていくとすごく素敵な空間が広がってうっとり。しかしうっとりしている場合でもなくて、普通お芝居って会場が仕上がってからシーンごとに照明音響さんときっかけを合わせていく場当たりというやつをするのやけど、この工程をやる時間がタイムテーブルに組み込まれていないという恐ろしい状況。最低限の部分だけほんのちょっと出来たかなって感じでもうゲネ。裏事情を少しぶちまけますと、今回役者陣も千絵ノムラさん以外はほぼはじめてなわけですが、スタッフ陣も演劇畑の人が照明さんのみ、あとは舞台監督も音響さんも初演劇な感じなので、段取りをわかる人が殆どいない現場、これはまじで絶体絶命や、泣きたい、て感じのままもうゲネ。きっとめちゃくちゃになるであろう、とはじまってみると、全分野の人々が奇跡の底力を発揮しそれがちゃんと噛み合って、おっこれは、もしかしたらいけるかもしれん! と希望の光が見えだす。しかし時間も押し押しでどったんばったんなままもう本番。肉体的にもメンタル的にも1ミリも余裕ない状況ではじまってしまった本番。ありがたいことにお客様は立ち見までぎっしり。お芝居がはじまってみると、どかんどかんうけている。うれしい。この劇がおもしろいということを確信する。夏にサンプルで『ヘンゼルとグレーテル』をやらしてもらったときもそうやったけど、今回もわたしのもともとある歌を結構ふんだんに盛り込んで飯田さんが脚本を書いてくれていて、しかも飯田さんはわたしという人間の中身も相当理解してくれている人なので、瞳ちゃんはわたしと近い人間で、とはいえわたしはあくまで演技をまじめに冷静にやっているつもりやったのやけど、最後「朝も昼も夜も」を歌いながら、まじで嗚咽が込み上げてくる次元で泣きそうになって、でもそしたら歌われへんようになるのでなんとか我慢せねば、しかしばれていたと思う、実際おわったあと、北村さんほんとに泣いてましたよね、て何人かに言われた。ニュートレドの生オーケストラにあおられたのもあるし、お客様の熱もあるし、なんやろう、なんでやろう、わたしは普段のライブではめっちゃんこ冷めきった状態で歌っているので、感情こもりすぎて泣いちゃいました、とか絶対ないのに。この曲は、作ったときは当時のしんどい恋愛模様から出来た歌なんやけど、瞳ちゃんをやりながら、あ、これは実はわたしは母親にむけて歌っていたのやなって気づかされ、今現在もぐっちゃぐちゃな家族問題を演技中に思い出してしまい私的な感情につかの間支配されてしまって、まさかの舞台上で自己崩壊の危機。瞳ちゃんは、だいっきらいでだいすきなお母さんを最後自分がこっそり大切にしてきた可愛いものにまみれさせておふねに乗せて川に流す、これは姥捨ての話で、捨てたくて捨てれなくて苦しんでいる自分のドメスティックがはまりすぎてあんなことになったのでしょう。終わった後、見に来てくれていたC子せんせいに褒めてもらえてすごくうれしかった。C子せんせいが、早樹子へのラブレターのような物語だねってゆっていて、本当にそうやわってまた泣きそうになる。ラブレターのような物語、脚本を書いてもらえて、こんなに幸せなことはない。脳みそも心臓もヒートアップしてしまい、いったん冷やさねばと打ち上げも行かずひとり足立区へ帰ったのやけど脳みそ飛んでいたからシャノアールにドライヤー忘れてきて、家帰ってからゲッてなってしかし時すでにおそし。

10.18日
はるばるまた足立区から横浜日ノ出町。駅前のスリーエフによるとみんながいて、みんなだいたい全員横浜に泊まっていた模様。今日は一日二公演。楽屋でそっこう着替えたりお化粧したりしていて、そういう時間帯は何故かいつも猥談をしている、我らは劇団メンス!(本番1週間前から女優陣本番にメンスがかぶりたくない一心で、生理が来た子に寄ってたかってうつしてうつしてとお尻を摺り寄せる儀式をしていたことに由来します)劇団メンス、お化粧をしながら好みの男根の形状について話したりしていて、この人たちほんとにどうかしている、愉快。そんなことと同時進行で照明&音響と合わせたいシーンを順番にやったりして、そんなこんなでもう本番昼公演。妹ヤエバちゃんに顔面に口紅塗られるシーンで、口紅が折れて1センチぐらい食べてしまったり、お母様を川に流したあと「朝も昼も夜も」を歌いに行く緊張感ただようシーンでわたしピアノの蓋で頭打って思わずイテッてゆってしまうなど、小さなハプニングはあったけど、昨日のように自己崩壊の危機はなく冷静を保ったまま最後まで出来てホッ。夜公演もあっという間で、たったの全3公演で瞳ちゃんは終了した。お越しくださった方、ありがとうございました。CDもたくさん買ってくださったようでありがとうございました。マッハでばらし作業がはじまって、ものの1時間ほどでなにもなくなり、わたしはもう瞳ちゃんではなくなりました。あんなあられもない殆ど裸みたいな恰好で、淫売、おま○こ、シャブ、なんて言葉を連呼したりすることはもうないでしょう。片づけながら当日パンフレットの飯田さんのコメントを読んで、勝手にうるうる。今回の瞳ちゃん公演において作演出美術衣装制作ほぼ全工程を背負っていて尚且つアキラというヒーロー役でもあった飯田さんの労はまじ想像を絶するけど、この公演で飯田さんの迸る才能&魅力は大爆発していたことでしょう。見に来てくれていた色んな人が脚本のすばらしさを絶賛してくれていてうれしかった。瞳ちゃんはすごくめんどくさくてしんどくて血なまぐさい女系家族のはなしで、だけどそれをこんなおかしく楽しく愉快に描いて、最後はあんな幻想的で美しい物語にしあげてしまう、飯田さんはほんとにすごいんだぜ! 言葉のセンスも抜群やからセリフも名言だらけやったでしょう! 飯田さんはまじ天才なんだぜ! だけど今回唯一の演劇畑の人としてサポートに徹していた千絵ちゃんの仕事ぶりも飯田さんとの長年の関係性含め側でみていて感動的やったし、うっかりこの瞳ちゃんプロジェクトに巻き込んでしまったドルさんの頼もしさ働き者っぷり人間性に改めて惚れ惚れしたし、参助さんの怪演ぷり引き出しの量知識量にひっくり返ったし、はっとりさんはお調子者にみえて縁の下で超働いて支えてくれていた。劇って一緒に作ってると人間がぜんぶ見えちゃう。ニュートレド竹田さんにはすべての言い出しっぺの癖にフニャ男すぎてずっと苛々しちゃっていたのやけど、仕上がってみると音楽、アレンジがとにかくとっても素晴らしく、名曲山盛りで見直した。改めて、劇団メンスは奇跡のバランスでなりたっているぎりぎりのチームでした。これで解散なのか? 再演(K井K夫さんには森光子の放浪記みたいにずっと何百回もやるべきやていわれた)があるのか? 本当に見てほしかった人には見てもらえなかった残念さもあるから、またやりたい気もある。でもわからんけど、とりあえず一旦力尽きた感あります。わからんけど、わたしだけじゃなく全体がね、そんな空気と思った。劇は儚いからいい。続かないからいい。ちゃんとおわるからいい。


☆ミュージカル『二十四の瞳ちゃん』役者陣による裏話が堪能できる、瞳ちゃん座談会がこちらのメルマガで読めます。瞳ちゃんに心動いた方はぜひお読みくださいませ↓http://archives.mag2.com/0001664038/
よかったらメルマガも登録してね*無料やし。