ボスとの思い出

しばらく前やけど、労働先でたいへんお世話になって好きやった、現代の勝新こと新宿の勝新こと(どっちもわたしが勝手に呼んでるだけやが)、うちのボスがついに定年で現場を卒業してしまうので、そのお別れ会とやらが催され参加。最初は普通に系列の居酒屋で社員に囲まれ大人数で気疲れする系の飲み会やったのやが、だんだんボスがヒートアップして盛り上がり、社員が帰ったあとそのまま少人数で新宿二丁目のいわゆるゲイバーにタクシーで連行される。わたしは勿論その手のお店に足を踏み入れるんは人生初やったので面食らうことだらけやったけど、とりあえず、ゲイの方々のトークスキルは半端やない!カウンター越しに我々の話を聞いてないようで聞いていて、気の利いた突っ込みを絶妙のタイミングで軽快に差し込んできはる、ちょっと感動してしまった。しかしそんなことよりもボスの男っぷりが凄まじく、知らん人におごりまくる、もちろんおつりは受け取らない、帰る部下にタクシー代と称してふんだんに万札を撒く、うわ、これが宵越しの金は持たないとゆうやつか……と目の当たりにして震えていました。だんだんみんなが万札をぽっけないないして帰ってしまって、わたしは気づけば楽しんごみたいな人が何人もおる薄暗いバーで、ボスと二人きり、全然しらん演歌をカラオケでむりやりデュエットさせられるとゆう意味わからん状態に陥ったりしていましたが、深夜帰りのタクシーの中のあの感じは一生忘れられへん、いや忘れたいような、名残惜しいような、不思議な一夜の出来事でした。圧縮した渡哲也のような風貌のボスは残念ながら一見堅気には見えないので、キャバクラで遊んでたらどこぞの組の者と間違われて若造が挨拶しにくるとか、ふらっと新宿歩いてたら知らんやつに「こないだはご馳走様です!」とゆわれ「おめえだれだ?」てなる、とか、刑務所から手紙が来てたりとか、実は山口冨士夫と友達とか、わたしが東京に出てきてはじめて出会った、古きよき東京の匂いがするおっさんやった。