5.28〜6.3日記

5.28月
朝から普通に労働。特筆すべきことはなし。帰ってナックルズの原稿とにらめっこ。既定の文字数にするべくは、ばっすばす切っていかないといけなくて、前回まではその切るという作業がたいへんしんどくつらかったのだけど、突如切るのが気持ちよくなる。何回も死ぬほど読み返してはちょびちょび切ったりつなげたりするたいへん地道な作業なんだけど、文字カウントを見るのがとにかく快感。ああ、こんなに減ったぜ、と思いながらひとりで悦に浸る。ちなみにわたしはもともとワードの文字カウントを見るのが好きで、エッセイや小説やらで原稿を書いてるときは、何文字書いたか逐一調べて、おお、こんなに書いたぜ、とニヤニヤしている。これは編み物の悦となんだか似ているなあと思う。わたしにとって編み物の快感は、どんどん目に見えて編みあがった出来高が増えていくことなんだけど、それとおなじ感覚。あーしかし久しく編み物してへんなあ。

5.29火
朝から病院。待合室で待っていたら、目の前で患者さんが倒れてちょっとした騒動に。その患者さんは、わたしとおなじくだいたいいつも火曜日に通院しておられるのでよく見かけていた女性で、ちょっとゴスロリ趣味な洋服をいつも着ておられ、年齢は30代くらいでわりと美人、両手に杖で結構歩くのもつらそうな感じなんだけど、恐らくこの病院で出会ったのであろう男性患者さんといつも待合室デートをしておられる。しかしこの日は彼氏は来ていなくて、ひとりで待合室で待っておられて、名前呼ばれたので立ち上がって診察室に入ろうとした瞬間にバランスを崩して鮮やかに倒れ、その一部始終を目の前で見ていたのだけど、あまりにも鮮やかに転ばれたのでちょっと芝居がかってるように見え、とかいうと嫌味に聞こえるかもしれんけど、なんというかうん、ほんとにコントのようやった。そこから看護婦さんが何人も出てきて、車椅子で患者さんは運ばれていった。わたしは性格が歪んでいるのでついついそういう見方をしてしまうのだけど、この病気はそもそも認知度も低いし、病気であることも外には見えない、だけど全身痛いので、ときには大袈裟に振舞って心配されたりしたくなるよね。その気持ちもわかるのだよね。こんなときに彼氏は来ていなかったのが可哀想だけど。なんか、他人事なのやけど、一部始終を見ていて、部分的に同情し、部分的においおいと思った。帰って夜まで再び原稿とにらめっこし、なんとか仕上げて一旦、編集H川さんに送信。

5.30水
朝から普通に労働。特筆すべきことはなし。某企画の件で、相手側とちょっとメールでもめる。こういうとき、数年前ならわたしもっと暴走していたであろうけど、最小限の遺憾の意を伝えるだけで我慢したわたし、大人になったわー。

5.31木
雨が降るのか降らんのか微妙な天気だけど朝は大丈夫やろうと洗濯をしたら12時にはもう雨がぱらついてきて生乾きのまま取り込む羽目になった。昼から榎本さんがやってきて、明日のレテワンマンの練習。平日の昼間からぴーひゃら練習した。だいぶこのユニットに慣れてきたのか、息があってきた感じ。練習の後はおしゃべりタイム。今回のおしゃべりテーマは、性器に見える食べ物、カブトムシのちんちん、浜崎あゆみなど。榎本さんは可愛くて若くて瑞々しい女の子なのにこうゆうおしゃべりもいけるクチなのでおもしろい。明日はよろしくってゆって夜に解散。

6.1金
朝からK蔵さん映画の劇伴音楽を一曲録音して送る。それから物販DVDの内職を切ったり詰めたりして、今日のライブのトイピアノの練習も一通りし、夕方家を出ていざ下北へ。トイピアノを背負って歩くと相変わらずホラーな不協和音が鳴りまくり恥ずかしい。下北沢駅、南口が封鎖後はじめて降り立ったのだけど、西南口から降りたら見事に道を間違えて、会場レテまでえらく遠回りをする羽目になった。18時入りでリハ。このトイピアノユニット、ふたりのわりに使う楽器も多く、それを細い一個の机に全部載せているのでわりと奇跡的なバランスで成り立っていて、わたしのカシオトーンを前回どの位置に置いて弾いていた思い出せない。結局なんとも危なっかしい位置で弾くことに。リハを終えていつものミスドで待機。ポンデリングが新しいのが出ていて、ポンデブリュレというやつを食べた。ブリュレというだけあってやや焦げ臭かった。ポンデリングはやっぱり普通のプレーンがいちばんおいしいという結論。しかしここのミスド、いつもはがらがらなのにすごく混んでいた。たぶん西南口が出来て人の動線が変わり、みんなこのミスドの角に流れてくるからでしょう。たぶん下北全体の店の繁盛度合いも変わってきている気がする。ミスドでしばし歓談。何故か陰毛の話をしていた。20時に会場レテに戻る。ライブは滞りなく終始いい緊張感で終えれましたが、MCでわたし、アンプにつなぐシールドをとっさにタンポンのヒモに例えたりして、折角可愛いレテで、可愛い編成でライブしてきたのに最後はひどい感じで失礼しました。終演後はゴキブリの話で盛り上がった。なんかわたしたちネタと虫の話ばっかりしているね。お越しくださった方ありがとうございました。

6.2土
昼から新宿花園神社へ。今日は唐組の春公演『吸血姫』を観劇するのです(もう3回目)。14時にチケット引き換えに行ったら、すごい、はやくも長蛇の列だった。チケットを引き換えて、安定のベローチェさんで夜まで読書タイム。花房観音さんの『うかれ女島』読了。売春島で働いていた過去をもつ女たちとその家族、それに引き寄せられた女たちの群像劇で、そこに東電OL事件がモデルと思われる人物なんかも絡んで、もうめちゃくちゃわたしのドストライクなおはなしだった。きめ細やかな伏線の張り巡らされ方なんかも絶品で、後半は、うお〜と一人で何度もうなりながら読んでいたのだけど、いちばんは、母親が売春婦であったことを恨み続けていた息子と、その母親の関係で、天井裏から絵が見つかるシーンはうるうるきてしまった。売春島、行ってみたいなー。でもこれは小説やから、ほんまはこんなドラマチックなことはそうそうないのやろうけど。

うかれ女島

うかれ女島

18時すぎに花園神社の境内でI田さんとI嵐さんと待ち合わせて、3人で唐組の整列に並ぶ。すごい、今日もめちゃくちゃ大繁盛。3回目の『吸血姫』は3回目だけどすごかった。わたしが唐組を好きなのは、役者さんみなさん力入り過ぎて血管切れるんちゃうかと心配になるくらいの肉体から発せられる圧倒的な熱量と、矢のように飛んでくるリリカルな言葉のグルーヴ感。チープなのにかっこいい手作り感あふれる美術や舞台装置も大好きだし、衣装ひとつひとつもすごく可愛くて好みだけど、でもそういう衣装とか美術とかに誰一人負けていなく、人間の肉弾の魅力がちゃんといちばん前にある劇、こんな劇他にない。たぶん一生ファンだし、だから何回も見に行ってしまう。今日も最高に素晴らしい2時間半に興奮し、久保井さんにご挨拶だけして、I田さんI嵐さんと感想を言い合いながら、世界の山ちゃんで飲んだ。おふたりとも感動してくれていて、I嵐さんはもう一回見たいといっていた。でしょ、これは通ってしまうでしょ。世界の山ちゃん、実はわたし、生まれてはじめての山ちゃんだった。手羽先もはじめて食べた。手べたべたなるけどおいしかった。素晴らしいものを浴びてたいへん有意義な休日。

6.3日
わたしのアパートの裏には大家さん一家の一軒家が立っていて、すぐ隣のなので生活音や会話などもわりと筒抜けなのだけど、最近大家さん一家が荒れている。大家さん一家には、じいさんとばあさん、その息子と嫁、のたぶん4人が住んでて、ばあさんはたぶんちょっとボケている。ばあさんは野良猫の餌付けが趣味で、だから我がアパートの周りには野良猫がすごいたくさんいるんだけど、1時間に1回は「ニャーちゃんニャーちゃん」と大きな声で野良猫を呼んでいる。しかし嫁はそれをあんまりよく思っていなく、「このブタ猫!うるさい!鳴くんじゃない!」とかって影で野良猫を虐待しているのをわたしは聞いている。今日は「このブタ猫!」のあとに猫ちゃんが「ギャーン」とすごい声で鳴いたので、たぶん蹴ったか踏んだんだと思う。嫁、こええええ。そんな声を聞きながら、昼間はぼんやりと昨夜送本が届いた雑誌、『Meets Regional』7月号を読んだり(花房観音さんがIKAZUGOKEのことを書いてくださって、送ってくださった)、だいぶ前にインタビュー受けていた大阪のライブハウス難波ベアーズの本『がんばれ!ベアーズ』(こちらは北村早樹子名義でインタビュー受けてます)を読んだりして、それから一曲依頼されていた曲を要望のように録音して先方に送ったりした。