3.27〜4.2日記

3.27月
朝から普通に労働。後、夜は特選小説の担当編集O高さんとイラスト担当飯田さんと3人で、近所の飲み屋Kで連載約一周年乾杯(第十二回分を入稿したので)。O高さんはこれで3回目かな? わざわざいつも我らが足立区まで出向いてくださる。辰巳出版からはだいぶ遠い&帰宅ラッシュできつい道のりなのに。連載内容が連載内容なので当然というか、話題は殆ど下事情についてで、わたしも飯田さんも男性側の意見としてとても参考になるので、いつもわりとプライベーツを相談したりしてしまっている。が、今回は春樹ちゃんについてでひと盛り上がりする。O高さんも20代に春樹ちゃんを通ったらしく、スコッチを飲んだりして春樹ちゃんライフをちょっと真似てみたりもしたらしい。きゃ〜。でもあれだけ売れてるということは、ああいう春樹ちゃんの世界観に憧れて読んでいる人も相当数いらっしゃるのであろうなあ。若気の至り的に、若い子なら可愛いかもしれへんけど、わたしも10代にはじめて春樹ちゃん読んだときはこんなにここまで嫌悪感なかったのに、年々キッツ〜って思えてしまうようになってて、でもなによりきついのは、春樹ちゃんもう御年68歳なところやと発覚した。70歳手前で、未だにあの青臭純度100%の女性幻想を書き続けておられるって、一周まわって結構すごいっすね! という話に落ち着いた。飯田さんはもちろんのこと、O高さんも結構飲兵衛でらっしゃる様子で、このお店にはこたにサワーという飲兵衛の猛者たちには有名な100円の飲み物があって、「100円ですごい酔う」「足元持ってかれる」「翌日目がすごい腫れた」など色んな証言が出てるんですけどね、とO高さんに脅しながらススメる。するとそれまで普通にすいすいウーロンハイを飲んでいたO高さんの手が止まる。これは、やばいですね! とのこと。そこからトイレが近くなって、やはり、やばいらしい。しかしこれを「なんだ普通のチューハイじゃん」とゆってすいすい飲んでいたK井さんは、只者ではない説が濃厚。たのしく飲んで今後の連載の取材もんの相談などもし、11時頃にO高さんはジェントルメンに帰って行かれました。ごちそうさまでした。その後、飯田さんと日高屋で二次会。さっきとは一転、小説無事刊行できて我らの10年くらいの歴史を振り返ったり、わりと身近な女性ミュージシャンをやり玉に上げたりしながら、恐らく高円寺あたりでは出来ない話で盛り上がり、気づくと2時で蛍の光を流された。途中から隣の席に怖いおっさんが(いかにも足立区的な)座っちゃって、まずお水のボトルを我らのテーブルから奪われ、わたしには水を飲む権利がなくなり、おっさんはおっさんにしかわからないルールがすごく厳密にあるみたいで、水のボトルはここ、灰皿はここ、たばこはここ、ラーメンチャーハンはここ、そしてずっとスマホにイヤホンを突っ込んでなんらかの動画を見てるのか罵詈雑言を吐いていて、家で小鳥放し飼いにでもしてるのかセーターに鳥の羽根がものすごくたくさんついていた。絡んでこられたらこわいからずっとビビっていたのやけど、意外とこっちには興味がない様子でホッ。帰りも、自分の財布から出したお札を蛍光灯に1枚1枚かざしてずっとスカシがちゃんと入ってるか確認してて、レジでも結構時間かかってる模様で、でも店員さんは慣れてる模様やったので常連さんなのでしょう。改めて足立区ぽい光景やなあと思った。2時すぎに帰ってツイッターを見てたら、映画ライターのM永さんの訃報で湧いていた。

3.28火
ほんとに訃報が多い近年やけど、わたしは心が冷え切った人間なのでわりと訃報に揺らぐことは少なくて、面識あった人が亡くなっても、よっぽどじゃなければフーンぐらいで流すのやけど、M永さんの訃報はちょっと堪えているのかなんか思い出が蘇ってきて困る。M永さんは一時期、豊田道倫さんのライブの名物お客さんのようなおっさんやって、いつもすごい酔っぱらって絡んできて、しつこいし口悪いしめんどくさいおっさんやな〜と思っていた。最初は嫌いやった。でも何回も絡まれてるうちに、この人露悪的なだけでほんまは情にあつい寂しがり屋さんなんかもな〜と思ったら嫌いじゃなくなってきて、もう5年ぐらい前やけど、年末の豊田さんのNESTのライブで、何故か地べたに隣合わせに座ってふざけながら手つながれて見た。わたしは好きな人意外とのスキンシップは嫌なタイプやのに、何故かそのときは嫌じゃなくて楽しかった。それからクリスマスにユーロスペースで空族のオールナイト上映をやってて、わたしもM永さんもひとりで来てて、最後の1本は隣の席で見た。面白かったけど疲れ果てて迎えた朝、M永さんはいつもの悪ノリでホテルよってこうよ〜みたいなことゆってたけど、バーカバーカ絶対嫌〜とかゆって別れた。もしかしたら会ったのはあれが最後かもしれない。その後、何の病気かとかはわからんけど入退院繰り返してはって、でもツイッターで定期的にゲスいリプライ送ってくるから元気なんかと思ってた。もう死ぬもう死ぬってゆうのは初めて会った頃からゆってた。でもそうゆう人って死なへんもんやん。でも、死ぬんやね。もう死んだんやね。なんか一日M永さんのことばっかり考えてしまった。あ、でもメルマガの原稿はちゃんと書いた。

3.29水
朝からまたコーヒーカップを割ってしまった。今年になってもう3つコップを割っている。のは握力がだんだんなくなってきてるからかもしれない。昼から飯田さんとまた駅のホームで待ち合わせして、本日も高円寺へ女工さんとして出勤。やけどツアーのチラシ用に新しく著者近影を撮り下ろそうということになっていて、女工部屋で工場長さんのベッドに寝転がって、衣装着て本を持ってヤラシ〜感じ写真を撮った。押し倒されてる感満載の写真ですが、押し倒してるのは飯田さんです。『わたしのライオン』PVのときも思ったけど、飯田さんは「いいね〜、かわいいね〜うわっエロイっ」などと巧みな言葉責めで女の子をその気にさせる名カメラマンやと思う! そして飯田さんのことはわたしが押し倒して撮ったわけですが、飯田さんはエロい表情を作るのがとってもうまいのでカメラマンの腕関係なく撮れて助かりました。そしてふたりとも女工の姿に戻って真面目に内職。我らが共著『裸の村』は超特殊装丁なのに著者自らが組み立ててるので生産ラインが追い付いておらないのです! 女工ふたりが内職していて、工場長さんは今日は下の円盤で店番をしつつ外箱を作ってくれている。なんちゅう家内制手工場。そして隣では今撮ったばかりの著者近影を敏腕デザイナーU崎さんがすごい手の凝ったおもしろすぎるチラシデザインに仕上げるべくパソコンとにらめっこ。U崎さんは映像やデザインをやる人なのに、使ってるパソコンがウインドウズなところがたいへん信用できる! ウインドウズでこんなん作れるんすか!? てみんなにゆわれるらしいけど、わたしもそう思ってしまった。なんかデザインとかアートとかやる人はマックブック持ち歩いてるイメージで、実際マックのがデザインに向いてるんやろうけど、どうしてもわたしは、かっこつけちゃってさ〜ってちょっと思ってて、だからウインドウズでハイクオリティのもんを作ってくれるとわたしはうれしい! ちょっと今回のツアーチラシ、色々凝りまくったおもしろい仕掛け満載のになりますのでおたのしみにであります。今日も7時くらいまで働いて、飯田さんは夜は銀座仕事の関係で南行徳へ行かれ、わたしは大人しく帰り、家で映画『チョコレートデリンジャー』の劇伴曲をちょっと作りかけて、続きは明日。

3.30木
昨日ミニストップでスマートメール大人買いしたので、朝から手紙を書きまくり『裸の村』を送り付けるテロを実施。といっても本当に今回生産ラインが追い付いておらずなので、送りたい人全員には送れていないのがちょっと切ない。朝イチ集荷に間に合うようにポストにインして、それから映画『チョコデリ』の劇伴曲続きを作って、今回は三蔵のヌードテーマ、チョコちゃんのヌードテーマ、探偵事務所のテーマ、花くまさんのテーマなどを作って杉作監督へ送信。そして、今日はもう一個ミッションがある。アイホンを機種変更するのである! わたしはもう約6年間、アイホン4を使ってて、もうすぐバッテリー死ぬし、アプリも片っ端から開けなくなってきてて、画像もんはすぐ画面落ちるし、なによりラジコのタイムフリー機能が、アイホン4では使えないのであーる。でも、そういうダメな要素ばっかりやけど別に変えたいと思う気も起きてなかった、つい最近までは。それが、急に変えたくなる転機が訪れた! アイホン7に赤色が出たらしいのであーる! これは、わたしが変えるの待ってくれていたかのような青天の霹靂。赤あるの?ほんなら変えよかな! と近くのソフトバンクショップへ行くとすごく混んでいたので、この赤色ってまだあるんですか? と訊ねたところ、今ならありますとのこと! それなら、変えます! としかし、ものすごーく待たされて、結局この日、わたしは14時半に店に来たのに手続き完了して終わったのは21時前。閉店の20時をとっくに回っていた。年度末やからすごく混みあっているらしい。待ってる時間で持参していた花房観音さんの『黄泉醜女』を全部読み終えてしまった。

黄泉醜女 ヨモツシコメ

黄泉醜女 ヨモツシコメ

花房観音さんには前から興味あったけどちゃんと読んだことなくて、この『黄泉醜女』は木嶋佳苗ちゃんモチーフなので手に取ってみたのやけど、一時期佳苗ちゃん関連の本、いろんな人が書いてたけど、断トツ! これ断トツすごかった! これが小説の凄みか〜と思った。花房観音さんはものすごく自分の身も削りつつ、もしかしたら周囲に危険な種も巻きつつ、佳苗ちゃんに惹かれてしまう人間心理を何パターンも分析してそれを小説として書いておられて、最後のふたりの人身事故の電車内のやりとりがすさまじくって震えた。花房観音おもしろい! これから色々読もう。そんなこんなで読書に夢中やったので待ち時間はそんなに苦痛ではなかったけど、いざ機種変更して持ち帰ると、やはり4〜7では室町時代の農民が突然平成の世にタイムスリップしてしまったぐらい色々勝手が違ってて混乱。もともとのアイホン4の方はもう腐りかけでアップデートできなくなってたので、データ移行というのができなくて、全部電話帳アドレス手入力した。でも一人ずつのこと考えながら打ち込むというゆうのは、人間関係整理できていいなと思った。故くなった人が数人いて、でも亡くなっててもう連絡とることはないのやけど好きやった人はもう一回入力しちゃうね。逆に、生きてても金輪際会わないやろうって人は容赦なく消したので、わたしの電話帳は48人。ま、そんなもんでしょう。

3.31金
朝から普通に労働。10時すぎに、ミュージシャンのS田S子ちゃん、写真家N光くん、あとは某バンドのグッズデザイナーさんとか阿佐ヶ谷のコンコ堂って古本屋さんの店主さんとかのご一行が来て、なになに、どうしたん? これどういう会なん? と訊ねると、S子ちゃんに「北村さん、Xってどうっすか?」と興奮気味に言われ、そんなん人生でXについて考えたことなかったわ〜とかゆって、どうやらこのご一行は朝8時半からX-JAPANの映画を見てきたのらしい! そんな映画やってること自体知らんかったわ! しかもそんな朝も早ようからすごい情熱やねえ! 色々喋りたかったけど忙しかったのであんまり喋れなかった残念。昼過ぎ、金属の煮えくり返ったヤカンを素手で握って左手をやけどする。どんくさい。水ぶくれ痛くて著しく戦闘能力が落ちる。オロナイン塗ったけど意味あるんかな? 効能みたら、ニキビ、やけど、インキン、たむし、って全部一緒くたにされていた。効くんかな? 帰り際にはTレットJさんも来た。ここで働いてるとこうやって偶然知人にばったり会えるから、生存確認のためにもいいなと思った。実際N光くんも一時ご病気されててげっそりしちゃってたけど、ひさしぶりに会ったら元気そうやった。夕方、北村早樹子の読み物メルマガ「そんなに不幸が嫌かよ!」3月号が配信になりました。今月は特殊小説『裸の村』制作日誌を長々と書きました。登録無料でバックナンバーも読み放題なので、ご興味ある方はこちらから→http://www.mag2.com/m/0001664038.html

4.1土
寝てるはずの時間に無意識で起き出してわたしはカフェオレを作り(ちゃんとドリップしてね)、そしてそれをほとんど飲まないまますべてこたつの布団の上にひっくり返し、気づいた時には寝間着もこたつ布団も座椅子も染み染みでびっちょんこになっていた。寒いけどこたつ布団は洗濯するしかないと思って洗濯機入れて回して、さあ干そうと窓を開けたら外は雨。えー今日雨なん!? でも小雨やから気にせず干して、わたしは寒いから布団に埋まっていたら、ひさしぶりにM本K吉さんからメッセージが来て、某誌をひさしぶりに作ろうと決心したので原稿依頼を下さった。たいへん光栄である。他では絶対書けないのを書きますと約束する。昼過ぎにヨーカドーさんのJTBにツアーの帰り便のぷらっとこだまのチケット取りに行き、一旦帰って、やはりコーヒー牛乳くさい座椅子や敷物をファブり倒して、夜は池袋。ひさしぶりにジュンク堂に行って、花房観音さまの新刊『わたつみ』を購入。近くのベローチェで読みかけるとU崎さんからチラシデザインの裏面が届く。細かいところまで芸の込んだ素晴らしいデザインなのやけど、自分の写真が一点、これはどうやろう、、、という悩む部分があったので、とりあえず一晩悩むことにする。というのも、これからわたしは新文芸坐で8時間越えの強烈な暴力映画4本立てオールナイト上映に行くからである。200人以上の映画ファンたちがひしめき合うロビーは、すでにむさくるしい。でも偶然お隣にスーサイドララバイトートバックを持ったイカしたおねえさんが座っていて、さっそくスーララR夫さんに報告(別件でも連絡があったのでついでの報告)まずは小林勇貴監督『孤高の遠吠』見たいと思いつつ見れてなかったので楽しみにしていた。本物の富士宮の暴走族ちゃんたちしか出てこない、でもドキュメンタリーというわけでもない劇映画で、どうやってこんなヤンチャな暴走族たちを手名付けて撮ったのか不思議やったのやけど、舞台挨拶に登壇して、「撮影中に逮捕者続出で困っちゃいましたー」とかにこにこおっしゃってた。小林監督は今、鈴木智彦さん著の『我が一家全員死刑』の映画化中ならしく、今後わくわくさしてくれる若い監督さんやな〜という感じやった。2本目は亀井亨監督平山夢明原作の『無垢の祈り』で一回アップリンクで見たのやけど、二回目見る価値十分ある名作と改めて思った。BBゴローが本当に芝居がうますぎて怖い。主演の少女フミちゃんの最後の「殺してください」の絶叫は二回目でも号泣してしまった。ほんで3本目、何の予備知識もなくみた「KARATE KILL」という映画が、ものすごくよく出来たアクション映画なのやけど、アメリカのキチガイ教団の話で予想外に好みやってすごくたのしく拝見した。この映画は主演のハヤテさんという人がものすごい身体能力でフランスのなんちゃら行動学とかあらゆる筋肉の動きとかをちゃんと勉強しておられる超プロの人らしく、普通やったら即死のような技を全部スタントなしで自分でやってるらしくって、切りあいや撃ち合いも全部アメリカでマジで撮ってるぽくて、アクションが洗練されまくっててめちゃんこかっこよかったのやけど、これを見て、1本目の『孤高の遠吠』を思い出すと、あの富士宮のヤンキーたちはあれ、きっと受け身とか武道とかアクションの心得ある人なんて一人もおるように見えなくて、ほんまにガチの喧嘩を本気でやってるだけように見えたので、どっちが怖いのかというと、え、どっちが怖いんやろ? てなった。実際、『孤高の遠吠』キャストロールで 〇〇〇〇 失踪中 とか流れてて、笑っちゃったけど笑えないよね。でも男の子は、こういうバイク乗りとか喧嘩とか、女抱く以外にもロマンがいっぱいあって楽しそうでいいな〜って思いました。最後の1本は篠崎誠監督の『SHARING』で、これは主演で社会心理学者役の山田キヌヲさんの理性が破れていく様がすごく怖かった。暴力という暴力は出てこないけど、監督が「見ればわかるとおもうんですが、ソフト化が出来ない映画なので」といってる意味がわかった。3.11を扱うことは娯楽にしてしまうにはタブーだし、それがアートならオッケーかっちゅうとそれも変やし、色々ぎりぎりな映画やった。でも役者さんもみんな上手やし、2時間あるのにたるくはならない緊張感がずっと切れない作品やったから、4時半〜6時半といういちばんきつい時間帯やったけど全然眠くならなかった。知ってる役者さんが思いの外たくさんでていた。一昨年の夏、新潟でわたしのお母さん役やった兵藤公美さんが演劇学科の先生の役で、公美さんは普段映画美学校で先生やってらっしゃるからすごい自然のままやって、あと鳩の研究者役の木村知貴さんは役の中でも外でもいつも酔っ払いの役やな〜とか思った。この4本をこの順番でみせる新文芸坐の確信犯にギャフンな気持ちで、不眠症のくせに映画館ではよく寝るわたしが全く眠くならずに最後まで楽しみまくって清々しい朝、池袋の東口には人間の吐しゃ物をハトポッポが啄んでいて、鳩の研究者木村さーんと思った。こういうプログラムやと圧倒的に男性客が多いから女子便はわりと空いてたし、新文芸坐は300円でドリンクバーがあるとか、眠れぬ夜に家を飛び出したいときはいいスポットやな〜と思って朝帰り。帰ってタイツ脱いだら両膝擦りむいて流血して固まってて、そういえば途中退場したクソガキに鋭利な靴でおもっきし両膝を蹴り飛ばされたのやった。暴力見過ぎて麻痺してたけど、結構な暴力をわたしも受けていた。こちとら骨粗鬆症やねんぞ! ファック!



4.2日
一晩、暴力映画を浴びながら考えて、やっぱりあの写真は買えてもらおうと決心して、帰りの電車でその旨をU崎さん飯田さんに連絡。飯田さんがすぐにほかのカット全部を送ってくれて選んで相談してわりとすぐに解決した。あとは寝たいような、でも眠れないよう感じで一日、集中力のないおつむのままだらだら事務的な仕事をしてちょっと部屋を片付けたりしてたら一日が終わった。