1.15〜21日記

1.15月
朝から労働。昼からU本I子さんがいらっしゃる。しかも某誌の取材で、その取材先の編集者さんもIKAZUGOKEのレコ発も横浜ライブも来てくださっていた方やって、会計時、「北村さんが何故ここに…」的な空気になる。U本さんともご挨拶できてうれしかった。上がってアイホンを見ると、I田さんがちょうど新宿で時間持て余してる風やってお茶のお誘いが来たので、労働先でお茶した。帰って読書。U本さんの本は読み終わったので、木村紅美さんの芥川賞候補作『雪子さんの足音』読了。高円寺にある昔ながらの下宿アパートのおはなしで、大家のおばあさん雪子さんがすごくお節介で、サロンと呼んでいる雪子さんの部屋で出来ればみんなでごはんを一緒に食べたがったり、それを拒んだら出前をしてきたり、ありがたいことやんって他人事では思うけれど、わたしやったら完全に嫌。ちなみに主人公は男子大学生。しかも職権乱用で勝手に部屋に入って掃除までしてくる、そしてそれを問い質すとしらばっくれるという始末。おまけにもうひとりの住人でサロンに入り浸ってるOLの女性と勝手に結婚を企てようとしてくるお節介ぶり。ものすごく大きなドラマがあるわけではないけれど、それぞれの日常の暮らしが細やかに描かれてて、これは芥川賞にふさわしい作品や! ぜひ取って欲しい! なんて勝手に思う。というのも、紅美さんとはわめぞの忘年会で2年くらい前にお話させていただいたこともあり、ライブにも来てくださったことがあるお方。陰ながら結構まじでどきどき。発表は明日。

雪子さんの足音

雪子さんの足音

1.16火
朝から明日の円盤月例ライブで配る新聞を作ってコンビニへ印刷しにいく。昼間は明日のライブの練習。ライブでは10年以上やってなかったとある曲を、常連のお客様からリクエストいただいてて、それを久しぶりにライブでやるようにコードを起こす。自分で作っておきながら、どんなコードやったか完全に忘れててびびる。夕方からI氏が綾瀬に来訪。こたにで密談。内容はこんなところには書けません。しかし足立区という場所は、都心では言えないことを堂々と話せるので(都心や中央線沿線の飲み屋やとどこに知人やその知人がいるかわからないからね)結構色んな方がはるばるいらしてくださる。東京の北東にあたるのかな、こちらの魅力をわかってもらえるとうれしい。飲み屋を出て駅でI氏をお送りして、アイホンを見たら芥川賞直木賞が決まっていた。残念ながら木村紅美さんではなかった。帰って、紅美さんの『月食の日』を改めて読み返し始める。こちらは全盲の青年のおはなし。全盲だけれど女友達がとても多く、介助もほぼなくひとりで暮らしている按摩師の青年の話。『雪子さんの足音』にも共通するけれど、紅美さんの小説は隣人のことがいつもとても丁寧に観察されている。確かにアパートの隣人や上階の人のことって気になるよね。友人の嫁とふたりきりで月食を迎えることになり、地球儀を濡らして拭きながら、月食の景色を全盲の青年に嫁が教えるシーンが、なんかとてもエロティックやなあと思った。

月食の日

月食の日

1.17水
円盤の月例ワンマン。家で入念に練習したせいか、とても集中して本番に挑めた。まるまる1時間、ほんまに一切合切MCなし拍手なしで歌いたくるライブ。ファーストアルバムから「約束やぶり」という歌をうたった。あのアルバム『聴心器』を出したのは2006年やったからもう12年前。作ってから時間が経ってる歌はこの歳になって歌うとちょっとこっぱずかしいものなんやけど、でもこの歌はそんな恥ずかしくなく歌えた。先月まで、結構半年スパンくらいでずっと喉の調子が悪かったのやけど、今日はまた喉が復活したような気がした。たぶん韓国海苔効果。わたしこのところ韓国海苔が主食状態なのだけど、韓国海苔ってあぶらっこいから、あの油分が喉に浸透したのであろう。あとミスドのカフェオレ。カフェオレって乳の油分があるやないですか。寸前までミスドのカフェオレをおかわりしまくって、特選小説の原稿を書いていたので、韓国海苔ミスドのカフェオレで喉に油分が満ちて、声が絶好調になったのではないでしょうか! ライブにはK野さんがいらしてくれており、終わったあと、I島さんとK野さんとで成都でごはんを食べた。成都、昔行ったときは程よく汚くて居心地よかったのに、何を血迷ったか、めっちゃ綺麗になってて、つまんないカフェバーみたいな内装になってて引く。しかし、相変わらずお料理は安い。餃子が一個でわたしの握りこぶしくらいの大きさがあってビビった。でもおいしかった。お店を出て、K野さんがおうちの方向一緒だからといって車で家まで送ってくださった。車で都心を走れる機会ってなかなかないから、車窓をながめながらここどこ?ここどこ?と興奮。大久保通、いたるところに救急車やパトカーが止まってた。千代田区が終わって東京の北東区域へ入ると一気に明るさが消えて、川と倉庫街みたいになってて、明かりはファミレスくらいで、こういう町のファミレスは街の灯って感じで風情があっていいなあと思った。

1.18木
労働。特筆すべきことはなし。

1.19金
今日も部屋が寒いので早めに家を出て下北沢。夜はB&Bでいとうせいこうさんと枡野浩一さんのイベントをみるので、それまでミスドで3時間ほど執筆。飽きてきて、古書ビビビによって古本を二冊買う。

爛れた闇の帝国

爛れた闇の帝国

ピース

ピース

B&B、ライブハウスの上に移転したのだね。以前に、石丸元章さんとイベントさせていただいたときとは全然違う場所になっててびっくり。生で見るいとうせいこうさんはとてもシャープな輪郭で表情もキリっとしていて、トゥキトゥキに尖がっていた。トーク内容も、お笑いを枡野さんとふたりですごく冷静に分析してらしてたいへん勉強になった。飯田さんはとなりで授業中のごとくメモをとりまくっていた。でもそれくらい、名言に満ちていた。終わって、今更ですが、IKAZUGOKEの惹句で「日本のヒップホップはいとうせいこう以前に存在した?!」と、お名前を使わせていただいた無礼をお詫びしてアルバムをお渡しした。(一応事務所にご連絡したのだけど返答なく……返答ないってことは勝手にしててことかなと思って勝手に使わせていただきました。ちなみに、日本のヒップホップはいとうせいこう以前には存在してません!)どうみても不審な二人組やったのにも関わらず、枡野さんが我々のことを隣でいとうせいこうさんに説明してくださってて、なんてええ人なんや〜と感動。いとうせうこうさんの小説は実は読んだことがなかったので『どんぶらこ』というのを買った。ひさしぶりに本をたくさん散財。お金はなくなったけどいい気分。
どんぶらこ

どんぶらこ

1.20土
昼から新宿のスタジオで来週の大バンドのためのバンド練習。はじめてつかったスタジオやったのやけど、確かに時間で計算すると安いのに、延長コード1本借りるにもオプション料金1時間100円とか取られて、しかも機材とか場所動かしてたらペナルティで500円かかるという注意書きが至るところに貼り付けてあって、おまけに10分前にはスタジオ出ないといけないという、なんというか色々ケチで感じが悪いスタジオやった。ので来週の練習はキャンセルして別のスタジオをギターの石井さんが普段使ってるところ予約してくれた。今回大バンドでは1年ぶりのライブだし、しかも無謀にもアレンジをがらっと変えるつもりの曲が何曲ある上に新曲もやるつもり。練習はあと一回。なんとかなるでしょうか。だけどスタジオでみんな積極的に色々意見をだしてくれてうれしかった。練習後、ドラムのキクイさんのギターの石井さんは予定があるのでお帰りになったので、残りのベースのユッキーとキーボードの榎本さんでベローチェでお茶した。主に虫のはなしで盛り上がった。ユッキーが可愛いワンピースをふたつくれた。わたしの着てる洋服はこうやってみんなからもらったお下がりの洋服だらけです。だから貧乏やけど辛うじて可愛い衣類に包まれて生きていけている気がする。

1.21日
ふと思い立って、布団と毛布を縫い合わせる(手縫いで)というミッションをはじめる。布団の中で本読みながらゴロゴロしてたらどんどん布団と毛布が外れて巻き巻きになって毛布が毛布の役割を果たさなくなってくるので、それを防ぐべく縫い合わせてやろうという魂胆。というか、小さい頃、おばあちゃんがこうやって冬場、毛布と布団を縫い合わせてくれてたなあと思い出す。ちびっこは寝相悪いから毛布蹴って外してしまうからね。わたしはもう三十路ですが、寝るまでの間に毛布どっかいっちゃうからね。突然料理をしたくなり、トマト缶でポトフを作った。もちろんストーブの上で。なのでほぼガス使っていない。わたしは料理滅多としないし、冬場は大鍋とストーブでおでんしか作らない。おでんは煮るのにだいぶ時間がかかってだいたい当日は食べられないけど、ポトフは食べられた。でもあんまりおいしくない。ひとりでつくるごはんは滅多においしくない。