1.8〜14日記

1.8月
朝から労働。祝日、世は成人式。とはいえ、振袖女子は一人も見かけなかったけど、男子の袴は何人か見た。早朝からドタバタ働いて、夕方帰宅。特筆すべきことはない感じ。

1.9火
病院デー。朝から二つの科をはしご。まあおなじ病院内やからそんなしんどくはない。しかし、待った。午前中の方の先生は予約してても1時間以上余裕で待つ&診察は1分で終わる。超テキトー。いつものように採血&検尿&高級お注射。検尿しようと、渡された紙コップ持ってトイレ入ったら、紙コップの中にポタっと誰かの血がついているのに気づき、看護婦さんに「あのう、これ血いが……」と言って変えてもらう。あのまま気づかずにおしっこしてたら、わたし血尿出たことになってたのであろうか。しかも誰の血いかもわからんし。こわいこわい。無事診察両方終わって、処方箋薬局で1か月分の大量のお薬をもらい(もらったというか購入し)京橋に移動。時間までちょっと時間あったので、喫茶パストラルという古臭い喫茶店を見つけて入る。アイスコーヒー最初からシロップ入ってるやつやって好みの感じ、読み逃してた、溝口敦氏と鈴木智彦さんの山口組対談が載っている週刊現代があった! 週刊誌がそろってる喫茶店はいい喫茶店。テアトル試写室で末井昭さんの半生を綴った名著『素敵なダイナマイトスキャンダル』がこの春映画化されるのやけど、それの試写に呼んでいただき拝見。わたしはこの原作のファンでもあるし末井さんのファンでもあるけど、これは映画としても抜群によかった。画面から漲る80年代90年代のバブル感。わたしはバブルを体験してないのだけど、当時の東京はこうやったんか〜と眩しく拝見。わたしの大好きな喫茶丘がロケ地として何度も出てきてうれしかった。柄本佑は本当に末井さんにしか見えなかったし、キャスティング全部最高やった。ペーソスメンバーもちらちら出てきてニヤニヤしちゃった。末井さんは、こうやって自分の半生が映画化されるというのはどんなお気持ちなのかな〜とか考えた。主題歌がこれまた最高なんだけど、たぶんまだ秘密っぽい。

1.10水
朝から普通に労働。モーニングにI島さんがいらっしゃる。これは偶然。今日はデビットボウイの命日だからこれからデビットボウイの映画を見るんだって。I島さんは「戦場のメリークリスマス」でデビットボウイと共演してるはるもんな〜。すごいよな〜。ドタバタ働いてたら、あれっもしや? と、わたしが今読んでる本の文筆家さんで写真家さんでもある方がいらしていた。というのは仕事終わってアイホン見たら、その本の中にも幾度か登場するライターK田さんからメールが来てて「今しがたU本さんが北村さんを発見しました」と書いてあり、ああ!やっぱり! となった。こういう形で色んな人と出会えたりもするので、このバイトはやめられないなあと思う。とはいえバイト中はなるべくただのウエイトレスになろうと心がけています。労働後、下北へ美貴ヲさんの劇『アベサダ・リローデッド』という劇を見に行った。ちゃんとした劇場で劇をやるというのはいいなあと思った。照明や音響で演出が出来るんやなあと思った。石田吉蔵役の男の人がうまかった。そしてわたしは阿部定事件のこと、ほんのさわりしか知らんかったんやなあと思った。

1.11木
今、特にオファーがあってとかではないけれど家でカリカリと小説を書いている。それが楽しい。しかし家は寒くて手がかじかんでキーボードを叩けないレベル。これはいかん。今日は夜に渋谷で岸野さんのワッツタワーズを見に行こうと思ってたので、早い目に家を出て渋谷。人間関係に行こうかと思ったけどライブハウスとは反対側になるからやめて結局ドトールに3時間くらい居座って書いた。夜はO-WESTで岸野さん率いるワッツタワーズのライブ。去年も来たけど、今年も来た。1年に1度しか見られないワッツタワーズ。今年は2階席に最初から座って見ていた。けどワッツタワーズがはじまったら興奮して立ち上がって見てしまうね。ワッツタワーズは、皮肉に満ちていてだけど一貫して楽しい極上の音楽エンターテインメントで、普段は機嫌の悪いわたしですが、ライブ中ずっと笑顔やった。わたしはライブハウスという場所が決して好きではなく、お祭り的なノリも決して好きではない、だけど、岸野さんのやるパフォーマンスは全部好きだ! 毎年会場でいろんな人に会う。今年も色んな人に会った。帰り道は阿佐ヶ谷よるのひるねのかどちゃんと一緒になったので駅まで一緒に帰りました。かどちゃんは帰ってこれから店開けると言っていた。すでに11時前なのに。えらい。。。

1.12金
朝から洗濯。そしてやっぱり家が寒すぎるので近所のベローチェさんに行って、小説を書く。夜は飯田さんが家にやってきて、明日の赤犬ワンマンに我らIKAZUGOKEは小芝居で少し出演させていただくのですが、それの練習をちょっとふたりでやった。といっても、他にも4人登場人物がいる小芝居なので、練習というほど練習にはならず。出たとこ勝負やな、てことで、2月14日の阿佐ヶ谷よるのひるねでやるイベント「おとこ教室(母親教室番外編)」の打ち合わせ。よるひるでふたりでやるイベントはトークが主体なのでIKAZUGOKEとは根本的に違う感じ。作り方も違う。そもそもトークイベントの認識の仕方から、ふたりの間で齟齬があるので、そこらへんから結構ガチンコで話し合った。概ね趣旨が固まったのはもう11時半くらい。飯田さん、お酒も飲まずよく頑張りました! これから飲む? かと思ったけど、飯田さんは帰ってアニメーションをつくる宿題があるらしいので潔く解散。

1.13土
14時に駅のホームで飯田さんと落ち合って、代官山ユニットへ。今日は尊敬する赤犬のワンマンライブに、小芝居ゲストとしてちょっと出演させていただく日。代官山、ほんと縁がない場所なので駅降りてライブハウス直行。ついたら赤犬さんたち楽器の音響チェックをやっていて、ボーカルのタカアキさんが最後に客席に投げるサインボール(全部有名人の偽サイン)を作ってて、わたしと飯田さんも交じってサインボール作り。川俣軍司とか関根元とか木嶋佳苗とか阿部定とか殺人鬼のサインばっかり書いた犯人はわたしです☆ 我らのパートがくるまで赤犬さんのリハを拝見。クスミヒデオさんのバンマスっぷりが本当にかっこよくってものすごく勉強になった。赤犬は総勢13人の超大所帯バンドで、音楽だけじゃなくパホーマンスが締める割合がかなり大きい、メインボーカルのタカアキさんとナイトサパーズの3人は、ほぼ一曲ずつ着替えるしメイクやヅラも変える、構成がものすごいちゃんと計算されていて、一個おかしくなったら全部おかしくなるのを、全く威圧的ではなくまとめあげているのがナイトサパーズのひとりであるクスミヒデオさんで、小芝居の脚本も全部ヒデオさんが作っておられる。ええ歳のおっさんたちが全編無邪気にふざけていて最高に楽しいのが赤犬のライブなんだけど、けれどあれはただのお調子者がひとりでもおったら絶対成立しない。元々はただのお客でファンやったのが、今回こうやって参加させていただいて痛感したのが、赤犬はメンバー全員がものすごい人間力の持ち主で、キチガイぶった人なんてひとりもいない。だけど全員サービス精神が半端やなくて笑いのセンスも当然抜群、だけど我が我がと自意識剥きだしおっさんはひとりもいなくて、みんな自分の役割を全うしていらっしゃる。これが25年つづいてきたバンドか……ん?バンド? いやそのへん小劇団以上のことをやっておられるなあ、今回もアンコールでハリボテのペガサスお神輿にタカアキさんが乗って登場し、それをみんなでわっしょいわっしょいする演出があったのやけど、あんな巨大なお神輿を大阪から持ってきたという凄まじさ。どこを見回しても素晴らしくてリハから感動しっぱなし、コント部分のリハもヒデオさんが楽しく殺陣をつけてくれたりして、ああ、こんな素敵な人たちの中にひとときでも混じれるという幸せを噛みしめる。17時開場18時開演、ということになってるのだけど、17時からメンバーたちのかくし芸大会がはじまるので、実質17時からずっと本番。ナイトサパーズ鉄平さんによる大脚立のブラックメタル出初式は曲芸の域やったし、ロビンさん扮する邪王院龍斎先生によるタップダンス黒田節もまじで黒田節の先生やと信じてしまう貫禄で爆笑、そしてクスミヒデオさん扮するダスティンホフマン独り芝居からの「エンジェルオブフォーチュン」熱唱(←この曲もしれっとこれ用に拵えたオリジナルソングらしい)、全部おもしろすぎて笑い過ぎておなか痛くなる。既にこんな満足度でまだ本編前ってまじ? みなさん本番の着替えやメイクも忙しいのに、その前から本気出し過ぎ! だけどだからこそ最高なんやなあと思った。わたしなんかやと、着替えなるべく減らそうとか化粧も変えずに出来る段取りにしようとか考えちゃうけど、みなさん、おもっきし白塗りになって、全部落として、また塗り替える、など気合の入り方が尋常やないと舞台袖で見ていて思いました。赤犬のすばらしさはその手作り感で、衣装も段ボールだらけやし、ほんでそんな衣装も男たちで作っているというところがたまらないよね! そしてこんなことやってらっしゃるけどみなさん普段は仕事していてだいたい家庭持ちでお子さんもいて人の親である。ああ、こんなお父さんやったら最高やなあと思う。実際客席にも楽屋にも赤ちゃんやお子連れの方がいっぱいいた。けど、子どもが見ても絶対きゃっきゃ楽しめる内容やったなあ。もう最初から最後まで最高に楽しかった。あ、書き忘れましたが、わたしと飯田さんはセーラー服を着て(それもわたしのセーラーはヒデオさんのお姉さまが30年以上前にまじで着ていらっしゃった制服)コントをしました。お姉さまがヤンチャやったのか、当時はこの長さがデフォルトやったのか、セーラーの丈がめちゃ短くて、たぶんわたしブラジャー丸見えでしたね笑 あ〜楽しかった。終わった後、楽屋に森下くるみさんとしじみさんがいらしてて、ひさしぶりにお会い出来てうれしかった。みんなで新宿にながれ、赤犬さんはロビンさんとリシュウさん以外はそのままもう大阪へトンボ帰りだそうで帰っちゃったけど、みんなで新宿三丁目の銅鑼で飲んだ。ボギーさんという、ギンティ小林さんの本『新耳袋殴り込み』の中に出てくる、首吊り廃墟の紹介人の人にもお会い出来て勝手に興奮。あと映画『味園ユニバース』の山下監督や脚本向井さん、それから最近はauのCMにも出てはる売れっ子俳優前野さんなんかもいて豪華な面々。みんな赤犬を慕う、大阪芸大からの後輩で、そういう意味ではわたしも直系の後輩にあたるわけです。わたしの年は不作で、特にわたしのいた文芸学科はほんとにつまらない人しかいなくて友達全然できなかって、学祭も行ったり行かなかったりやったけど、赤犬がメインステージに出る年だけは毎年見に行っていた。なつかしい。そんな憧れの大先輩のステージにこんな形で参加させていただけてほんとに夢のような一夜でした。

1.14日
昨夜があまりに楽しすぎたので今日はもう何にもしたくない。昼頃宅急便で敬愛する写真家K蔵さんから小包が届く。真っ赤な手袋と、楳図かずおの真っ赤な可愛いポーチ。心底うれしかった。しかし家は相変わらず寒いし何をする気も起きない。のでだいたいずっと布団被って本読んでいた。植本一子さんの『降伏の記録』を読み終えた。植本一子さんは、たぶん同い年で、母親への怨念がすごくて一子さん側から絶縁していらっしゃったり、とにかく嘘がつけない人やったりするのとか、色々自分と境遇が似ていて、読んでいて本当に身につまされる本やった。とはいえ、植本一子さんはわたしと違って、結婚していらして二児の母であり、そして旦那様は有名ミュージシャンのECDさんで、そしてECDさんはもう何年も癌で余命宣告をされた状態で暮らしておられる。癌患者の妻であり、二児の母であり、仕事もしておられて、わたしのように、自分ひとり孤独に酔ってその日暮らしの行かず後家とかいっていられる境遇ではない。だけどお母さんになっていても、心はおなじなんやと読んでいて自分と重なり過ぎて何回も涙が出た。旦那がいても、子どもがいても、一子さんはずっと孤独で、そんな孤独を丸ごと受け止めてくれる相手を探して恋人作ったりもするけれど、やっぱりうまくいかなくなっちゃう。だって、いちばん根本にあるのはお母さんなんだから。これはわたしもそうだ。わたしも一子さんのところとはちょっと違うけれどもう修復不可能な溝が出来てしまって、家族とはこちらから縁を切ったと思っている。だけど、自分の誕生日がこんなに嫌いなのも、本当はお母さんに愛されたかったことへの裏返しで、それは今更どうにもならない。今更抱きしめられたところできっとわたしは何もうれしくもないし感動もしない自信がある。わたしがそういうお母さんへの気持ちをどんなに歌にこめて攻撃しても、全く攻撃はきかない。だって相手はモンスターだから。一子さんが血を流しながら書いた本を読んでも、きっといちばん伝えたい人、お母さんと石田さんには何も伝わらなくて落胆しておられて、すごく自分を重ねてしまった。わたしもその絶望の中で生きている。わたしは歌での攻撃がきかなかったので、今は文章で攻撃しようとしている。全部を書いてやると思っている。歌と文章で全部を書いて突き付けてやると思っている。けれど、そんなことをしても周囲の大半はバカだなあ〜と思うんでしょう。そんなん個人的にやれば? とかって思うんでしょう。だけど、一子さんが先陣を切ってこういう本を出してくれたことによって、わたしのようにとても勇気づけられた人間もいる。