5.22〜28日記

5.22月
労働前の早朝、昨晩からしこしこ書いていた某誌への原稿をK吉さんに提出。おもしろがっていただけてホッ。K吉さんの作る雑誌『溺死ジャーナル』はいつも確実におもしろいけどあれはたぶんおもしろくないのは容赦なく切ってはるからなんやろうと思う。なのでお声をかけていただけたからには力が入ります。そもそも最初にわたしに、文章のオッファーくださったのは、K吉さんやった気がする。K吉さん様様です。その後は普通に労働。午前中、円盤でときどきお会いするA生さんがいらっしゃって、向こうもわたしがまさかこんなところでバイトしてるって知らなったみたいで驚いておられた。A生さんは、普段の服装とは違う、ビジネスウーマンスタイルで、デキる女感が漲っておられて(A生さんはバンドマンであり編集者さんでもある)かっこいーと思った。昼からは某A賞作家のMさまが個室で新作会議的なことをしていらした。美人編集者A井さんもはじめて拝見した。こんなこと、普段は恥ずかしいし絶対ゆわないようにしているのやけど、ついうっかり興奮して、Mさまに新作めちゃんこ素晴らしかったですって小声で伝えてしまった。ウエイトレスに突然そんなん言われてもきもいよね。あとから反省した。でもこれ、S石監督との出会いもこんな感じやったなあ、今思えば。その他は特筆すべきことはない。

5.23火
朝から労働、後、夜は某高級住宅街の方へ。T子邸で6月10日のライブの打ち合わせ&練習&ごはん懇親会。このあたりは全然馴染みがなく、迷子になりながら歩いてたのやけど、T子氏いわく、近所にT中N人が住んでたり、M子さまの生家があられるらしい。T子氏は新婚さんで、おうちがもう可愛いものしかない。お邪魔するなり、新婚旅行でチェコに行ったお土産でかわいいもの責めされてうろたえる。T子邸は家具も食器も楽器も全部ウルトラ可愛いくて狂喜乱舞。ライブでどの楽器を使うかを相談してたら、出るわ出るわ可愛い楽器たち。トイピアノだけでこんなにたくさん持ってる人しらんわ! アコーディオンも何個かあって、オモチャ楽器も数えきれないほどあって本当に狂喜乱舞してしまった。この6月10日は普通のライブとは違って、T子ちゃんのちるめらと、わたしたち、お互いの曲にも参加したり、曲を交換して演奏したり、とりあえず全員出ずっぱり状態になる予定です。E本さんも到着し、色んな楽器を広げて弾いてみたり吹いてみたり歌ってみたり、選曲&編成の会議を結構みっちりやった。ら、わたし、折角治っていたはずの声がまた徐々に何故か掠れていき、帰りには完全なるダミ声になってしまっていた。うそやん。治ってなかったんか?!と焦る。練習のあとは、今村シェフがおいしいごはんをつくってくださって、天ぷらパーティがはじまった! 天ぷらをおうちで出来るなんてよっぽどよって思うし、しかも揚げたてをどんどん出してくださるからどれもこれも超おいしかった。春菊の天ぷらがいちばん気に入った。他にもチーズの天ぷらとかアボカドとか、見たことのないものがたくさん揚っていた。それからサラダもおいしかった。可愛いおうちで栄養満点のおいしいごはんをたらふくごちそうになり、満腹。アップライト型のトイピアノを一台お貸しいただけることになり、そしておさがりの洋服もたくさんつめてくれてT子福袋を出来上がり、ガラガラも貸してくださって、トイピアノと服袋を引きづりながら帰路。超楽しかったけど、しかし、6月10日、かなり課題が多い! 練習しまくらなければいけない! と焦りながらE本さんとふたりで駅まで歩く。しかしこの辺から我が家のある足立区に帰るのはかなりの道のりで、1時間以上余裕でかかっちゃう。東京って広いねんな〜とか改めて思った。

5.24水
起きるとやはり声が死んでおり、もともと今日は持病の虎ノ門の病院の予約があったのやけど、急遽有楽町の喉の名医のところにもはしごすることが決定。ほんとは体調崩してるときは例の高級お注射はぶっこめないらしのやけど、これ以上先延ばしにされたらこちらが生きてけますかどうですかて感じなんを伝えて打ってもらった。それから有楽町へ。徒歩20分以上かかるけど、日比谷公園を散歩がてら歩くのは気持ちいいし悪くないなあと思ったけど、ちょうど昼休み、ランチに繰り出すイケイケのOLさん&サラリーマンたちの群れがちょっと怖かった。喉病院は相変わらず混んでいた。でも一応予約してたので早めに呼ばれて診察。前回は、ライブまで日が迫ってたから点滴の荒療治で治したけど、毎度あれではあかんので今回は慎重に治しましょうと言われてしまい、抗生剤と漢方出されて終わった。無念。点滴したかったのに。大量のお薬を持って、今度は高円寺へ移動。例のタコ部屋で今日も「裸の村」製本の内職作業です。末井さんとトークイベントさせていただけるおかげで、青山ブックセンターから大口の(当社比)注文をいただいたので生産ラインが追い付きません!状態でうれしい悲鳴。今日は32冊完成本を作って、あと途中までのシャム双生児状態のを数冊作った。夜はK井さんと飲んだ。大将でしばらく飲んでおしゃべりして、二軒目はらいそという銭湯の前にある可愛い長屋を改造したみたいなバーで飲んだ。K井さんに戯曲の意味を教わった。わたしは演劇一年生のぺーぺーだし、想像力も貧相なので台本を読んでもあんまり意味が分からないことが多く、しかし、K井さんはもうK組歴30年、今や演出を担ってらっしゃるだけあって、K十郎の台本を読むと、全部音楽のようになって聞こえてくるそう。確かに、K組のあの独特の言葉の畳みかけのオーケストラは他の人の劇団とはだいぶ特殊やけど、そう、戯曲はある意味楽譜なのやって教えてもらってなんか目から鱗体験やった。だから戯「曲」というのか。と考えると、世の中にちゃんと戯「曲」と呼べるようなものってそんなにないんではないかなあ。すごく勉強になった。はらいそで、『裸の村』への忌憚なき感想もお聞きできてありがたしやった。次に自分はどんな小説を書けるかやなあ。うーむ。わたし、高円寺は鬼門というか、ちょっとトラウマ的な思い出があるのもあって、あとバンドマンが溢れてるから苦手と思ってたけど、K井さんと歩くとそんなこともないなと思った。大将的な大衆酒場もあるいいけど、文化的なちっちゃい飲み屋がひっそりあるのも悪くない。

5.25木
昨日は円盤事務所のタコ部屋で作業して、手売り用物販を手持ちで持って帰るの結構重くて毎回大変やから宅急便してもらうことにして、本と、ついでに自分の荷物減らしたいためにあとクッションのために病院でもらいたての大量のお薬も入れたのやけど、すぐいるやつと、在庫が家にあるからすぐはいらんやつ、ちゃんと考えてお薬分けたはずやのに、全く反対を箱に詰めて、要するにいるやつを箱へ、いらんやつを鞄へ入れてしまってて、朝、飲むべき薬がない! と焦る。今日夕方に円盤を出荷されてうちに届くのは明日。でも、すっかりヤク中のわたしは1日飲まなかっただけで身体どうなるかわからんから、1日あけるのも怖い。ので、昼過ぎに円盤へ行き、まだ出荷される前の段ボールを再び開けて薬を取り出し即飲。ふー助かった。しばらく店主T口さんとおしゃべり。なんとありがたいことにタワレコ新宿店から大口の注文(当社比)が来たらしく、これまた追加で生産しまくらないとあかんのでは〜と思ったけど、今日はタコ部屋事情があって使えず。タワレコ新宿はきっと間違いなくわたしの恩人バイヤーI田さんが注文してくださったのでありましょう。しかし呪いのCD付きとはいえ、形態が完全に本やから、あのニューエイジコーナー並べるところあるのかなあ。そんなん思いながら、折角高円寺まで来たので、ネルケンで喫茶&読書。そしてK井さんにも連絡して、今夜もご一緒に飲むことに。わーい。今日はわたしの好きなねじり鉢巻きおじいちゃんのいる馬力で最初飲んで、そのあと元K組のおねえさんが最近はじめたらしいバーにお邪魔した。特権的肉体論というのはわたしは字面でしか知らず、どういう意味なのか全く不勉強でしらなかったのやけど、K井さんが嚙み砕いて教えてくださったところによると、どうやらわたしは、この特権的肉体を持ち得ているのかもしれない!と思った。要するに、こんなような(ちょっと規格外の)肉体に生まれて、でもそれを最大限生かした表現を、たぶん今わたしはやっているつもりで、まあこんな形だからこれしか出来ませんねんってのが大きいのやけど、どうやらそれで間違ってなかったらしい!(と、わたしは認識してしまったけど恐縮な、本当はもっと奥の深いことだと思います)あと、こういう我々のような表現者は常に弱者であらなければいけないとおっしゃってて、それもすごく同意! わたしはとても強者になれるよな器ではないのもあるけれど、弱者の目からでないと歌も書けないし文も書けないと常々思っている。2軒目に連れて行ってもらった、ことだまという元K組のおねえさんがやっているバーで、わたしはおねえさんの後押しにも助けられてかなりヒートアップし、恥ずかしいことをたくさん打ち明けてしまった気がする。夢を語る、いや、夢ってゆっても現実的な、宙に浮いてないはっきりした明るい未来(明るくなればいいなあという未来)をめっちゃ一生懸命語った。こういうのは柄に合わないしすごく苦手なのだけど、おねえさんの後押しもあり、今や!っとスイッチが入ってすごく頑張って決死の覚悟でたくさん喋った。でも、K井さんはかなり酔っぱらっていらしたので、覚えていらっしゃるかは微妙です。たのしく飲んで帰宅。二日連続高円寺、場所を選べばそんな嫌な街でもないのかもしれない。でも駅周辺に群がるバンドマンとかMげん堂系のくっさいヒッピー族が目に入ると急に萎える。

5.26金
朝からメルマガの原稿を書く。今回はちょっと陰鬱な内容なので書きながら疲れるのもあるけど、こうやって文にして吐き出すという行為によってわたしはなにかしら救われている気もする。書きだしたらそんな簡単に書き終わらず、結局原稿用紙15枚分くらいの長文になってしまった。雨が降ったりやんだりで、夕方家を出て鬼子母神さんへ。今日はI田さんのご両親とわたし、という不思議な3人で唐組を見るのであーる。まるで自分の両親であるかのように3人で並ぶ。ちなみにI田さんは不在ですので、本当になんか変。やけどもう何度もお会いしているのですごく自然とおしゃべり。さすがI田さんのご両親、開場前に神社の苔むした石に座り、缶ビールと銀杏で一杯やっていた。そしてお父様が「おしっこ屋さんにいってくる」とぽろっとこぼし、I田さんはいつもお便所のことを「おしっこ屋さん」と呼んでいて、わたしも最近はうつってるんやけど、元はお父様から受け継がれた言葉やったのか〜と感慨深く思った。整理番号早いのをゲッツ出来たので、3人そろって最前列を陣取る。最前列なのでありがたく唾液も汗も血のりもかぶる。わたしは今作もキチガイのように通っているので毎度の違いをみつけるのも楽しみのひとつなのやけど、赤松さんのおっぱいを出す角度は毎回違うなあとか、カブトムシ対決のあの変な頭につけるやつも赤と青に塗り替えられていた気がした(わたしの勘違いで前からそうやったのかも)あと和辻さんの見せ場のメールストロームの渦巻きの下りがすごく入ってきた。あと新人さんが増えてキャラが増えていた。昨日一昨日、K井さんが戯曲とは音楽って話をしてくださったのもあり、改めて、唐組はミュージカルじゃないのに、リズムや声の太さ細さ高さ低さ、全部が絶妙に絡み合うオーケストラのような感じなのかもって思った。終わって、いつも紅テントでばったり会うS川さんとおしゃべりして、そしたらGちゃんはS川さんの某出版社時代の後輩でいらっしゃったそうで、あら〜そこがそう繋がってたのか〜と驚いたりした。社務所飲みに結構長居させていただいてしまって、結局終電。

5.27土
昼からうちに榎本美月ちゃんが6月10日の練習に来てくれる。こんな足立区の辺境の地まで来ていただいてしまって申し訳ない。でもそういえばこの家になってから意外と来客が、ある! 先週も末井さんがはるばる来てくださったし、飯田さんもよく来てくれる。初台に住んでた時は都心やのに誰も来なかったのに。いや、たぶん自分でシャットダウンしてたのも大きいでしょう。とはいえ、今でも誰でもウェルカムな人間では決してないので、わたしはだいぶ大人になったとはいえど、ほんまに好きな相手やものにしか興味がないし嘘がつけない人間なので、家に来てもらう人はいちばん慎重に選んでおります。腹は黒いです。榎本さんと、6月10日の会議と練習。とはいえ、わたしがまた声ががすがすになってしまってて、殆ど歌えなかったのもあり、楽器や編曲や編成の相談をして、あとはほっこりしゃべっていただけという感じやった。榎本さんはわたしより9個年下でまだ去年大学を卒業したてで、卒論がなんと金原ひとみ論やったというので、それ、ぜひ読みたい! とお願いしたら持ってきてくれた! こないだちるこ家でちるこちゃんの卒論見してもらったなんかすごくて(旧仮名で恋愛論とかを書いててたまげた)、人の卒論ってなかなかお目に掛かれないからこそ、おもしろいよね。でも自分のは絶対誰にも読ませたくないけどね! ふたりとも、わたしも、文芸畑の学科やったから、卒論読めるのもあるんやろうなあ。これ、経済についてとか法律についてとか、医学とか生物学とかやったら1ミリもわからへんもんね。榎本さんのは金原ひとみの『マザーズ』の研究やったので、とても興味深く、しかしわたしあれ読んでから何年もたってるから、ちょうど色々思い出したりして、でも軽く読み終われる感じじゃなさそうやったから、お借りしてじっくり読ませてもらうことにした。あとは8時くらいまでだらだらおしゃべりしていた。

5.28日
メルマガの原稿をあさイチに編集M井さんに送信。それから6月10日の課題曲をエンドレスで聴くも、今現在声が出ないので練習はできず、どんどん不安が募る。治るよね。いや、そろそろ治ってくれないとこまる。来週は31日水曜に末井さんとのライブもあるし! 昼から渋谷でC子せんせいと待ち合わせして、一緒に代官山の花代さんちに行って、秘密のお芝居の会議。まだちゃんとは決まってないけど9月末くらいにC子せんせいと花代さんとでたぶんお芝居をします。花代さんはミュージシャンでもあるから、一緒に歌ったり踊ったりしようと計画している。花代さんちの小さなベランダは可愛い菜園になっていて、ミントを摘んでその場でミントティーをいれてくれておいしかった。そして最終的には花代国の妖精ごはんが出てきた。つぶつぶがたくさん入ってて、白玉とタピオカと、あとリンゴとあんこが入ってて、こういうのをささっと作ってくれるおねえさんに憧れる。わたしは料理を放棄してくらしておるので、だいたい冷蔵庫は漬物しかないので、来客が来てくださってもコーヒー淹れるくらいしか出来ない。オシャレな食べ物が全く作れない。でも周りに作ってくれるおねえさんがいるからいいや。花代さんにも帰りがけに可愛いワンピースをもらってしまった。わたしは今季、全く服を買っていませんが、今押し入れに入らないくらい洋服があります。それも全部可愛いやつ。低所得でも難なく暮らしていける秘訣のひとつはこれかもしれません。本当にみなさまのおかげで生きています。