8.1〜7日記

8.1月
朝、出勤途中、乗り換えの駅で電車を待ってたら、頭を綺麗なオールバックのお団子に結った少女たち&その母親の集団がぞろぞろとやってきて、彼女たちはみんなとっても大きなカバンをいくつも持っていて、きっと今日はバレエの発表会なんであろう。少女たちはみんなものすごく姿勢が良くて、お団子もいつものお稽古の数倍気合を入れて結っているから、オールバックに髪の毛引っ張られて顔がちょっと引き攣っているようにも見える。あの大きなバックの中にはきっとお衣装が入っているのであろう。夏休みといえば、バレエの発表会やよね、そうそう毎年この時期、突然に郷愁の風がわたしの中にぴゅーっと吹いた。ロビーで先生にお化粧してもらうときに目をつぶって先生に密着するとふわーっと匂ってくる香水の匂い、舞台袖のドライアイスの匂い、舞台監督のおじさん、音響のおじいさん、オープンリールの音楽のぱちぱちというノイズ、名物のブラボーおじさん、楽屋にひしめくおかんたちの群、そのヒエラルキー、あ〜いかんいかん、色々思い出してはいけないような思い出まで出てきてしまう。気を取り直して普通に出勤し、一日労働。それ以外特筆すべきことのない一日。でも朝の光景がずっと頭に焼き付いて、全然関係ない町のバレエ教室の発表会とか、部外者やけどふらっと見に行きたいなあとか急に思いついてちょっとネットで調べてみたけど、ああいう会は閉じられた世界やからか全然情報が転がっていなくて断念。

8.2火
労働先には、遅番のH田くんという23歳の若くて男前の青年がいるのやけど、彼はいつも出勤早々、うんこに行く。彼は14時に出勤してきてすぐさま便所へかけこみ、だいたいわたしはその時間帯、ランチで帰ってきた大量の食器を洗いまくっている皿洗いおばさんになっていて、うんこ帰りのすっきりした顔つきのハンサムな彼に、おはようさんっと流し越しに挨拶するのやけど、いつもだいたいそこで、「今日も立派な一本糞でましたか?もーH田便通カレンダーつくらなあかんわ〜」などとしょうもないことをゆってるのやけど、そんなうんこの話で小盛り上がりしていたら、ふっと5歳くらいの小さい男の子が、男子便から出てきてチャックをあげながら厨房の流しの方までとことこ歩いてきて、ニコニコとはにかみながら、わたしに会釈してくれたのである。かわいい。その男の子のはにかみ具合と、チャックをあげながらの会釈の仕方が、絶妙にかわいくって、皿洗いおばさんはとっても胸きゅんでござったよ。たぶん、少年は我らのうんこの話に入りたかったのであろう。わたしの日常的にくちばしってしまうこの手の会話は本当にお子様レベルなのやなあって実感した。労働後、下北でC子せんせいとK子さんとおちあって、女中たちの3人で観劇。女中たちのときの美術やったK藤Cさんからお誘いいただいて、チェーホフの「かもめ」を見た。日本人がまじめに外人になるのはやっぱり無理があるよねってしみじみ思っちゃった。わたしはそもそも観劇経験が本当に少なくて、実はこの手のちゃんとした古典的なザ・演劇を観る体験ってなかったので、あーこういう感じなのかーと思った。終わって外に出たら、制作さんにC子せんせいがこそこそ耳打ちされていて、ちょっと事情があってK藤Cさんは近くの飲み屋さんで待ってます、みたいなことで、3人でCさんの待つオサレな下北の小料理屋さんのようなお店へ。そこでさっきの本番中に裏で実はすごい大事件が起きていたらしく、その内容はこんなところには書けませんが、正直そっちを見たかったぜってわたしのような邪な人間は心底思ってしまうよな珍事件(いや、内部の方からしたら笑えない大事件でしょう)が起きていたらしく、その結果、もうCさんは金輪際あの劇場へは行かないし本番も見ない、みたいになっていて、4人で飲んでいる最中もすごい何度も電話で呼び出されていたっぽいけれど、Cさんは頑なに動かずそれもおもしろかった。(いえ、おもしろがってはいけません)事件とはいえ、お客さんには全くわからなかったしお芝居自体に響くようなことではなかったけど、演劇ってたいへんやな〜とまたしみじみ思った。

8.3水
窓の外から、葉っぱの匂いというか、緑色の匂い、葉っぱをちょん切った断面からプーンとするあの青臭さがすごい量匂ってきて、何事と思ったら向かいにある神社に植木屋さんが来てて、大大的に生け垣の散髪をしていた。炎天下、脚立に上り、高枝式切バサミでさくさくと緑を切っていくあの庭師って男の仕事って感じがしてかっこいいよね。わたしの実家にもこの時期、植木屋さんがお庭の散髪に来てて、でも我が家に来ていたのはわたしが小学生とかの当時ですでにおじいさんで、毎年おんなじおじいさんが来てるから、おおきなったな〜とか話しかけてくれるのやけど正直呂律があんまりまわってなくてなんてゆうてるのかあんまりわからんくていつも困っていた記憶。あのおじいさんもとっくにお亡くなりになっていることでしょう。洗濯干しながらそんな思い出にひたりお向かいの植木屋さんの仕事っぷりをしばらく眺めつつ、そういえば農薬ふりかけたりするから植木屋さん来てるときは洗濯干すの禁止っておばあちゃんがいつもゆってたなあ。あ〜夏。

8.4木
朝から虎の門の方の病院。血液検査&尿検査などいつものやつをして、診察室。名前呼ばれて診察室に入るも、しばらく10分くらい先生が来ない。これはまあこの病院ではよくあることで、おそらく先生は喫煙しに行っている、先生の一服待ちタイム。外に出るには一旦待合室の廊下を通らないとあかんのやけど、このわたしの主治医は頻繁に外に行って帰ってくる、という謎の行動をわたしもずいぶん前から目撃していて、診察室、帰ってきたての先生からはいつもプーンとヤニの香りがする。病院というところはもう敷地内徹底的に喫煙スペースが取り除かれていて、きっとまあまあ離れたところまで行かないと吸えない、これ先生も一緒っぽい。たいへんやね。先生の一服待ちタイム、いつも看護婦さんと薬剤師さんとわたし、三人で無言の気まずい時間が流れるのやけど、今日の看護婦さんは色々わたしの容態を先生ばりに、いや、もしかしたら先生以上に気にかけてくれて、わたしの腫れている右手や左足を見てくれ、そして一服から戻ってきた先生に容態を事細かに伝えてくれるという、すごくデキる看護婦さんやって感動。そして先生が検査の結果などと照らし合わせて、「うーん、あなたもう60回もこの注射打ってるけどよくならないから、注射変えよう!」と言いだし、なんと、1本1万2千円もする(3割負担でこの額)お注射に変更された。今まで1本5千円の注射を二週に一回打っていて、それでも注射だけで月1万の出費よ、きっつーて感じやったのやけど、これからは注射だけで2万4千円もかかるという計算。もちろんその他のお薬代や検査&診察で、おおよそ月々の医療費、今後は5万超えが予想される。あーもうあかん。経済破綻ですぜ。。。これ、家賃二軒分払ってるようなもんやで。しかもね、わたしの病気はこれ、今のところ治らないとされている、所謂難病で、ということはこの出費は一時的なものではなく終わらないのである。ガッデーム! と、経済的な心配から結構メンタルダメージ大きくって落ち込みながら帰路。でも! 今日はこれからI田さんちに行くんであーる! 来週のIKAZUGOKEワンマンの練習なのやけど、I田さんに会ったらとりあえず元気を取り戻した☆ 寝起きのI田さんがシャワータイム中、わたしは猫の金太を撫でながらI田さんの本棚を物色していたら、小悪魔アゲハやeggという所謂ギャル雑誌が出てきて、それも年季ものの、わたしたちがリアルタイム女子高生だった時期すなわち2000年とかのやつ! I田さんはその時期ギャルに憧れていたらしく、研究のために読んでいたらしい! わたしはギャル雑誌生まれてはじめて開いたのやけど、これが予想外におもしろくって、というかほんまにゲスさがすごくて、活字ページはほぼ下ネタで埋め尽くされてるし、なんやの、当時のギャルたちはあたかもファッション雑誌読んでますって顔してこんなもん堂々と読んでたんかよっと衝撃をうける。ノリがブブカと一緒! とか思ったらeggはミリオン出版やねんね。さすがやね! そんなんしながら、お風呂あがりのI田さんとしばらくギャル雑誌読んで盛り上がり、その後しっかりコントの練習もした。I田さんがこれまた超おもしろい台本を書いてくれたので、8月12日の黄金町試聴室ワンマンはこうご期待でっせ! 我らがIKAZUGOKE、また新たなニュー芸を色々やります! I田さんとコントの練習はいつもすごい楽しくって、きゃっきゃとはしゃいだ。小道具を探してて、I田さんがおもむろに開いた段ボール箱に思いっきり「思い出」ってマジックで書いてて、思い出箱なんて! 漫画の世界やで! と感動。でも思い出箱にはほんまに思い出が入ってて、高校時代の写真とか、小学校のときの文通していた手紙とか見せてくれた。友達の歴史を見れるって、うれしいものです。しかしわたしはこういう思い出箱に入れれる写真や手紙って全然取ってないなあ。昔の写真とか全然ないし、手紙もない。度重なる引っ越しで捨ててしまった。取っといたらよかったなあとかちょっと思う。コントの練習終わって、夜はI田さんちの近くのはじめていく飲み屋に行って、いい店やったけど冷房が寒すぎたので再びI田さんちに戻ってきてもうちょっとおしゃべりして、I田さんが誰かのおみやげでもらったお菓子を出してきてくれて、北海道のイモのお菓子で、ふとパッケージをみると、‘キタムラサキ’て書いてて、あれっわたしの名前書いてるやんって思ったら、イモの名前やった。キタムラサキってい名前のイモがあるらしい! すごく汚い濁った紫色のイモでした。

8.5金
普通に労働。後、渋谷に降り立って炎天下歩いてたら、ものすごくでっかいトランクを引きずりながら一生懸命歩いてらっしゃるギンティさんとばったり会う。今日は渋谷のLOFT9でスーサイド・ララバイのイベントなのです(わたしもそれを見に行くのですが)「このトランクには例の首吊り死体が入ってるんですよ〜(ニヤッ)」とギンティさん。わ〜今日はあの人形連れてきはったんや〜ワクワク! また後ほどってお別れして、わたしはまず某チープな喫茶店のようなファミレスのようなところで、E本さんと9月4日のライブの会議。5月の大バンドライブ以来にE本さんに会ったら、E本さん、なんとうなじにアリさんの刺青を入れていた! 落書きじゃなくてシールでもなくて本物の刺青! しかも3匹! 衝撃! でも、可愛い子ちゃんのうなじにアリさんが3匹這ってるってすごく絵になる。E本さんは筋金入りの虫愛好家で、最近入手した虫グッズや虫画像を見せてもらったりして、その後ふたりでLOFT9へ。すごい、たぶん250人ぐらいお客さんぎっしりである! スーサイド・ララバイのイベント内容は、こんなところには一切書けないデンジャラスな内容やった。めっちゃ笑ったけど、めっちゃ震えたし、実際気分悪くなって退席しちゃうお客さんもおられた。ギンティさんと力夫さん、おふたりが今ここにちゃんと帰ってきて生きておられることが奇跡やなあと、冗談やなく本気で思いました。ほんまに文字通り自殺行為をしてはるからね。身体張りすぎです。ここまでやる人おらんわってとこまでやってくれるから超おもしろいしドキドキできる。なんかぼんやりした抽象的な感想ばっかり書いてますが、それは具体的な内容は一切こんな場所には書けない危なさやからです。E本さんも隣で爆笑していて、趣味のあうバンドメンバーと出会えてうれしい限り。終わって物販に並ぶ長蛇の列をながめて、力夫さんギンティさんにご挨拶して、なんやかんやで終電寸前になっててばたばたと帰宅。

8.6土
暑いからお外に行く気もしないし、テレビはオリンピックでつまらないし、家にこもって宿題。でも『怪奇秘宝』がおもしろすぎてついつい宿題ほっぱなかして読んでしまう。スーサイド・ララバイのふたりの巻頭インタビューからアツいし、津山三十人殺し都井睦雄に共犯者がいたっという新説も面白くて超読み応え、平山夢明先生のインタビューも事故物件大島てるのインタビューも面白い、白石監督も寄稿してるし、ほんまにわたしの好物が超詰まってる雑誌! もったいないからちょびちょび大事に読もう。

怪奇秘宝 (洋泉社MOOK)

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8.7日
今日も宿題。ツイッターでもつぶやいてしまいましたが、北村さんは高額な医療費で経済が破綻寸前です。なのでお仕事依頼超超超おまちしております。文章書きますし、曲も書きます、歌います、喋ります、お仕事ください! 切実です。依頼はこちら warabisco15@yahoo.co.jp まで。よろしくおたのみいたします。