2.20〜26日記

2.20月
朝、特選小説の原稿を編集O高さんに送信。その後いつも通り労働。帰ってメールボックス開くと、「編集長とも相談しまして、たいへん申し訳ないのですが今回の原稿はうちではボツにさせてください」というメールが届いていた。ギャフン。いや、O高さんも編集長も、この原稿が掲載されることでもしかしたら降りかかるかもしれないリスクの数々とわたしの身辺を心配してくださっての判断で、要するにわたしは出版界の常識も鑑みず無邪気にプライバシーに踏み込み過ぎたものを書いて出してしまったということなので、特選さん側はなんにも悪くなく、わたしアホでしたすんませんって感じ。しかしボツになったので早急に別のネタで原稿書いて提出しないと、だって本来は20日が締め切りだったので、もう猶予はない。一刻も早く書かねばならん。うーん!

2.21火
朝から普通に労働。後、夜は年末に某撮影でお世話になったK籐監督とキャスティングのK賀さんと、打ち上げがてら飲みましょうと誘っていただき、根津にある素敵なかわいい小料理屋のような飲み屋さんへ。カウンターだけ8席くらいしかないこじんまりしたお店で、わたしと歳もそう変わらないであろう可愛らしいママがひとりで切り盛りしている可愛いお店で、でもごはんのメニューも豊富でおいしくて、そして名物店長(6歳)がカウンターの隅にどーんと座ってずっと妖怪ウォッチのDVDを見て爆笑しているというおうちっぽい素敵なお店。この名物店長は綺麗なおかっぱ頭の女の子で、将来の夢は魔女らしい。おっぱいに目玉のついた可愛いトレーナーを着て、トイレには折り紙で作ったと思しきステッキなども置いてある。可愛い。しかしちっちゃい頃から飲み屋の隅で育っているからか、ものすごく肝の座った女の子って感じが既に漲ってて、基本、わたしのようなはじめての客が来て「こんにちわ〜」とかゆっても、全然媚びてこない、我関せずといった顔つきで妖怪ウォッチを見ている。かっこいい。K籐監督とは撮影の打ち上げで大阪で飲んだけど、その時はK賀さんはいなかったので、この3人で飲むのははじめてで楽しかった。O保TさんとCM撮影したときのO保Tさんの偉人伝をお聞きしたり、S山さんというすごい天才とキチガイ紙一重な感じの照明スタッフさんの面白話をお聞きしたり、登場人物がみんな豪快豪傑で、面白くて元気な人がいっぱい活躍してたいい時代やったんやろうなあと遠い目で思った。ところでK籐監督はもうご還暦だそうでたまげた。まだ20代でヤンチャ盛りのBボーイに見えなくもない容姿なので信じられない。だけどその見た目のせいで舐められたりすることもあるそうで、いざ年齢を言うと突然、今まで偉そうにしてきとった相手が手のひら返したようにへこへこしだしたりするらしい。K籐監督も、K賀さんも、それからこのお店のママも、おいしいお店をたくさん知ってて、浅草といったらどこどこの〇〇とか、南千住といったら〇〇、とか共通言語がたくさんあられるようで、なんだか粋な大人達って感じがした。けど、ママはわたしもよくいく足立区のKたにという飲み屋を知ってて、あそこの100円サワー飲んだら翌日すごく目が腫れてたいへんだったの〜と可愛くおっしゃっていた。Kたにには中にどんなお酒が入ってるか未知の、Kたにサワーという100円のお酒があるのです。そんなのまで知ってるなんて、ママ、さすが若いのに谷根千でお店構えてるだけあられます。途中から、近所の老舗天ぷら屋の親父さんがひとりで飲みにきてはって、この親父がなんというか、いかにも江戸っ子の口が悪い頑固親父って感じで、とりあえず近所の飲食店をディスりまくり、そして女優さんとか俳優さんとか友達がたくさんいる自慢話も小出しにしてきて、挙句は鳩山邦夫のことも邦夫と呼び捨てで仲良しな感じのことを言い出して、友達の友達はアルカイダだ!とかまで威勢よく宣言しだして、もうめちゃくちゃなんやけど面白くって、K籐監督と爆笑してたら止まらなくなってきて、だってそんな息まいてるのに、基本呂律が回ってないから、A5和牛の話をしてるのにずっとエログロ和牛ってゆってて、K籐監督にエログロ和牛てどんなお肉ですかね? と小声で聞いたら、膣とかじゃない? とかゆうもんやからこれまたわたし笑いが止まらず、もーたくさん笑って楽しかった。そんな時も名物店長はカウンターの端でクールに妖怪ウォッチ鑑賞。そろそろ寝なさいとママに言われて、奥のお布団に寝に行くのやけど、その天ぷら屋の親父が「おやすみ〜いい夢見ろよ」というと、返す刀で「おまえもな!」と反応していて、6歳とは思えないその会話スキル、すげーっと感動した。あの子は大物になるでしょう。たくさん笑っておいしいものごちそうになって楽しかった。根津やとそう遠くないし、また来たい。

2.22水
朝、特選小説の書き直しになった連載原稿を仕上げて編集O高さんに送信。昼にI田さんと駅のホームで待ち合わせ。今日はDショックT下さんちに遊びに行くのである。池袋の百貨店で、あかちゃんよだれかけと哺乳瓶を買って、苺大福なんかもお土産で買って、西武線に乗ってDさんちへ。Dさんの生まれたても愛娘すしちゃん(仮名)が生後10日くらいの時にも一度遊びにお邪魔してたのやけど、この3週間くらいですくすく人間らしくなっていて、アンヨの筋肉がすごい発達してるようで運動してくてたまらないみたいで、「ぴよーん」という、アンヨのバネを利用した高い高いのような遊びをしてあげるとすごく楽しそうな良い表情をしてくれて、うれしいからわたしも調子乗って何度も「ぴよーん」してたら、筋肉ゼロのわたしの腕がすぐヘタってしまった。Dさんはずっと赤ちゃん抱っこしてないとだし、ぴよーんもしなきゃだし、あと本業漫画家さんやから、育児しつつも漫画も描かなきゃで手が腱鞘炎のようになっておられた。おかあさんって大変や。2時間ちょっとぐらい、Dさんちで遊んで、その後I田さんとちょっと某所へ明後日の銀座でのライブで使うスピーカーをお借りしに行って、帰りにラーメンを食べたり八百屋さんでおいしそうな漬物を買ったりして帰宅。ポストをあけるとごろんと小包が2つ転げ落ちて、連載させていただいてる『特選小説』と『CULTURE Bros』の送本が届いていた。『特選小説』は今号は「潜入取材!北千住のラブホ寿司」、『CULTURE Bros』は「極私的おっさん見聞録第三回 働くおっさんは世の宝」というエッセイです。それぞれ読んでね☆

2.23木
朝から病院。電車で寝過ごしてしまって引き返したけど予約時間には遅刻。でもどうせめっちゃんこ待たされる病院なのでたいして問題はなかった。採血がいつも以上に血の出が悪くって、ベテラン看護婦さん3人がかかりで羽交い絞めの刑にひさしぶりになった。でもわたしの好きな看護婦さんがメインやったので悪い気はしなかった。眠り薬も処方されてるのに飲んでも最近全然眠れなくて、という旨を相談すると、次回から精神科の診察も入ってくれと言われてしまった。診察も全部おわり、おなかの高級お注射もして、処方箋薬局で大量のお薬もゲッツして、前回病院帰りに言った近くの喫茶ヘッケルンのコーヒーとプリンでも食べて帰ろうと思ったけど、お昼時でサラリーマンが湧いてて満席。その近所の喫茶フーガも満席。しゃあないから上島珈琲に入って、パソコン持ってきてたのでちょっと作業。明日の銀座でI田さんとやる出し物の枕部分の台本を書いた。

2.24金
昼にI田さんがやってきて、本日の出し物の練習。今日はいつものライブと違って、わたしたちを見ようと思ってきているお客さんの前ではなく、銀座のラウンジに酔っ払いにきているお客さん相手に余興をするというミッション。I田さんはここでホステスさんとしても働いているのやけど、わたしはそもそも銀座のラウンジというものを覗いたこともないので、どんなところなのやろうとドキドキ。なんてたって、座るだけで3万、ボトル入れたら普通に5万とかする高級なお店。ご立派な企業のお偉方とか、さぞかしお稼ぎでらっしゃる方々が楽しく酔っぱらってらっしゃる場で、コントやったり歌ったりというのは、結構精神的にハードミッション。とはいえ、わたしはホステスさんじゃなく、完全に芸人枠という感じで、ホステス的な仕事は全然しなくてよかったので(I田さんの仕事ぶりをみていたけど、とてもわたしなんかじゃ勤まりそうもない大変なお仕事やった)リハや準備を終えたら、唯一我らを見るために来てくださったKさんA子さん夫妻と同伴させていただくため、銀座ライオンの7丁目店へ。銀座ライオンって初めて入ったけど、そこそこ財力のある大人が集うビアホールて感じで(普段大衆酒場とかしか行かないので)、でも個室っぽいところがあって、Kさんがそういう席をとってくださってたので、ほんとに同伴みたいな体験をさせていただいた。一張羅の黒ラメドレス(「わたしのライオン」PVでも着てるやつ)で行ったら、スパンコールが鱗みたいでまるで黒鯛!と言われました。プレッチェルやソーセージをいただいて、ライオンを出ていざ戦場へ! ひとりだとほんとに心細くて逃げそうやったけど、KさんA子さんが一緒に行ってくれたので本当にありがたかった。ラウンジに戻るとすごく大繁盛していて、I田さんはすごくてきぱきと立ち働いていた。相方が一生懸命働いている光景にぐっときた。しばらくしたらママからお声がかかり「さて出し物の時間でーす」ということで、ぎゅうぎゅうのお客さんたちがどんちゃん飲んで喋っているところでコントスタート。当たり前やけど、お客さんたちはコントを見に来た人たちではないから、コント中も自由自在に大き目のトーンでがんがん喋る。我らのお話はほとんど聞いていない。これはなかなかきつい環境。わたしの密やかな怒りスイッチがぱちんと入り、顔には出しませんが、くそ!聴きやがれ〜!的な気持ちで歌ったった。ら、あれがよかったとあとあとI田さんに褒めてもらえてよかった。あんまり聞いてないんかとおもってたけど、意外とウケてくださってたようで助かった。たった20分やったけど、なんかすごく勉強になった。バタバタと片づけて、KさんA子さんがわたしをアフターのように連れ出してくださったので、良いタイミングで帰らせていただけて助かった。I田さんはその後、2時3時までホステス仕事をしていたらしい。えらすぎる。本当に頭が上がらない。夜の世界を覗き見れることなんてそうないし、ホステスさんとか水商売って、なんかちょっと下の仕事と誤解されがちやけど、何を何を! めっちゃめちゃ壮絶なお仕事なんやと目の当たりにした思い。ママも、ホステスさんも、ボーイさんも、夜の世界で働く人々のプロ級の気遣い、爪の垢を煎じて飲んだ方がいい人いっぱいおるわ〜と思った。

2.25土
昼間は家でメルマガの原稿を書いて、夜はI田さんと昨日の打ち上げという名目で飲んだ。夜やしお互いすっぴんでわたしは半分パジャマ状態で、養老乃瀧で飲んだ。I田さんはすっぴんで眉毛がないと、永田洋子に似てるでしょ!と自分でゆっていたけどほんとに似ていた。昨日はI田さんは出し物のあとも通常のホステス業務を結局朝方までしてたそうなので、本当におつかれさま!という気持ち。いや〜I田さんが声かけてくれなかったらわたしなんかは一生足を踏み入れることはないであろう、銀座の夜を見せてくれて本当に勉強になったよありがとう〜。普段の自分のペースで当たり前にやらしてもらえてるライブというのはいかに甘えた環境なのかということがよーくわかった! でも、だからこそ普段のあの実入りで、そしてだからこそ今回のメイクマネーなわけだね、なんか昨日のは、仕事したーという感じがとてもした。やってる内容はコントだったり紙芝居だったり歌やけど、仕事って感じを噛みしめた。安心安全な場所でやりたいことをやれるライブというのももちろんありがたいし、でもそれはそれなりの実入りで当然で、というのとは正反対の、時にはこういう完全に敵しかおらんような状況で揉まれるのもとても大切なことやと思ったYO〜と色々昨夜の出来事を振り返りつつ、あとは普通にたのしくおしゃべりした。養老乃瀧閉店時間で追い出され、白木屋に移動して朝まで飲んだ。I田さんはひさしぶりに呂律がまわらないくらい酔っぱらっていてたのしかった。共に働いた相手と、ちゃんとメイクマネーしたお金で飲む、というのは本当に気持ちよくて楽しいなあと実感。しかし白木屋で会計して、思ってたより高いなあと思って明細みたら、頼んでもないハイボールや抹茶ハイなどが1300円分ぐらい勝手につけられていて、これはぼったくりというやつなのか?! I田さんが永田洋子の顔で呂律の回らない口調でやさしく凄んだら、すぐに店員謝ってお金返してくれてついでにウコンまでくれた。ゆうてみるもんや。

2.26日
朝帰りしたけどすでに半分パジャマやし、すっぴんやし楽ちん。歯磨きして薬飲んですぐ布団入ったら意外とすぐ寝付いて、でも1時間で目覚めた。しょうがないので洗濯など家事をして、メルマガの原稿の推敲などして、こたつでうとうとしながら読書。津山三十人殺し研究のパイオニアである石川清さんの新刊が出ていて、それがまさかの引きこもり家庭ドキュメントで、これはもしかしたら個人的にすごく役に立つ本かもって思いながら3分の1ぐらい読んだ。

ドキュメント・長期ひきこもりの現場から

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