25000円の2時間半

わたくしめ、平素は世間的に比較的低層階級に暮らしておりますよって、たぶん具体的に金額を出すとよくそんなんで生きていけるな!てみなさんびっくりしはるぐらいの生活費で問題なく(いや問題なくもない……)生きております、これ如何に?とゆうのは恐らくまず美容にかける費用が限りなくゼロやしお洋服も自分で買うもんはだいたい3ケタの安もんでそれすら最近もう買うてへん、そんなわたしを不憫におもった数名の血の繋がらないおねえさんが何故だか唐突に定期的にお古をゆずってくれたりするのでそうゆうお洋服で暮らしている、髪の毛もお風呂で切るからタダやし、化粧品ほぼ無印&ちふれ!とゆう安上がりすぎる女な所以。別にこれがかなしいとか自分でおもってへんところがきっとそもそもあかんねやろうけどケチケチしてるつもりもなくて、だってわたしみたいなんが高いもんで着飾ってもちんちくりん不細工は変わらんでしょ、己がそんなお金かけるほど価値のある女体とおもわれへん、とゆう言い訳を貫いている。そんなこんなでこの体たらく。そんなわたしが、世間一般の女子カーストピラミッドでゆうたら4段階は上であろう階級の人々が集う場所に紛れ込んできたので、その思い出をちょっくら書きます。

映画みにいくとだいたい1800円レディースデーやと1000円、ライブ観に行ってもだいたい1500円〜2500円とかそれぐらいやし、ミュージカルとか舞台とか生もんで大所帯は高いけどそれでもせいぜい4ケタやんね。これら全般まあ正味2時間半ぐらい、そう2時間半てゆう時間に支払う金額ってまあそんなもんやとおもう、5ケタの壁はなかなか超えるまい。それが、ふわっと軽々と飛び越えてしまいよる世界があるんです。そう、バ・レ・エ!このたび、わたしは25000円もする2時間半を体験いたしました。(あ、もちろん自分では支払っていません、ごめんなさい)25000円やで!25000円!2時間半に25000円!時間とお金の掛け率でこの規模、すみません低層階級のわたしのげすい脳みそにパッと浮かんでしまったのは風俗の料金です。が、女買う以外でこの規模、なかなかないとおもう!って前置きのはずがこんなに長々とお金のはなしばっかりしてしまっていてあれれ〜なのやけど、わたしはチケット代25000円もするバレエを観に行ったのです。

東京文化会館とゆう由緒正しき歴史ある立派な劇場にて(椅子のボロさは新宿武蔵野館レベルやけどな)、パリオペラ座バレエ団とゆう超超かっこいいバレエ団の日本初演の作品『天井桟敷の人々』を観に行ったのです。とりあえず、劇場入るや否や、わたしは間違えた、完全に服装を間違えた、労働帰りに貧相なユニクロの子供服(でもベロア調のワンピースでかわいいねんで)なんかで来てしまった自分……。周囲はおめかし全開の着飾ったおばさまや、がんばってる壮年カップル、あとなんかしらの業界人ぽい煌びやかなグラサン族。わたしみたいなんがこんな前の席ですみません感全開で着席、高層階級に挟まれて観賞しました。作品自体は、もうほんまのほんまに最高級の、極上の2時間半のエンターテインメント!いや、バレエは芸術やからエンタメとかゆうたら高層階級の人らに怒られるかな。もちろん最強規模の総合芸術やった!オーケストラの生演奏から、普通のバレエとは一線を駕す演出の数々。オーケストラって普通はオーケストラピットの中に大人しくおさまって演奏してるもんやけど、パリオペは演奏者がんがんステージに上げて踊り子さんと同じ扱いするからね!おまけに舞台装置を動かす黒子ももしかしたら踊り子さんがやってて、スタッフもキャストもない!とゆうことの決定打はヒロイン役のエトワール、アニエス・ルテステュが衣装デザインも手がけている!いや、小劇団とかやったら役者が色々を兼任ってまああるあるやとおもうねんけどね、パリオペラ座てゆうたら、たぶん世界で3本の指にはいる超規模のでかいハイレベルな一流バレエ団やからね。そんな軍団が、結構手作り感あふれる感じで、しかし端々まで抜かりなく緻密に計算された美しき芸術を作り上げている奇跡!この作品だけの特別の演出なのかもしれんけど、一幕と二幕のあいだの休憩中、踊り子さんらが客席降りてうろうろしてんねん!で、なんかスタッフかわからんけどシュッとした外人がお客さんにしゃべりかけたりしてるわーておもってたら、最後カーテンコールの時出てきて、あれ振付監督のジョゼ・マルティネスやんけ!この敷居のなさってなんやろう!会いにいけるアイドルやないけど、触れる距離まで降りてくるバレリーナ!だってだって、日本でバレリーナゆうたら、バレエダンサーゆうたら、相当お高くとまってますよ!熊川なにがしとか!草刈なにがしとか!そうやねんな〜そうゆうところやねんな〜せやから日本ではいつまでもバレエは金持ち文化やねん!おもんないね!だって日本では25000円もするこのパリオペだって、本場フランスパリでは500円立ち見席とかあって、まじで庶民も普通に観れるんやて。もう根本的に違うんよね。は〜って舞台の素晴らしさと日本のちっささにため息つきながら、女子便の行列にならんでたら、おめかしマダムたちがザーマス口調でがーがー騒いでいて、東京のちょっと上流階級のおばはんはまじでザーマスザーマスゆうんやなーって目の当たりしたらプって吹きました。上品とはおもえんね。あれやったら大阪のデンガナマンガナおばはんと変わらん!

と、結局東京のおばはんディスに着地してしまった感が否めませんが、パリオペの『天井桟敷』はほんっまに素晴らしく大感動して、すっかり心豊かにふくよかに浮ついたわたしは翌日、柄にもないお菓子作りなんかに手を染めてライブに持参し、みんなにまずいケーキを食わせて気を遣わせるとゆう大失態をこきました。みなさんごめんなさいでした。