11.20〜26日記

11.20月
朝から普通に労働。先週我が職場をにぎわしてくれた例のカップルの女子の方が、「仲直りにディズニーランド連れてってもらったんです〜」とか言ってノロけられて拍子抜け。まあお好きに幸せになってくれるのはいいんですけど、まわりを巻きこんでいるということを忘れないでいただきたい。まあ、恋の病を患ってしまってるから仕方がない。プライベーツを職場に持ち込むのは自由ですけど、他人に迷惑がかかってるということを自覚していただきたいですわ〜、しかもディズニーランドという選択が、なんちゅうか、女子やな〜と思って、みんな夢の国に行きたいんだね。おぞましや〜。

11.21火
先日出会った運命の歯医者さんが送ってくださった紹介状を握りしめて、東京医科歯科大学病院へ。御茶ノ水からわりとすぐにそれっぽい建物はわかったのだけど、どれが一般外来用の建物かわからず30分ぐらい回りをうろちょろ不審者のごとく歩き回ってようやく入口を発見。大学病院=今まではKO大学病院しか知らなかったので、どの科も激混みでめちゃくちゃ待たされる覚悟でいたのやけど、歯医者専門の大学病院やからか、そんなえげつない混雑ぶりは見られず、わりとするっと担当医が決まった。運命の歯医者さまが紹介状にわたしがライブうんぬんで抜歯出来る日が限られてることなども書いてくださったようで、来週28日に抜歯と決まった。今日はレントゲン撮ってあとは問診だけですぐ終了。お会計2000円ちょっと。思ってたより安くてホッ。まだおひるで、そこから池袋にでて、夜に劇を見る予定があるので、それまで時間をつぶすべく、本やらパソコンを持ってきていた。西口のカフェド巴里という喫茶店がいわゆる昔かたぎな古臭い喫茶店ぽかったので入店。ここは2時までモーニングをやっている! すばらしい! 豪華なモーニングを食べながら、小林勇貴監督の「実録・不良映画術」を読む読む読む。この人映画もおもしろいけど文章もおもしろい。というか27歳にしてすでに半生がおもしろい。この人の精神で生きてればほんまに怖いもんなしやろうなあと思う。デザイン会社に勤めながら、土日に毎週末地元富士宮に帰って不良と映画を撮っていたそのポテンシャルもすごいし、この人映画学校とかは出てない、どこぞの大学の映研出身でもない。(キヨシ(黒沢清)もいるの?ヒロシ(高橋洋)もいるの?とお金貯めて映画美学校に入るもすぐにキヨシもヒロシもほぼいないということを知って入学後即退学している)デザイン会社でばりばり働きながらもこっそりパソコンのはしっこにテキストファイル開いて台本書いたりしていたそうで、それ気合の入り方が違うね! そして土日は富士宮の不良たちとゲリラでカーチェイスとかを撮ったりしていたわけで、もちろん脚本・撮影・録音・照明など出来ることは全部やってはって、本当にすごい。不良の手名付け方もすごいうまい。決して小林監督自身は族上がりとかではないらしい。心ここにあらずデザイン会社で仕事していて、ある日上司に「お前に心はあるのか?」と聞かれ、「少なくともここにはありません」といったらしい。これも何気に名言やし、最後の最後に出てくる、おかあさんとのエピソードで「怖かったことは人に話すと怖さが薄らぐ」というのが、どき!やった。というのもわたしはだいたいこのスタンスで、生きている。身の上に起きた悲惨はだいたい人に話したり文や歌にすることによって、怖さをしのいでいるんである! うわーその通りやわって思った。

実録・不良映画術 (映画秘宝セレクション)

実録・不良映画術 (映画秘宝セレクション)

夜は自由学園明日館へビニヰルテアタアのお芝居『楽屋』を見に行った。自由学園明日館、わたし上京していちばん最初はここのすぐ裏のボロアパートに3か月だけ住んでて、そこは木の引き戸の共同玄関をがらがらとあけて、共同ポストから自分あてのを取って部屋に入る旧式システムで、当然のようにネズミちゃんと同居だったので色んなものを齧られた。ネズミちゃんの糞もよく見かけた。もう取り壊されてるかな〜と見に行ったら、まだあった! 住んでる人いるのは不明やったけど。お芝居は、最初に松井須磨子のことを演出の方が朗読してらして、それを聞いた上でこのお芝居を観たら、色々感慨深かった。お芝居自体は前回、ルーサイトギャラリーで見たことあって、ひとりだけ女優さんが変わってたんやけど、わたし的には前回の女優さんの方がいじわるそうで喧嘩の部分とかよかったかなあ。そして美仁音ちゃん目つきがすごかった。やっぱり唐十郎の娘なのか、この人は目がいってる! 良い意味で! 唐組『動物園が消える日』でのミニーちゃんの役でも目に狂気を感じる芝居やったけれど。素晴らしい女優さんだと思った。たまたま飯田さんのご両親と席が前後だったので、帰りに養老乃瀧の本店でごはんを食べておしゃべり。楽しかった。飯田さんのご両親には、もはや飯田さん抜きでもごはんごちそうになったりお世話になっている。おふたりとも楽しいし明るい、良い夫婦やなあと思う。

11.22水
おひるに飯田さんが一瞬我が家にやってきて、受け渡しをし、その後わたしは渋谷に出る。来年公開の某映画の試写状と送ってくださっていたので、はりきって出かけたのやが、何故か会場をおもくそ間違えており、京橋に行かないとあかんのに渋谷の映画美学校試写室に来てしまう。まったく関係ない映画の試写をやっており、慌てて外に飛び出す。恥ずかしい。そしてどんくさい。なんで縁も所縁もない映画美学校やって勝手に決めつけていたのかわたしは! せっかく渋谷まで出たし、なんか映画やってないかな〜今日は水曜日やし、とアイホンで調べると、時間的にもぴったりホドロフスキーの新作「エンドレス・ポエトリー」がアップリンクでやっており、行ってみた。なんやかやでホドロフスキーはわたし全部見てるけど、年々、アート寄りになってきちゃってて、「ホーリーマウンテン」とか「サンタサングレ」の頃がいちばん好きやったな〜とか思う。とちゅうちょっと寝てしまった。しかし、親知らずが痛い。めちゃくちゃ痛い。足立区じゅうを自転車で駆け回ってロキソニンを購入。しかしあれ、しかしテレビCMとかでどこでも買える風に宣伝されてるけど実際は「薬剤師が不在なのでお売りできません」て言われまくり、5軒目でようやく入手。もう! 薬剤師、ちゃんと出勤しといて! て感じ。途中で雨も降ってくるし、歯は痛いし。そしていざ購入して飲んで、でも全然痛みは引かず。そしてねむれず。左下の親知らずが痛いのやけど、もう耳の奥も頭も、左頭蓋骨全部が痛い。だから布団に横になれない。どの態勢も痛い。なので座椅子に座ったままちょっとだけ寝た。

11.23木
朝イチから親知らず痛すぎ。泣きたい。でも今日は朝から労働。祝日で混むから休むとかあり得ない。ちゃんと夕方まで働き、夜はC子せんせい主宰SWANNYのお芝居を渋谷に見に行く。でも仕事おわり、ほんまに親知らず痛すぎでロキソニンも効いてる気がしなくて、例の運命の歯医者さん(先々週の日記参照)に相談メール。そしたら「今晩でも来てください」とゆってくださる。しかしお芝居は観なきゃなので、だいぶ遅くなりますけど、と伝えると「慌てないでいいので、何時でもいいので、待っています」とゆってくださる。神様か! 歯は痛いけどお芝居「小鳥女房」は素晴らしかった。籠の鳥である主婦が、籠を飛び出す話なのだけど、高校生テロリストが主婦層を手玉に取って主人公主婦の家をアジト化し、テロを実施する、という現代日本社会への風刺も入ってて、すごく熱いお芝居だった。小林麻子さんのコメディエンヌぶりが素晴らしかった。ところどころギャグも効いてて笑えるし、SWANNYはファスビンダーのイメージが強いからアカデミックに思われがちやけど、C子先生オリジナル脚本のお芝居はほんとおもしろくて、わたしは断然オリジナル脚本のおはなしが好き。この感動をC子せんせいに直接伝えたかったんだけど、なんせ歯が痛すぎたので、宮台真治とのトークショーを中座して、ロビーで麻子さんにお菓子を授け、急いで歯医者さんへ。ついたら22時をまわっていて、祝日のこんな時間にわたしのためだけに開けてくれるなんてそれだけで感謝感激。だけどまじで痛すぎの旨を伝える。ロキソニン以前にわたしは持病で身体全体の痛みを抑えるお薬を大量に服薬しているので、それでも痛いってだいぶ重症な模様。そうなんです、まじでもう痛すぎなんです〜と泣きつく。でも抜歯は来週大学病院で予約してるし、今日無理に抜くと明後日ライブに支障が出ることもこの先生は把握してくださってて、とりあえず今出来ることは痛みの原因である歯の中のウイルスを取り除くこと、とのことで、麻酔を2本ほどぶち込んでもらい、そして歯の中を針でつっつきまくってウイルスを出すらしい。「麻酔が効くまで、好きに本読んで過ごしていいですよ」といってくださり、待合室の本棚をあさる。小田嶋隆のコラム本をはじめて手に取って読んでみたけど、結構おもしろい。おもしろくなってきたところで再び診察室に呼ばれ、治療の続き。なんやかやで23時半くらいまでかかって治療してくださった。すると痛みが全くなくなった! ははあああ神様〜という感じ。そしてこの先生、色んな分野に詳しくて(だってわたしなんかのCDや本を飾ってくださってるぐらいやから)映画「全員死刑」も見てらして(共同脚本の継田さんやスタッフデモ田中さんなんかもお知り合いらしい)都築響一さんのオリエンタル工業ツアーにも参加してらして、そんな歯医者さんおるのか!? 先生何者なんですかーと言っていると帰りがけに昔の雑誌を渡してくださった。遊歩人という雑誌で、浅川マキについて先生ご自身コラムを書いてらっしゃた。なんて文化的な歯医者様。理系の方なのに珍しすぎる。麻酔で呂律が回らない口でちょっとお話し、祝日深夜にこんなに治療していただいて、こんな料金!?という衝撃の価格を提示されたので、ほんとにすみませんって気持ちでお支払い。いや、ほんとに神様はおった! って気持ち。久しぶりに痛くない夜。すっと眠れた。

11.24金
目覚めて麻酔は切れている、でも歯は痛くない! すごいことや! と感激。ここ数日歯が痛いから部屋も散らかしぱなしやったのをなんとか片づけて、おひるから飯田さんがやってくる。明日の月亭可朝師匠の余興の練習。今回は時間が15分ときっかり決まってて、なのでその尺にしっかりハマるように部分的に変えたり練ったりして練習し、あとは近況報告なんかをして過ごす。夜は一人で下北へ、劇団乾電池のアトリエ公演をはじめて見に行った。ここの役者さんの竹内さんという方と、かくかくしかじかでお知りあいで、一度見て見たかったし(2月の
唐組×乾電池は絶対行くけど)竹内さんのお芝居している姿を拝見したことがなかったので、色々びっくりした。ふだんはほわーとした優しいおねえさんだけど、スイッチが入るとすごいテンションが変わるというか、別人格が憑依したように迫力があってかっこよかった。そして岸田國士の本のお芝居だったんやけど、古い言葉なのにちゃんとついていけるわかりやすく伝えることができる役者さんで、すごーと思った。色々勉強になった。明日は早起きなので終わって直帰。準備して寝る。

11.25土
朝9時台に電車に乗って、四谷アウトブレイクへ。今日は月亭可朝師匠レコ発で余興をさせていただく日。10時45分入り。軽くリハをさしてもらい、楽屋で可朝師匠とも少しお話させていただいた。可朝師匠は目がすごくキラキラで、でも鋭くて、色々見透かされている気がして、どきっとした。色気と品がある、素敵なおじいさん(もうすぐ80歳だそうです)でうっかりときめいてしまうところやった。お客さん、真昼間から大盛況。わたしたちの余興はさておき、色々簡潔でいいイベントやった。でも、可朝師匠のおはなしはもっと長く聞いていたかった気もした。2時に撤収。可朝師匠をタクシーへお送りして、主催の豊田道倫さんたちと近所の安中華屋さんで乾杯。珍しく豊田さんもお酒を飲んでいらした。ナックルズの元編集長中山さんともおはなしさせていただけて感激やった。4時半くらいにお開きに。朝に家を出て夕方に帰宅、健全な時間帯のライブもいいものやなあと思った。わたしは楽しかったけど妙に疲れていたのか、帰ってお薬も飲まず1時間ほど眠ってしまった。

11.26日
今日は千葉の某所で、IKAZUGOKEでライブ?というか営業?というか接待?のお仕事。いや、お仕事にすらなっていない、賃金は発生しない感じで、その代わりに物販を売ってくれ、という感じで、普段ならそういうのはお断りするのだけれど、ちょっと色々事情があってお受けしたイベントの日。1時に千葉県某所、ということで午前中には足立区を出て、東西線で乗り換えて浦安も超えたらへんにあるキャバクラを貸し切って、とあるご家族が内輪のパーティをやっており、そこで一曲歌ってほしいとのオッファー。我ら以外の方々は所謂オヤジバンド、大学の軽音サークルとかがコピーとかやるやないですか、あれの延長でオヤジになった軽音サークルがコピー大会のようなことをやっていて、リハから、おお…これはきつい一日になりそうだ…と予想。したら予想以上に色々きっつい日になってしまった。ひさしぶりに怒りの限界を超えて、自分は改めて、人間も嫌いだし、こういった音楽も嫌いだし、内輪パーティもファックだし、だってなんか気づいたら知らん青年が歌でサプライズプロポーズとかはじめて、しかもそのコーナーがクッソ長くて、全く知らん青年のプロポーズイベントをなんで祝わなあかんねんって感じでわたしは終始激冷めしていて、でも途中からこんな寒いプロポーズをもしも自分がされてしまったら…みたいに置き換えて考えだしたら面白くなってきて「うっわ、まじかよこの男、こんな知らん人いっぱいおる前でどえらいことやってくれたもんや、まさかここまで寒い男やったとは、えっでもこの流れ、プロポーズ断れないじゃんか、ってことはわたし、こんな痛い男と結婚しないといけないわけ? なんかしらんギャラリーの酔っ払いたちからキスコールが起きてるんですけど、もうこんなの公開処刑じゃんか〜死にたい、明日にでも死のう」みたいな心境にわたしやったらなるなあ〜かわいそうな女の子…と勝手に嫌味な楽しみ方をしていた。(注:←はあくまでわたしの勝手な想像であり、実際は女の子はうれしそうにノリノリでキスまでしてプロポーズ成功!みたいになっていました)そんな全くしらん人のサプライズプロポーズコーナーがこれまた超長くて、イベントは1時間押しとかで、もう早く帰りたくてたまらないのだけども、1枚でもアルバムを買ってもらわないわけには、わたしたちノーギャラですし、ということで物販の前に座っていたら、隣にこれまたしらん酔っ払いお兄さん3人組が座って、そのうちの一人はわたしを気に入ってくれたのかなんなのかわからんけど、なんか気づいたら手とか身体を撫で繰り回されていて、まあ別に触られること自体はどうでもええのだけども、お兄さんが期待しているであろう反応がわたしは本当に出来なくて、全く素。て感じになってしまって、どうしていいかわからん、えっこれはわたしはこの知らない人たちを接待しないといけないわけ? そういう要員なわけ? ホステスしろってことか? いや、でも1円も、交通費すらも貰ってないのになんでそんなことしないといけないのや? とずっと自問自答、とにかくイベント自体がはやく終わってくれることを祈る! て感じの一日だった。いや〜きっつかった〜。ホステスさんってたいへんなお仕事ですね。わたしは絶対に出来ない。いや、まだ仕事と割り切ればいいのかもしれないけれども、一切お給料も貰っていない、ただ、女やというだけで、なんか知らんおっさんが楽しく酔っぱらえる空気にしないとあかん感じが、これは一体なんなんだ! て感じで、ひさしぶりにわたしの色んな意味での臨界点を超えて、もう無理やーとなり、しかし逃げ場所もない、楽屋なんておやじバンドがサンタのコスプレしたりするのに使ってるから居場所ないし、席につくと自然的にホステスを無償でしなければいけない、やってられなすぎて途中で逃げ出して階段に座っていた。そして色々考えていた。わたしはこんなに不愉快でたまらん気持ちだけれど、たぶんここにいる人たち別に誰も悪くなくて、普段はキャバクラな場所だし、だからおねえちゃんという生き物は全員ホステスみたいなもんやと思ってるお客さんも交じっているのも仕方がない、そして内輪のおやじバンドたちはそれぞれに今日がきっと1年の晴れ舞台的な感じで楽し気に演奏しているし、客層は金持ちが多いからきっとみんなCD買ってくれるだろうからって感じで良かれと思ってわたしたちを呼んでくれたわけなのだろうけれども、物販スペースは端の端の端で、実際はCDなんて売れるわけなくて、みんな酒代には惜しまずお金払うけれど、物販なんか買わない人種の方々。それぞれは善意で動いてる人々なのになんでわたしはこんなに不愉快な気持ちで怒ってるのか! 怒りの向け場所がないこともつらすぎる! でも、ひさしくここまで最低な気持ちになったことはなかったので、そういう意味では勉強になった。忍耐という勉強に。とにかく疲れた。もう金輪際このような場に出るのはやめようと心の底から思った。長い長い一日だった。