11.13〜19日記

11.13月
朝から普通に労働。朝はすっかり極寒で制服(年中半袖のワンピース)の中にヒートテックの長袖を着てそれをぎゅーって二の腕まで巻き上げて半袖の中に隠して労働。

11.14火
朝から普通に労働。労働先で事件あり。といっても内紛、というか大きくゆっちゃえば痴話喧嘩も入ってる公私混同に巻き込まれている形なのであるのだが、どうしてこうも男っちゅうのは自分の立場を守ることだけに必死で、いざとなっても彼女を守らない、守れないものなのかなあ。いや、男と総称するのはいけません。とある一人なのやが、ここまで周りを巻き込んで、そして彼女は泣いてるというのにも関わらず、知らん顔というか邪魔者扱いをして、うちの階に上げてきよる。(細かいことですがわたしは午前中は2階勤務で午後から夕方は3階勤務)こっちは内情わからんけどとりあえず仕事中に泣いてる23歳のおなごが上がってきたので、忙しく働きながらも話を聞いてあげているにどう考えても男がおかしい! ちなみにこの男は前科があって、2年ほど前にも当時19歳のおなごをおなじような目に遭わせていた38歳の男なのであるが、なぜこんな女の腐ったようなケツの穴ちっさ男がこうやって定期的にモテるのか、わたしには皆目わからない。なんなら、今回の23歳の子にはわたしを含め何人かが、あの男は前科があって、決してあなたが思っているようなあなたを守ってくれるような男らしい男ではないで、それでもいいのやな、と何度か釘を刺していた。だから、ホレ見たことか! て感じなんやけど、おなごはそれでも好きなんだって、この糞男を。恋の病って本当にあるから、あれは本当に病とおなじやから、ある日突然、ぱっと目が覚めて、なんでこんな糞男のことわたし好きやったのやろう…と、嘘みたいにサーっと冷める日がくるからさ、と慰めというか戒めを込めて諭すわたしはなんというかまじでおばはんになったもんやわ〜とそんな自分にもちょっと落ち込んだ。だけど、人前で、仕事中にも関わらず、えんえんしちゃう女の子の涙というのは、職務うんぬんはさておき、ピュアで美しいものやな〜とか思っちゃった。そしてあんな涙はもうわたしなんかは一生流すことはないでありましょう。人前ではね。たぶんね。もう涙も枯れ果てた薄汚れた女ですさかい。

11.15水
一度は眠り薬で眠ったけど3時にはぱっちり目がさめて、布団の中でツイッターを眺めていた。11月15日。今日は雨宮まみさんの命日。わたしは人の生き死にはあんまり興味がないというか、肉親の命日すらも朧気やったりするくらいの薄情者ですが、この日だけは毎年思い出すでしょう。それくらい去年の今日は衝撃やった。今もウェブ上に残っている40歳が来る!の文章を読んで、はあってため息をついて、あのいつでも姿勢のいい美しいまみさんのおもかげを思い出したりした。今でも憧れているし、ずっとついていきたいと思える数少ないおねえさんやった。感傷に浸りながらも、今日はライブ。円盤の月例ワンマンの日。家で練習しながらやる曲を決めて、ちょっと早くに出発し、今日は飯田さんと中央線沿線にIKAZUGOKEのアルバム委託ツアーに出かけた。まずは中野のタコシェ。の、入口で、あらっ見たことある人が? と思って声かけたらやっぱりそうやった、S久さん! プライベーツでお買い物中な模様やった。びっくりしたーとかいいながら、IKAZUGOKE委託をお願いして納品し、店主N山さんが突然クッキーをくれた。フランスへ行っていたおみやげらしい。納品しておかしをいただいて、S久さんと駅まで一緒に歩きながら、先日S久さんが呼んでくれたラジオ日経の番組が10月度の聴取率第一位に輝いたらしいとお聞きし、感動。わたしの回も結構な人数の人々が聴いてくださっていたということになる! ありがたい。そんな吉報を聞いて駅でお別れし、わたしと飯田さんは次なる地、阿佐ヶ谷よるのひるねへ。よるのひるねはIKAZUGOKEの前身である母親教室を2年間やっていた場所でもあるのです。よるひるで、コーヒーを注文し、さっきのいただいたクッキーをみんなで食べながらしばし談笑。よるひるの店主かどちゃんはキュートなので記念撮影もした。と、わたしは今日は円盤ライブなので、先にお暇して、歩いて高円寺へ。高架下をずっとまっすぐ歩いていたのやけど、この道がいつの間にかアニメストリート? とかいうオタクタウンと化していてびびる。阿佐ヶ谷ってそういう町なんでしたっけ? ちょっと引きながら円盤に到着。今日は店主田口さんは北海道出張中で、店番は未来くんやった。ラジオ菊次郎(先月呼んでもらった、未来くんとモタコさんとトンチさんの企画)の品々を頂戴したりしながらじわじわリハをして照明の具合を説明して、4階の控室(というか女工部屋でもあり、在庫置き場でもある)でしばらく休憩。もう殆どないはずの裸の村の在庫が結構あるやんと思って、あんま売れてへんかったんか〜とか心配になる。時間になって本番。いつもどおり小一時間MCもなく歌いっぱなしで、最後に今月の報告をおしゃべり。あれはあの場でしか喋られへんことを毎度喋っておりますので、お越しくださった方どうかNOツイートでお願いしますね☆ いつも心掛けていることやけど、わたしはせっかくお金も時間も割いて現場に見にきてくださってる人にはそれなりにここでしか味わえない何かを持って帰ってもらいたいと持っておりますので、あのようにサービス悪口雑言のようなことも言っちゃうのです。でもみんな、ああいうゲスイ話お好きでしょ。にしても今月は特に…でしたね。でも10名ぽっちのお客様と共有できる内緒話ってことで、クスクスと笑っていてください。そしてこの毎月やってる「早樹子、高円寺気分」はそういう内緒話的なものを持て帰れちゃうよって、だからもとお客さん来てくれてもええんやで〜1500円ドリンク付きでお得やで〜。そして、この会はあまりにもお客様がへると終わったりもしますのでね! 終わらないようにええ具合に支えてくださいね。久しぶりに見に来てくれたAちゃん夫妻と足立区話でひと盛り上がりしたりして、飯田さんと足立区へ帰り、日高屋さんでごはん。いつもこの日高屋さんには何かしら怖い人が隣に来ちゃうのやけど、前回はラー油ひと瓶おじさん(野菜たっぷりタンメンにラー油をひと瓶ぶち込んで真っ赤にして食べていた)前々回はスマホみながら怒り口調の独り言をめっちゃゆっている鳥おじさん(信じられへんくらいセーターに鳥の毛がくっついている)そして今回は、日高屋で一人飲みをしているおじさんなのやけどこだわりが強すぎて、注文して出てくるタイミングや、アジフライのソースの量とかをいちいち怒り口調で店員さんに切れているゴキゲン斜めおっさん。日高屋さんって全国的にみてこういう変人が集まる店なんでしょうか。まあ安いもんね。飯田さんとタンメンを啜りながら、軽くIKAZUGOKE打ち合わせ。わたしたちってまじめ〜☆ 今日は閉店がいつもより早かったので12時にお店を出て健全に帰宅した。

11.16木
ふと思い立って朝方、ダメ元で某所へプレゼン資料とお手紙を書いて送る。IKAZUGOKEは地上の文化圏ではなかなか扱ってもらえないものやとだんだんわかってきたので、地下文化圏の中では立派でメジャーな、たぶんわたしらなんかは相手にされないかもしれない某所へ。うーむどうなるかな。帰って特選小説の連載コラム原稿を書いて、あとはだらだら読書をした。しかし部屋がかなりカオスになってきている。レコ発で使った色々な道具や物販の残りや、なんか大事か大事じゃないか微妙なラインの捨てられない紙切れなんかが散らばっている。こうしてゴミ屋敷というのはだんだん仕上がっていくのであろう。そうならないうちに片づけないとね。夜はチョコレートデリンジャーの短い劇伴をいくつか作ってみて杉作さんに送ってみたけど、方向性があってるかどうかわからない。映画と映画音楽の間柄ってほんとむつかしいなーと思う。これは作らしてもらう立場になってから感じるようになったことやけど、監督さんの中である程度イメージがある場合はわたしがいくらドヤって曲を作っても、違うもんは違うってなるし、逆に真っ白でオッファーしてくださる場合もそれはそれでむずかしくって、うーん、むずかしいよね。そうそうこちらも10年がかりの映画、木村文洋監督の『息衝く』という映画がついに公開が決まったらしいです。この映画ではわたしはじめて音楽監督?という立場に立たせていただきて、チェロの坂本弘道さんをお呼びして、チェロだけじゃなく歌まで歌ってもらったりして、最後のエンディング曲は木村監督作詞でわたし作曲という新たな試みで作りました。しかしこの作業も結構大変やった。千本ノックかよ〜てくらいいっぱい作ってはボツになって、結局使われているのはほんの少しなんですが、そもそも音楽をあんまり必要としていない作風の映画やというのもあるし、うむ、勉強になった映画です。というか、映画自体、これ公開出来るんか?って最初心配になったくらい、ちょっと色々多方面に物議を醸しそうな要素満タンの、ヤッベー映画です。劇団サンプルの古屋さんと偶然にしてこういう形でご一緒できて、うれしかった。https://t.co/rzEDiF4vET

11.17金
親知らずを抜くために大学病院へ行くことになったのだけど、その紹介状を今の歯医者さんが送ってくださってそれが届き次第行こうと思っていたのだけど、届いたらもうお昼で、大学病院の初診て朝10時までとかに行って並ばないとあかんのよね。ということで断念。家でどくしょをして過ごす。花房観音さんの『楽園』…京都駅のすぐそばに楽園ハイツというアパートがあって、そこで暮らす女たちの連作短編なのやけど、ここは昔、遊郭やって、楽園と呼ばれていた。その名残りで今はもう表立っては遊郭にはなっていないし、普通に住居用のアパートになってるのやけど、そこに暮らす女たちは肉欲を持て余していて、それぞれに色んな方法で楽園を知ってしまうってお話やったのやけど、田中みつ子という母親が、グレはじめている娘に向かって書いた手紙がものすごく生々しくて、あーこの感じ、わかりすぎる! と思って震えた。

楽園 (中公文庫)

楽園 (中公文庫)

11.18土
昼に飯田さんが我が家に来て、今後の打ち合わせをみっちりやる。来月のツアーのことや、それから25日の月亭可朝師匠の余興の練習もする。良い感じにまとまりそうでホッ。その後、飯田さんも都会で用事があり、わたしはヒューマントラストシネマ渋谷へ映画を見に行った。そう、本日封切りの小林勇貴監督『全員死刑』であります。封切日に映画見に来るなんていつぶりやろう。それくらい楽しみにしていた。そもそも原作の鈴木智彦さん著『我が一家全員死刑』のファンで、この事件ごとわたしは、この一家が名前が北村やということもあってか、なんかすごく惹かれていて、しかしえげつない実録の事件やし、どんな風に映画になってるのやろうとどきどき。会場は満席。すごい。どうやらこのヒューマントラストシネマ渋谷で4回まわし、あとレイトショーでテアトル新宿で1回あったらしいけど、全部の回が満席だったそうな。すごいことです。テアトル新宿はばり広いからね。映画は、めっちゃおもろいエンターテインメントを見せてもらった感じで、何回も声だして笑ったし、やっぱり小林監督、まだ27歳とかですごくお若いのにすごいわ、天才やわ、と思いながら見ていた。人はなかなかそう簡単には死なへん、殺すのは大変やというのもしつこいぐらい見せてくれて、それは原作とおなじで、何回も生き返ってくる死体を何回も殺すシーンはおおって感じで、あと情けないこのヤクザの組の組長でもあるお父さん六平さんが味わい深くてよかった。あといつも自販機前にいるボケ老人がめっちゃ怖かった。あんなん原作に出てきたっけな。しかし、映画としてみれば本当に最高に笑えて最高に不謹慎でわたしの大好き分野で楽しめたのだけど、これは2008年に実際に起きた事件で、わたしはわりと真面目に原作本を読んでいたし、何よりこの一家、映画の中では首塚家ってなってるけど、ほんまは北村家なんで、勝手に同じ名前やからめちゃシンパシー感じちゃったりなんかもしてたので、爆笑しときながらも、突然我に返って、これ、こんな笑っていいんやろうか、みたいな気になってしまって、帰り道結構考えてしまった。もう一回原作を読んで、映画ももう一回見てみなわからんな、と思った。しかし福岡弁? の「ぶっ殺ろう(ぶっさろう)」て言葉がイントネーションごと忘れられなくて、つい口をついて言いたくなる。わたしは影響されやすい。


11.19日
朝からトイピアノをがんがんに練習して、昼からトイピアノをしょって下北沢バブーシュカへ。今日はバブーシュカで今やってる金田アツ子さん個展にあわせたライブ。アツ子さんはわたしのジャケットも描いてくださってて、他にも何作もわたしをモデルに、わたしの歌をモデルに、絵を描いてくださっていて、そんな絵がずらーと並んだ会場、足を踏み入れたらもうたちまち胸がいっぱいになってしまって、今日わたし、ちゃんと歌えるやろうかって不安になり、でも、この、もう今回で六回目?七回目?ぐらいのアツ子さん個展とのシリーズ『おやつの時間』は今回で最終回で、だからこの展示全体のタイトルも「小さなお別れ」となってて、この言葉もアツ子さんはわたしの「貝のみた夢」て歌の一部から抜き出して使てくれてて、そんな色々が相まって、今日はすごく大事な日だった。本来はお客さんの方を向いて歌うのが当然なのやろうけど、今日は完全に絵の方を向いてうたわせてもらった。そしたら、ずっと我慢してたけど、最後やっぱり目から水が溢れてきて、わたし人前で泣くとかあり得ないって思うタイプの人間なのだけど、さすがに我慢できなくなっちゃって、お恥ずかしいところをお見せしてしまいました。北村のそういうまじな面が見れたという意味ではお客様お得だったと思いまっせ☆ だって他ではああゆう精神状態には絶対ならないからね! そんなこんなライブのあとは、みんなでおやつの時間。アツ子さんのおいしいケーキを食べながらみんなでおしゃべりした。名古屋からわざわざいらしてくださった青年がいて感動。お越しくださったみなさま、バブーシュカさま、そしてなにより、金田アツ子さん、本当にありがとうございました。最近は、どうしても笑いをとらないといけないんやないか、とか、色々邪念がはいってしまっていたけど、アツ子さんの絵を見ていると、そういうのが一切なくなって、本当にすごく清らかな気持ちになっていった。これを癒しとかとは呼びたくない。アツ子さんもそんな癒そうとか思って絶対に描いていないだろうから。寧ろ怒りとか悲しみとかいろんな気持ちが入っていて、絵を凝視していたらそういう袋がぱちんて割れてこっち側に雪崩れてきてね、だからわたしも泣いちゃったんだと思う。アツ子さんの絵も、アツ子さんも、やさしいんだけどとても気高く強く、そしていつもひとりで生きている。だから、わたしもひとりでも生きて行かないとって気持ちになった。帰りにアツ子さんがおさがりの可愛いお洋服をたくさんくれた。うれしい。この冬だいじに着よう。