12.17〜23日記

12.17月
6時起床で点滴&血液検査。朝食は高野豆腐とお浸し、味噌汁。そういえば朝から和食を食べる生活なんて生まれてこのかたしたことがなかったなあとふと思う。ちいさい頃から、実家での朝食はもっぱらスナックパン(ヤマザキの細長いやつ)だったし、一人暮らしになってからはもっぱらお菓子とコーヒー。今回の入院でわたし急に健康体になるかもしれない。午前中、こまどりとゆう病院の中のちいさな図書室に行ってみた。パソコンが4台くらいあって、本が並んでるんだけどだいたい医療系病系のと、文芸本は申し訳程度に、近年の芥川賞作品と村上春樹東野圭吾があるくらいで、だいたいもう読んでるか興味ないかのどっちかって感じ。一応桐野夏生の『柔らかな頬』上下を借りた。

柔らかな頬〈上〉 (文春文庫)

柔らかな頬〈上〉 (文春文庫)

柔らかな頬〈下〉 (文春文庫)

柔らかな頬〈下〉 (文春文庫)

こまどりにはいつも患者サロンでパソコン開いてる赤チョッキのじじいと、売店や廊下でよく見かけるショッキングピンクのパジャマのお姉さんがいた。喋ったことないし今後も多分喋ることもないけど、毎日見かけているとなんか親近感が湧くものやなあ。お昼ごはんは、鳥と野菜の変な炒めものと、春雨サラダ、梅干し。全部微妙な味だった。午後から感染症科の先生が回診にきておしゃべり。なんとこの先生、鈴木智彦さんの読者だと発覚!すご〜お医者さんもヤクザの本読むんですね!ちょうどナックルズの鈴木さんとの対談をまとめていたのでその話をすると、先生興奮していらした。病院でまさかサカナとヤクザの話が出来ると思わず、束の間楽しかった。そろそろ洗濯物がたまってきたのでコインランドリーにいくも、混み合っていたので断念。夜19時までしか使えないのが地味に困る。晩ごはんはタラの甘酢あんかけ、ぜんまいナムル、かきたま汁。全部微妙。今日はごはんはハズレの日。病院は晩ごはん6時と早いし、食べたらもうやることがなくなってしまい本当に退屈。だらだら桐野夏生を読んだり、ラジコで伊集院光のJUNK、南キャン山ちゃんのJUNK、岡村隆史のANNなどを聞き漁って過ごしている。

12.18火
6時起床で点滴。朝食は炒り豆腐、お浸し、みそ汁。主治医の回診で、傷口だいぶ塞がってるから抜糸しましょうとなり、抜糸ってちゃんと診察室とかでやるのかと思うとまさかのベッドの上でそのままチョキチョキとやりだしてびっくり。特に痛くもなくあっさり終わった。午前中、S井さんから小包が。フランスのおみやげでリスさんのポシェット!かわいい!気に入ったので早速つけて一日中過ごす。他にも色々お菓子や読み物など。ありがたい。お昼ごはんは、なんとうどんが出た!やったー!白米やと残してしまうけどうどんは全部完食。午後の点滴をキメて、今日はシャワーの日。点滴をまたサランラップでぐるぐるにしたけど、結局水入っちゃってびしょびしょに。お風呂から出たら、またしても小包が。大阪のK子さんからパジャマが届いた!ありがたい!わたしパジャマってゆうのを持ってないので、適当なTシャツとジャージズボンですごしていたので、これでパジャマでやっと病人らしくなった!そうこうしてたら、円盤店主T口さんとM村さんがお見舞いにきてくれた。先日の北村早樹子ビデオコンサートの売り上げを持って。ありがたい。ライブができなくってもこうやって売り上げに変えて持ってきてくださるなんて。涙涙。ついでに差し入れ読み物に実話時代エンケンの本と日本ロック史、あとI上さん伝いに僕のマリさんの『いかれた慕情』が!うれし〜!ずっと読みたかったやつ。I上さんありがとうございます。小一時間くらいおしゃべりしてバイバイ。そうそう、向かいのベッドのおばあさんに事件が。おばあさんの旦那さん、しばらく面会に来ないなあと思っていたら、なんと!腸閉塞で入院したそうな!しかも同じ病院の5階に!夫婦揃って別件で入院!そんなことあるんやね〜。夜ごはんは、豚肉の変な炒めものと、レンコンのきんぴら、りんご。全部微妙〜。ごはんのあとベッドでだらだらしていたら、「伊藤さん、伊藤さん、いるんでしょう?起きてる?」と大声で叫ぶおばあさんが部屋に入ってきちゃってびびる。ちなみに、我が病室に伊藤さんって人は存在しない。この伊藤さん探しのおばあさんは昼間にも来ており、たぶん、なんか、そうゆう病気。病院には色んな人がいるものですね。

12.19水
6時に起きて点滴。朝ごはんはボイコットして、珈琲をいれ、昨日S井さんからの贈り物小包に入ってたケーキを食べる。美味。好きなもの食べると朝から元気が出る。コインランドリーが開く9時ぴったりに行き、入院後初の洗濯。干す場所がないので乾燥機も使ってほかほか。ベッドでだらだらしていたら、郵便物が届く。来年の映画の台本が!消印は金曜なのに手元にくるまで5日間もかかった!それも看護婦さんにしつこいくらいゆって探してもらってやっと届いた感じ。こうゆう病院のシステムのゆるさ、いらいらする。台本が届いたのでほくほくした気持ちでページをめくる。こういう映画の台本いただくのがはじめてなので全部新鮮でうれしい。お昼ごはんは、白身魚のムニエル、大根サラダ。しょぼい。午後の点滴をしていたら、特選小説の編集のO高さんがお見舞いにきてくださった。リクエストのドリップコーヒーをたくさん。うれしい。O高さんは前回の入院のときもいの一番にお見舞いきてくださり、そして今回も来てくださった。本当にありがたい。みなさんお忙しい年の瀬、時間作って会いに来てくださる方は本当にかけがえないと思う。1時間ほどおしゃべり。入院していると一日中ほぼ声を出さないので人との会話に飢えている。喋れるって、喋ってくれる相手がいるってありがたい。O高さんが帰って行き、土曜日の映画の衣装合わせの外出の件でちょっと揉める。病院のルール的に夜遅くに帰ってくるのはだめらしく、外泊にして早朝始発で帰ってくることになった。夜ごはんは鶏のゆずみそかけ、ブロッコリーのあんかけ、きゅうりの酢の物。絶妙にしょぼくてげんなり。適当に残して、ビスコを食べた。桐野夏生の「柔らかな頬」上下読了。それから夜ベッドで僕のマリさんの『いかれた慕情』を読んだ。文章の種類でいうと、エッセイ?というカテゴリに入るのかな?と思うんだけど、マリさんはわたしが今いちばん好きなエッセイストだ。わたしが出来なかった甘くて酸っぱくて瑞々しい宝物のような恋を、マリさんの文章を通して追体験しているような感じ。読んでて胸がじんじんする。あとがきの「わたしは一生、恥をかき続ける」とゆう一文がすごく響いた。

12.20木
6時起床、点滴と採血。看護婦さんの中でいちばん頼りない若そうな人が来てしまい、案の定、採血下手すぎて泣いた。足から採血するので腕の10倍痛いんだけど、刺せども刺せども外しまくりで血が取れず、3穴も開けた上に、1時間後量が足りなかったからとまた刺しに来た!さすがに下手すぎてもう無理!となり、痛いんですけど!と言うと平謝りするんはええけど結局この人じゃ無理でベテランさんが代わりにやってくる羽目に。ベテランさんの採血は全然痛くなかった!こんなに違うものか!最初からベテランさんをよこしてくれ!と心底思った。朝食は、大根の煮物、キャベツの変な和え物、みそ汁。わたしは納豆禁なのでなかったけどみんなは納豆食べてたので部屋中がくせえ。どうやら木曜は納豆の日らしい。午前中、向かいの可愛い声のおばあさんに、腸閉塞で下の階に入院した旦那のおじいさんがやってきていた。おじいさんの病室はみんな腸が悪いから人工肛門の人も何人もいて部屋が臭いんだそう。そしておじいさんは腸閉塞だからずーっとごはんが食べられないらしい。おじいさんがいる時間にお昼ごはんになり、昼食が運ばれてくる。「食べさしてやるよ」「いいよー自分で食べれます」「いいから、あーんしろよ」「やだ、いれすぎ」とゆうなんとも仲睦まじい会話が聞こえてきていて和んだ。最近独り言で悪態をついてるおばあさんだけど、おじいさんの前では終始ご機嫌な様子。ああ、夫婦っていいなあってちょっと思ってしまった。昼食は、鮭のキノコあんかけ、ポテトサラダ、パン。どうやら木曜の昼だけパンが出るらしい。わたしはごはんはどう頑張っても半分しか食べられないけど、パンならぺろっと食べられる。毎食パンにしてほしい感じ。午後の点滴、後、15時から院内の美容室に白髪染めをしにいった。ついに!白髪染めデビューである!(ブローネでやったことあるけど大失敗しそれから全く染めずだった)院内の美容室はお客さんは入院患者ばっかりで、美容師さんは技術職って感じでちょうどいい堅苦しさだから居心地がよかった。馴れ馴れしく話しかけられることなく2時間半かけてみっちり染めてもらった。すごい真っ黒になったぜ!なんでまた染めようかと思ったかというと、年明けの映画の撮影で白髪まみれだとさすがにまずいじゃなかろうかと思い、染めたんである。黒髪でるんるん病室に戻り、晩ごはんはハンバーグ、きゅうりのごま酢和え、なめこ汁。ハンバーグが泣くほどしょぼいカチカチでペラペラのチルドのやつだった。夜はパソコンを広げ、ちょっとだいじな書評お仕事の宿題を本腰入れて書く書く書く。概ね書けたけどラストが浮かばず。うーんむずい。書評ってむずいですね。久しぶりにちょっと生産的なことをしたので心が満たされた。心が?どこがだろう?わからんけど、体のどこかにこうゆうことでしか満たされない部位が確実にある。

12.21金
6時起床、点滴。朝ごはんはちいさい金目鯛、ちんげん菜おひたし、みそ汁。午前中、こまどりに本を返しに行き、また借りてきた。こまどりは特に読みたい本が殆どないので、惰性で道尾秀介カラスの親指』を借りた。働きもせずに日がな一日だらだら読みたくもない本を読んでいると、わたしったら贅沢な身分だな〜って気持ちになる。昼ごはんは、豚と野菜の炒め物、かぼちゃの煮付、酢の物。入院してわたし酢の物って好きなんやと気づいた。すべてが薄味の病院食ですが、酢の物だけはちゃんと酸っぱいので食べやすい。午後の点滴を終え、シャワーの予約をしてたのでシャワーにいく。ちょうどおなじ時間に向かいのベッドの寝たきりのおばあさんが介助シャワー室でシャワーしてて、寝たきりだから看護婦さんすごい何人も出動しててたいへんそうだった。シャワーのあと、飯田さんから明日のIKAZUGOKEワンマンの台本が届いたので、声の録音をしに病院内をさまよう。ベッドの上ではちょっと録音できない内容なのだけど、デイルームも患者サロンも人がいてなかなか無人の場所がなく悩み、結局電話ボックスに籠城して録音することに成功した。ホッ。すぐさまメールで飯田さんに送信。晩ごはんはなんと、早くもクリスマスメニューが出た!ローストチキンにサラダにスープにちいさいケーキ。ちょっとテンションあがるもローストチキンなんの味もしなくて萎える。せめて塩コショウしてよ〜。食べてたら榎本さんがお見舞いにきてくれた。手編みの靴下にお菓子をたっぷり詰めて持ってきてくれた。榎本さんは編み物名人なんだけど、この靴下が超かわいくて刺繍のツリーに小鳥がとまってて胸キュン。お菓子もいっぱいありがたい。榎本さんに、日本で一番うまいサックスプレイヤー津上研太さんが、わたしの「からすの蒲団」とゆう曲をライブでカバーしてくれた映像を見せていただく。これがハイパーかっこよくて、ジャズバンドがアレンジしてくださるとこんなになるんや!て目から鱗な仕上がりでうっとり。津上さんめちゃくちゃかっこよくてたまらん。惚れた。榎本さんと2時間ほどおしゃべりし、お見送りしてベッドに帰り、夜は三四郎のANNを聞いて寝た。

12.22土
6時起床で点滴。朝食は厚揚げ煮、青菜お浸し、みそ汁。変わりばえしない献立。コーヒーいれて昨日榎本さんがくれたチョコを食べた。今日は久しぶりに外出なので、2週間ぶりにブラジャーをし、化粧もする。ブラジャー久しぶりにしたら苦しい。太ったんかな。11時半から前倒しで午後の点滴をし、午後からシャバへ。今日は映画の衣装あわせと動き方指導があるんである。外に出たら雨がぱらついてたので、コンビニで傘を買う。田端駅まで歩き、新宿、京王線に乗り換えて調布。マネージャーMッキーと落ち合ってさらにそこからバス。なかなかの遠出である。由緒正しい撮影所なる場所に普段足を踏み入れることもないので、いちいちテンションがあがる。衣装室なる場所へ入ると、監督はじめスタッフさんが20人くらいいて、衣装さんが用意してくれた何パターンかの服を着てみんなに見てもらう。衣装あわせってこんなんなのか〜。不思議な感じ。無事衣装が決まり、空き時間、食堂でマネージャーMッキーとおしゃべりしてたらじわじわとキャスト陣が集まってきて、会場へ。映画やドラマでみたことある俳優さんばかりで、挨拶していいものかどうなのかわからずオドオドしてしまう。守秘義務があるので誰とは言えませんが、この映画、なかなか豪華な実力派俳優さんが集結していて、わたしごときがこんなところに混ぜていただいていいんだろうかと恐れ多すぎてびびる。映画の内容がいえないので詳細は書けないのだが、某分野の先生がいらっしゃり、みんなで説明を聞いた。へえーすごーてなる情報だらけだったのだけど、何一つここには書けません、がたいへん勉強になりました。なんやかやで終わったら21時回っていて、病院の門限20時を大幅に破ってしまうため、今日は自宅に帰り、明日始発で病院に帰ることに。久しぶりにシャバで過ごす一夜。帰ったらポストがパンクしていて、請求書類だけ取り出す。この、一か月ほぼ留守にしてるから家賃も空家賃だし、光熱費も基本料金が勿体ない感じ。パソコンを広げ、ナックルズの原稿を送って、映画の参考資料DVDを見て寝た。

12.23日
4時起きで荷物の準備をして、始発に乗って病院にもどる。まだバスはうごいてないので千駄木から徒歩。早朝は寒いしこの辺誰も歩いてない。病院の裏口から入って病棟へ帰還し、ナースセンターに外泊用紙をもっていく。部屋に戻って荷物の整理、してたら6時から点滴。眠いのでうつらうつらする。7時半から朝食。日曜だから今日はパンだった。パンとコンソメスープとウインナーと野菜のケチャップ煮。まあまああたりだった。薬飲んで歯磨きして、一旦寝よう。と思っても意外と寝付けず。布団でだらだらする。お昼ごはんはカレイのきのこあんかけ、里芋の煮物。微妙。午後からはちゃんと起きようと思ったけど身体がだるくて結局だらだら。内田春菊の『ダンシング・マザー』を読み始める。

ダンシング・マザー

ダンシング・マザー

長崎弁?が馴染みなさすぎてなかなか入っていけず。夕方から向かいのベッドのおばあさんに、例の腸閉塞で下の階に入院してるおじいさんが遊びに来ていて会話がかわいくてなごむ。「こんなに長く泊まってさ、俺たち新婚旅行みたいだね」「なにいってるのよ、こんな新婚旅行ったらないわよ」「じゃ修学旅行みたいなもんか」「ばかいわないでよ、わたしたち何歳よ」ほっこり。夜ごはんは、鳥の水だき風、と書かれていたのだが、ただの味無しのゆで野菜とゆで鷄だった。冷めてるし味ないし、全く食が進まない。夜はこの長い日記を書いて寝た。