12.10〜16日記

12.10月
病院で目覚める朝。朝食は、ハムとしめじとほうれん草ソテー、白菜の煮物、みそ汁。謎のソテーは意外とうまかった。白米以外はちゃんと完食。朝から採血(また足からとった)、点滴をし、先生が回診にくる。今回のわたしの主治医は女性なんだけど、男前とゆうか女前とゆうか、ショートカットでさばさばした30代くらいのねえさん。怖いわけじゃないんだけど、なんか威圧感あってとっつきにくく喋りにくい。主治医の回診で、手術痕のガーゼの取り替え。ドレーンとゆう膿を吸い出す管はまだ入ったまま。昼前に、今度は感染症科の先生が回診にやってくる。今回のわたしの症状は、外科の領域だけど感染症でもあるので感染症専門の先生もついている。病状を説明されるもあまりわからず。昼食は、麻婆豆腐とお浸し。やっと味のあるご飯が出て歓喜。昼過ぎに、近所に住むH田くんが、みかんとイチゴを持ってお見舞いに来てくれた。しかも赤ちゃんを連れて!まだ生後4ヶ月ほどの赤ちゃんは、お肌つるつるすべすべで、お目目キラキラのくりくりで、たいへん可愛くて癒された。H田くんがお父さんしている光景もなんかぐっときた。1時間くらいおしゃべりして帰って行き、午後の点滴。を終えて、わたしは再び外出許可をもらって一旦家に荷物を取りに帰る。とアパートの部屋の前にゴミ袋がおいてあり、「燃えるゴミは今日じゃありません!」とゆう怒りのメッセージがかかれた紙が貼り付けられていた。がーん。そう、土曜日に荷物とりにきた際に、わたしはゴミの日じゃないのわかっていながらゴミを出したのである。だって入院しちゃうからどうしようもないやん?どうしたらええの?そや!と思い立ち、上の階に住む子連れの主婦のおねえさん宅にピンポンを押し、事情を説明してゴミの日までゴミを預かってくださいとゆう妙なお願いをした。快く引き受けてくれてホッ。部屋で追加の荷物をトートバッグに詰めていき、滞在時間20分ほどで家を出て病院に戻る。千駄木駅から病院まで徒歩15分。団子坂が急だけど、普段閉鎖的な病院に軟禁されてるので冬の冷たい空気を吸いながら歩くのきもちよかった。病室にもどると、またしてもお見舞いが!なんと元チューバディスク(わたしの1stアルバム2ndアルバムをリリースしてくれたレーベル)の美人敏腕スタッフK澄さんが来てくれた!実は会うのも8年ぶり?とかで超ひさしぶり。近況報告などつもる話を1時間ほどした。K澄さん、可愛い和菓子とドリップコーヒーと本(カレンラッセル「レモン畑の吸血鬼」)を持ってきてくれて歓喜

レモン畑の吸血鬼

レモン畑の吸血鬼

K澄さんには10年前くらい公私ともにとてもお世話になっていて、わたしが新米主婦だった時代、ご近所さんでよくごはんを食べさせてもらっていた。(K澄さんは料理が上手)その後、わたしは離婚して上京し、チューバディスクも業務終了し、みんなバラバラになっちゃったけど、こうしてまた会えるのはうれしいな〜としみじみ思った。K澄さんが帰って晩ごはん。鳥の照り焼き、ひじき、すまし汁。絶妙に食が進まないがもったいないのでおかずだけ食べた。今日は色んな人に会えて充実したきもちで寝た。

12.11火
6時起床で点滴。朝食はボイコットして、昨日H田くんがくれたイチゴとK澄さんがくれた和菓子をたべた。朝はコーヒーが飲みたいけどコップもお湯もないから飲めず。向いのベッドの恐竜いびきババアは別の病室へ引っ越していきホッ。そして代わりに首の骨を折ったおばあさんが入ってきた。先生や付き添いな旦那さんの話を盗み聞きするに、朝そうじのバイトへ行く途中に自転車で転倒して首が折れちゃったらしい。ひい!このおばあさん、寝たきりだから顔は見てないんだけど、声がとても可愛く魅力的で、なんてゆうのか、天然でアンビエントなエフェクトかかっててしかもロリータボイスなんである。フレンチポップとか歌わせたい感じ。癒される。が、寝たきりだからご飯食べるのもひと苦労だしトイレもいけないからオムツでうんちしたりたいへんそう。そして看護婦さんもたいへんそう。昼ごはんはやきそばとサラダ。やきそば、ほぼ具なしであった。そう、やきそばを食べていてふと、母方の祖母の実家の焼きそばを思い出した。母方の祖母の実家は食習慣がいろいろ変わっていて(やべーすきやきエピソードが過去の日記にあります)焼きそばは味なしなんである。そばと、キャベツとお肉をただ焼いただけのものがどーんと出てきて、あとは味付けはご自分でどうぞ法式なんである。みんな各々お皿にソースをかけたりしょう油をかけたりしていて、わたしはしょう油味が好きだった。でもソースにしてもしょうゆにしても、絶対一緒に焼いた方がおいしいよね?あの食べ方は地域性なのか、それともつくる祖母が変わっていたからか。謎。やきそばを食べたらもうやることがなくなった。ああ、入院生活は本当に孤独で暇。来年のだいじな仕事の件でマネージャーM氏に連絡。色々どたばたで、もしかしたらその仕事自体ダメになるかもで泣きたい気持ち。なんでわたしの人生ってこうなんやろ、よっぽど日頃の行いが悪いんであろうか。それとも厄年だからか?あーおちこむ。夜ごはんはシャケ、青菜のピーナツ和え、茶碗蒸し。茶碗蒸し好きやけど普段食べないから久しぶりに食べた。おいしくて満足。あー食べてぐうたらしてるだけ、一日100歩も歩かない豚のような暮らし。動いてないから当然眠れない。

12.12水
6時起床で点滴。そろそろお気に入りの看護婦さんが出来てきた。まあみんなやさしくてよく働くいいひとなんだけど、この人なんか好きやな〜って人とか、なんか苦手やな〜って人、出てくるよね。朝ごはんは白菜の煮物、温泉卵、味噌汁。これで一食450円はどう考えても高いよね。主治医の回診があり、あとは暇。入院生活は孤独と暇との戦いや。昼ごはんはエビフライが出てがびーん。エビフライ残してたら、看護婦さんに「アレルギー?」と聞かれ、ただただ嫌いな旨を伝える。午後は点滴のあと3階の患者サロンとゆうとこに行ってみた。病院内この空間だけwifiが飛んでるのである!が、平日10〜17時しか使えない上に、使ってみると電波クソ弱い。まあ、やむなし。病院やしね。暇なので狭いコンビニを無駄にうろちょろしたりして時間を潰す。夕方、マネージャーM氏がやってくる。この度の顛末を説明して謝罪。1時間ほどM氏と与太話で盛り上がる。M氏は毎度毎度おもしろエピソードをぶっこんでくれるんだけど、今日のエピソードもこれまたやばかった!けどプライバシーの問題があるのでこんなとこには書けません。晩ごはんは肉豆腐と煮物とすまし汁。すまし汁にお麩が浮いていてうれしかった。味噌汁の具でいちばん好きな具は麩かもしれない。19時半頃、年明けから出演する映画のプロデューサーさんがいらっしゃる。わたしの容態を知り、本当に治りそうかどうか判断するのに、わざわざご足労くださったのである!もしかしたらアウトかもって不安でいっぱいやったのだけど、おはなしし、なんとか首にならず出られることになった!よかった!本当によかった!この映画は詳細は守秘義務があるので言えませんが、まじで本物のちゃんとした映画なのです。ライブも全部キャンセルになってしまった今のわたしの唯一の楽しみなことが年明けの映画!あ〜たのしみ!そのためには何がなんでも年明けに退院するぜ!

12.13木
6時起床で点滴と血液検査。朝ごはんはなんと納豆!ガーン!まあ偏食なわたしが悪いんだけど、朝から嫌いなもの出るとテンション下がるわあ〜。午前中、IKAZUGOKE相方飯田さんがお見舞いに来てくれて、22日のIKAZUGOKEワンマンの相談をする。結果この日はわたしは現場には行けませんが、声だけで出演することになりました。そして飯田さんのご好意で投げ銭一部をわたしの入院費用に当ててくれるとのこと。うるうる、ありがたい。お昼ごはんは、グラタン、パン、サラダ。わあーいグラタン!冷めてたけどうれし〜!しかもパン!何日ぶりのパン?ただのロールパンさえおいしく感じた。あ〜ぶどうパンが食べたいなあ。午後は患者サロンへパソコン持って行き、うっすいwifi電波からなんとかナックルズ連載のテープ起こし原稿をパソコンに落とす。患者サロンにいたら、「手作りカード講座を受講しませんか?かわいいシールやスタンプもたくさん用意してます♡」と謎の勧誘をされ、怖くなって病室に戻った。手作りカード講座て何?しかも勧誘してきたおばちゃんがなんかすごい信仰宗教っぽい変な物腰&笑顔であやしくて怖かった。暇なので院内をうろうろしていて、デイルームの大部屋に入ったら、なんと!お湯があった!よし、明日外出して家からコップ持ってきてコーヒー入れて飲も!こうゆうちょっとしたことに喜びを感じていないと退屈な入院生活は乗り切れない。晩ごはん。昼間のグラタンに浮かれていたら一転、夜はメインディッシュが卵焼きとゆう貧相すぎる献立で泣いた。大根おろしついてたけど、卵焼きて!朝ごはんじゃあるまいし!プン!夜は黄昏流星群の最終回をみて寝た。

12.14金
6時に点滴、8時に朝食。白身魚と、野菜のおかか和え、麩のすまし汁。午前は先生の回診があって、手術痕の傷口の消毒。黒い糸で二十針くらい縫っているのでなかなかグロい。昨日の血液検査の結果は良好だったぽくってホッ。なにがなんでも年明けには退院しないといけないのです!昼ごはんは鶏のトマト煮とインゲンの胡麻和え。感想は特になし。食べてしばしナックルズの原稿とにらめっこ。なかなか字数が減らず悩む。午後の点滴を終えて、15時から外出許可をもらって一時帰宅。外に出ると風が冷たくて極寒だったけどぬくぬくした病室より断然きもちよく、千駄木駅まで15分歩いて電車で帰路。北千住で途中下車して、ちょっと買い物。ユニクロで超極暖を買い、ブックファーストで読み物を探す。ちょっと高いので手が出せなかった、リン・ディン『アメリカ死にかけ物語』と、小野一光『人殺しの論理』を購入。帰宅して、ちょっと押入れをひっくり返して探し物。無事見つかってよかった。北村直販の発送を一件。入院着のズボンのホックが取れたので繕って、トートバックに持っていくものを詰める。くっきーマグカップも入れた。これで病室でコーヒーが飲める。荷物をまとめて家を出て、今日は夕飯をボイコットしたので好きなものを食べれるんだけど、何しようか悩んだ結果、病院食では絶対食べられないものを食べたくて駅前の日高屋でひとりで野菜たっぷりタンメン麺少なめを食べた。ケミカル調味料が身体に沁みた。おいしかった。病院食は絶対化学調味料とか使ってくれないから、体がケミカルを欲していた。店を出て再び病院へ戻る。病院暮らしは一日100歩も歩かないので確実に運動不足なので、急な団子坂登るのもなんか楽しかった。普段は歩くのも坂登るのも嫌いなのに。精神安定のためにも適度な運動は必要だ!部屋に戻ると、向かいのベッドのかわいい声の寝たきりのおばあさんに面会で旦那さんがきていて、そのやりとりがこれまたかわいくて和む。「さみしかった?」「さみしくないわよ。お父さんこそひとりで大丈夫?」「あーおしっこしてえな」「尿瓶かしましょうか?」「こんなのちんちん入らねえよ」「見え張っちゃって!十分入るでしょ」なんて言い合ってて、すごくきゅんとした。こうゆうおじいさんおばあさん、憧れるなあ。今夜は高円寺円盤で北村早樹子ビデオコンサートが行われている。月例ワンマンの日だけど入院してていけない旨を伝えたら、店主田口さんが過去のわたしの映像を掘り返してくれて急遽催してくれた。20歳の円盤初登場時のライブなんかが出てきたそう。恥ずかしいけど、わたしも見たかったなあ〜。

12.15土
6時起床で点滴。朝食はがんもの煮付、変な味のにんじんともやし、味噌汁。相変わらず食欲が出ない。が!今日からはコーヒーが飲めるのである!デイルームのポットでドリップして病室で飲む。久しぶりのコーヒー、うまい。午前中、感染症科の先生が来る。この先生、何故かわたしが西成好きなこと知ってて、「身体のためには行かない方がいいですよ、西成の結核率は他の地域の何十倍も高いといわれてて、北村さん持病で免疫抑える薬飲んでるから感染しやすいから危険です」と言われた。がーん。そろそろドヤが恋しくなっていたのに。しばらくおあずけか、とゆうかもしかしたら一生おあずけなのか?いやーっ!まあそんなことゆわれてもこれからも行くでしょう。お昼ごはんはブリの照り焼き、なすの煮物、しめじと青菜なわさび和え。わさび和えが思いのほかおいしかった。午後の点滴を終え、3時からシャワーの予約をしていたので、入院後初のシャワー。10日ぶりのシャワー。点滴の針は抜けないからぐるぐる巻きにしてサランラップ巻いてテープで止めて入ったのだけど、案の定水入ってきてびしょびしょにしてしまった。夜ごはんはチャーハンだったのでわーいと小躍りするも一口口に入れて唖然…一切の味がしないんである。病院食は全体的に味がうすいけど、そんなどころじゃない。大袈裟じゃなくほんとに味がない!なんとかスープで流し込んだ。夜はテレビで久しぶりにイッポングランプリを見た。くっきーの背中にコブできるの三段落ちで爆笑。しかし病室なので声を殺して笑った。10時に消灯で部屋の電気消されるんだけど、テレビも10時以降禁止なのか?イヤホンだから音は出ないけど、画面光ってるのばればれだから叱られるかも?いつもこわごわ見ている。

12.16日
6時起床で点滴。8時から朝食、今日はパンが出た!パンとコーンスープ!普通の味無しロールパンだけど久しぶりのパンなので沁みた。午前の点滴終えて、唯一wifiが入る3階の患者サロンにいき、ユーチューブを見てだらだら。この患者サロン。パソコン開いてる赤いチョッキのじいさんと、スマホゲームしてる妊婦ぽいおねえさんがいつもいる。今日もいた。お昼ごはんは、カレー!しかしこれが調理実習で失敗したような味のカレーで、要するにカレー粉が少なくてあんまりカレーの味がしないんである!がーん。昨日のチャーハンといい、今日のカレーといい、もしかして給食のおばちゃん、料理下手なんか?という疑いが。この給食、ただやったらこんな文句はいいませんが、実費で一食あたり450円も払っているんである!三食で一日あたりなんと1350円!なのでこんなに文句タラタラなんである!だってわたし、普段の一日の食費、500円とかそんなもんよ?それを、強制的に1350円も払ってこの始末かーい!とゆう怒りがふつふつ湧いてくる。食べ物の恨みはなんたらかんたらてゆいますしな。ごはんのあとは点滴しながらベッドで読書。『人殺しの論理』と『アメリカ死にかけ物語』を交互に読む。

アメリカ死にかけ物語

アメリカ死にかけ物語

『人殺しの論理』は全員死刑の北村孝紘、北九州監禁連続殺人の松永太、尼崎の角田美代子となかなかアツいラインナップで燃えた。点滴のあと、久しぶりにパソコンを開き、しばらく休んでいた小説執筆の続き。あんまり筆は進まなかったけど、久しぶりにちょっと生産的なことをしたので気持ちが満たされた。思えば入院して以来、生産的なことを全く出来ておらず、ただ暇をつぶすためだけに本を読みちらしていただけなので、読書もあまり身になっていなく、本当に、寝て起きて点滴して飯食って屁こいてるだけの、本当に生ける屍のような怠惰っぷりで、時間だけは無限にあるのに何故かひとつも生産的なことに食指が向かなくてこのままどうするの?って感じ。病院って、すべてのやる気を萎えさせる変な魔法でもかかってるのか?とか思ってしまう。まあ、全部気の持ちようで言い訳にすぎないのは自覚しております。夜ごはんは生姜焼き、きんぴら、すまし汁。昼のカレーに比べたら味があったのでおいしかった。向かいの寝たきりのおばあさん、今日が66歳のお誕生日だったらしく、夕飯がお誕生日膳だったらしい。病室で誕生日か〜淋しいもんだけどわたしも明日は我が身なので人ごとじゃないね。この声が可愛い寝たきりのおばあさん、最近ストレスからか独り言でぶつぶつ悪態をついていてちょっと怖い。ナースコールしてもなかなか看護婦が来ないと「なにしてんだよ、だらしね〜なあ〜」とか薬持ってくるといって忘れられてたときは「なんだよ頭悪すぎるだろ!」とかぶつぶつ言ってて、まあみんな入院ライフ辛いからストレスも溜まってるし、こうやってどんどん化けの皮が剥がれていくんだろうなあと思うと、笑えない。わたしもいつか独り言言い出すのかもしれない。