8.13〜19日記

8.13月
朝から普通に労働。お盆なのでめちゃくちゃ混んで疲労困憊。正直お盆舐めていた。帰ったらポストにナックルズが届いた。隔月で連載させていただいている「北村早樹子の極女入門、ヤクザなんでもQ&A」今回のテーマは掟! ということで、気になるヤクザの指詰め事情なんかを師匠鈴木智彦先生にお聞きしております。夏の下世話読書にはナックルズがもってこい、わたし以外のページもおもしろページだらけなのでぜひ買って読んでね☆

8.14火
朝から普通に労働。1か月くらい前から入った新人ちゃんは23歳くらいの品のいいお嬢さんなのだけど、ものすごくピュアな子すぎて2日に一回は泣いている、職場で。今日は朝から目が腫れているので病院に行くといって3時間遅刻してきて、出勤してきたと思うと既に泣きかけで、30分もしないうちに泣きだしてしまい(注:別に誰かが泣かしたわけではない)結局事務所に閉じこもって1時間くらい泣いて、そのまま早退していった。泣きに来たの? という状態で、こちらも暇なら慰めてあげれるけれどあいにくお盆真っ只中でこちとら糞忙しくそんなヨシヨシしてあげれる時間なんてなくって、もう、どうしたらいいのか? しかし泣かれるとほんとにどうしようもない。泣かした記憶もないのになんか罪悪感に駆られるし。泣き虫ってずるいね。仕事終わって夕方、小田急に乗って下北沢。急行とまるけどあえて各停で行く。5年前くらいまでわたし参宮橋〜代々木八幡近辺に住んでいたので、ゆっくり町の景色を車窓から眺める。しかしこの辺りの景色もずいぶん変わった。代々木八幡は駅自体が変わった。下北について、南西口から出てバブーシュカへ。何度もライブさせてもらった可愛い喫茶店&雑貨店&ギャラリーのバブーシュカが今週で閉店。なので最後にお別れをいいに来た。ら、最後だからものすごく大繁盛で、お客さんひっきりなしに来ておられる。すごく忙しいのに、アツ子さんも金魚さんもみんなに心のこもった丁寧な接客をしておられて感動。ハネーケーキのコーヒーセットを頼んで最後に店内を見納め。カウンターにはアツ子さんの絵のコーナーがあって、金魚に乗った猫のハルオくんの絵がめっちゃくちゃ可愛かった。バブーシュカは、アツ子さんの個展の度にワンマンライブをやらせてもらっていて、アツ子さんは何枚もわたしの絵を描いてくださっていて、いつもアツ子さんの絵を見て歌っていると何故か涙が出てしまい、普段泣きながらライブするとかわたし絶対ないのだけど、アツ子さんの絵を見ると無条件に泣いてしまう、そんな思い出。この日もアツ子さんの絵を見て、アツ子さんと少しおしゃべりしたら何故か泣きそうになってきて、隠すのに必死だった。職場で泣き虫に苛々していたので簡単に泣くわけにはいかない。最後のハネーケーキは金魚や鶴のクッキーが乗っていて(店主つるさん、従業員金魚さんをお皿の上に表現されている)可愛くておいしくて泣けた。次から次にお客さんがいらしてるので長居はご迷惑と思い、ささっと食べてお会計。最後に今まで委託してもらっていたアルバムたちを棚から引き上げて帰路。

8.15水
そうだ、ストリップを見に行こう! と奮起して、ひとりではるばる横浜日ノ出町へ。電車を乗り換え乗り換え、横浜ロック座に到着。入ると既に立ち見もぎっしりの大繁盛ぶり。平日の昼間からすごー。あ、お盆やからか。お目当ては本物のバレリーナあがりの踊り子さん、みおり舞さん。一回目はみおり舞さんのストリップデビュー作?の、蜘蛛の糸がテーマな感じの美しい作品だった。わたしはそんなに泣き虫ではないつもりなのだけど、女性の美しい身体表現を見ると感極まって泣いてしまう癖があり、よってストリップ劇場でよく泣いている。今回もしょっぱなからみおり舞さんを見ながら、立ったまま鼻水ずるずる啜って泣いてしまった。真っ白いチュチュを着て少女のような華奢な体躯でバレリーナには狭い舞台の上を跳ね回り、盆の上でポーズを切るみおり舞さんはもうどこからどう見ても120%美しく感動的やった。一回目が終わったらお帰りになる人がちょいちょいいたので無事席をゲットし、座ってみる。最前のど真ん中に、ストリップ劇場でよく見かけるおじいさんがいた。二回目、みおり舞さんの一個前に出ておられたMIKAさんという踊り子さんが、天井からフラフープのようなのを吊るしてそれにぶら下がりながら舞う演目をやっておられて身体能力の凄まじさに度肝をぬかれた。二回目のみおり舞さんは、水兵さんの恰好で楽しく踊る、夏らしくキュートでファニーでゴキゲンな演目。みおりさん、楽し気に奇声をあげながら踊りまわっててめちゃんこ可愛くて、最後にはストリップでは本当はご法度な、セリフまでしゃべっておられて、ほんの10分〜15分くらいの間にストーリーがあってすごく楽しめた。こんなのもありなの?! って感じ。ストリップって本当に踊り子さんそれぞれのセンスと技量でとてつもないことが出来ちゃう、尖がったショーだなあとしみじみ思う。三回目も見ようかと思ったけど、場内冷房がきつすぎて、カーディガン羽織ってるけど意味ないくらい極寒だったので我慢できずそとに出てしまった。帰って家のベッドの上でひとりストリップのポージングを真似して遊ぶ。ストリップを見たあとはいつもやってしまう。ポーズ切るのって身体柔らかいだけじゃだめで筋力とバランス力ないと出来ないから意外とむずかしくてすぐひっくり返ってしまう。でも真似っ子たのしい。

8.16木
9時すぎに家を出て、今日は朝から東京地裁へ。またしても裁判傍聴へいくのです。裁判はだいたい10時からはじまるので、9時45分くらいに地裁に入り、本日のメニューを見てスケジュールを組む。しかし今日はお盆やからか行われる裁判自体の数が非常に少なくて、おもしろそうな罪名もなくてハズレ気味。午前の一本目、強制わいせつ。酔っぱらって飲み屋で女性にわいせつな行為をしたという罪で裁かれていたのだけど、序盤からつまらなそうな空気だったので途中で退席して、2本目、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不慮行為などの防止に関する条例違反。この糞長い罪名、なんのことかと申しますと一言でいうと痴漢です。被告人は白髪のカッパ禿げの60代のおじいさんで、西武池袋線車内で女性の臀部に股間を押し付けたり、指で股間や陰部を撫でまわすなどをして現行犯逮捕。ちなみに前科7犯でこの度8回目の逮捕、という痴漢の超常習犯。おじいさんは定年退職してから毎日暇で、しかし朝は早く目が覚めてしまうので、毎朝痴漢目的で電車に乗っては痴漢行為を繰り返し、ついでに池袋まで出て西友で飼い猫のエサを購入し、マクドナルドで朝ごはんを食べて帰る、というのが日課だったとのこと。自分で「痴漢依存症です」とゆっておられ、確かに病気なんやろうな〜と思い、おじいさんは自分でケースワーカーさんに相談もしたことあって病院を紹介されたらしいのだけど、その病院に行くには毎朝通勤ラッシュの電車に乗らないといけないので、そこできっと痴漢をしてしまうと思うとなかなか腰が上がらず病院に行けてませんでした、とゆっていた。おじいさんは独身で無職で孤独で、「あなたこれだけ繰り返しているのだから、また同じようなことしてしまいますよ。誰か面倒を見てくれる人はいないんですか?」と検察官に聞かれると「そんな人がいたらこんなことにはなってないです。彼女がいた10年前まではこんなことしようと思ったことありませんでした。誰もわたしの心の深いところはわかってくれません」と泣き出し、なんかおじいさんの孤独を思うと若干同情してしまう自分がいた。おじいさんは仕事もなく、交友関係もなく、社会から完全に切り離されてしまって宙ぶらりんの生活でとにかく孤独で、唯一社会との接点を持てる行動が痴漢行為だったのやろうなあと思うとなんだか切ない。最後に、「あと少し寿命があるので、猫たちと一緒に社会の端っこで細々と生きていきたいです」と言っておられて胸が痛んだ。こんな、しょうもないといえばしょうもない痴漢おじいの裁判でも、ひとつの人生劇場を見られる、裁判ってやっぱりおもしろいなあと思う。昼休み、はじめて東京地裁の食堂へ行ってみた。ここは裁判官や検察官弁護士も利用するけど傍聴人も利用出来る食堂。400円のラーメンを食べた。普通の学食にあるような、まずくはないけどおいしくもない普通の中華そばやった。食べているとテーブルにゴキちゃんが出現し、相席していたお兄さんと共に格闘するも逃げられた。午後からはストーカー裁判を見ようと思ったけどこちらは被告人も不在のよくわからない裁判だったのでやめて、不正競争防止法違反、という聞いたことない罪名の法廷へ。被告人は浅黒く日焼けした恰幅のいい六本木とかにおりそうな30代の男性ふたりで、リクルートコムという名前であたかもリクルート社と関係あるかのように見せかけて求人サイトを運営し、被害者から多額の掲載料を騙し取っていた、みたいな事件だったのだけど、そんなにおもしろい裁判ではなかった。けど被告人のうさん臭い感じ、このケの臭い、我が職場のお客さんにもよく見かけるアレやな〜と思ったりした。もう一本覚醒剤の裁判を見て帰ろうかと思っていたのだけど、謎の頭痛に襲われていたのでやめて帰路。帰ってしばらくベッドに寝転がり、夜ふと思い立って新曲のデモを録音しはじめるも、録音機が変で音がずれていく謎の症状が出てやる気をなくして寝た。

8.17金
朝から普通に労働。またしてもOさんから冷蔵庫にお届け物の梨が。しかも今回は高級な二十世紀梨。ありがたい。金曜はいつも一緒に働いているおじいちゃんSさんはおやすみなので、社員のW田氏とタッグ。W田氏は色々男として問題があるけれど、無類の喫茶店マニアなので喫茶店談義をするにはたのしい。仕事終わって帰路、急に嘘みたいに涼しい。晩夏って感じ。夏の終わりって問答無用に切なくなるのであかん。特に今年はあかん。ここでひぐらしなんかに鳴かれたりしたらもう本格的にあかん。

8.18土
朝から特選小説の原稿を書く書く書く。一区切りして、お昼から本を持って御徒町。喫茶丘に行こうとしたら満席だったので諦めてベローチェ姫野カオルコの新刊『彼女は頭が悪いから』を読了。

彼女は頭が悪いから

彼女は頭が悪いから

これ、実際にあった東大生が集団で強制わいせつしていた事件が元になっている小説で、なかなか強烈なおはなしだった。多種多様な見下しの描写がもう、きっつーって感じ。でも、あるわ〜って感じ。この手の強制わいせつ事件って、わたしは基本的に異性の家に入った時点で、そらもう、そういうことやろって思うので被害者に同情はしないタイプなんやけど、こうやって小説でそれぞれの視点からねっとり描かれると、しみじみときっつい事件やな〜という感想になった。強姦云々だけじゃなくて、東大生の自意識が気持ち悪くて怖い。読み終わって夕方からギャラリースペースしあんにて、泉鏡花原作・桑原茂夫演出・劇団唐組出演の『海神別荘』を観劇。リーディング公演ということだったけど、しっかり作りこまれた1本のお芝居を見たような後味でたいへんおもしろかった。泉鏡花って言葉遣いがむづかしいから読みにくいんだけど、さすがの唐組のみなさまが演じられると、いい意味で大衆に寄り添うお芝居になっていて、笑いどころも泣きどころもあって楽しめた。藤井由紀さんの、海神と結婚して蛇身になってしまったウエディングドレス姿が美しくて悲しくてうるうるしてしまった。最後の「女の行く極楽に男は居ない、男の行く極楽に女は居ない」というセリフにどきっとした。終わって、何故か中打ち上げにもお邪魔することになり、のこのこついていく。桑原茂夫さんと坂口弘の話で盛り上がったりしてたのしかった。家にひきこもっていると絶望感に浸かって死にたい気持ちになるけど、おでかけするといいこともあるものや。

8.19日
朝から普通に労働。よく泣く新人ちゃんは飛んだらしい。まあそんなことやろうと思った。忙しくパタパタと働いた。帰って特選小説の原稿ともう一回にらめっこ。窓をあけてすごしているから、大家さんちの生活音が筒抜けなのだけど、夏休みでキッズたちが集まってきているのか非常に賑やか。柄の悪い罵詈雑言が飛び交っていて、足立区だなあと思う。