3.12〜18日記

3.12月
朝から普通に労働。帰宅するとポストに不在票が入っていて即電話。夜、ついに写真集が出来上がってきた。わーい! と思うのも束の間、ものっそい重い段ボールが3箱分も届いてちょっと我ながら作りすぎたかも感が……それに伝票にサインするや血の気が引く事件が発生。伝票の件名が「北村早樹子写真集」になっていたのである。そして受取人北村早樹子って! どう考えてもわたし、痛い奴でしょ! まあ自分で自費出版したわけだから、何も間違ってはいないのだけど。入稿したときのタイトルがそのまま件名に書かれてしまうなんて! わかってたらもっと嘘でも当たり障りないタイトルにしたのに! 絶対佐川の兄ちゃんに、どんな顔した女やねんって嘲笑われていたことでしょう。赤面しながら受け取って、箱をあけて無事の仕上がりを確認。よしっとビニール包みをはじめる。そう、この写真集はビニ本仕立てで売り出すので立ち読み厳禁なのでありまーす。ひとまず15日のライブで売り出す分だけ包み終えて寝た。

3.13火
朝から普通に労働。平日なのに、従業員は平日の人数しかいないのに、めちゃくちゃ混んだ。仕事の出来るH田君とのタッグやったから無敵やろうと思ってたのに全然回らなくってヘルプを呼ぶ始末。一体なんでこんなにお客がくるのや。ヨボヨボになって上がって、池袋へ。今日は芸劇に若林美保さんが出るお芝居を見に行くんである。その前に時間があったので新文芸坐によって小林勇貴オールナイト上映の前売りチケットを買いに行った。池袋の地理をあんまりわかっていなかったから、新文芸坐から芸劇の方へ出てくるのに30分くらい歩く羽目になってしまった。変な地下道を通ったのが失敗やったのかも。疲れた。でも時間には余裕で間に合った。今日は寺山修司原作の『奴婢訓』を観るのである。芸劇ロビーで飯田さんと落ち会って、客席へ。舞台美術がめっちゃかっこよくってさすがの宇野亜喜良! 幕が開くや早速若林美保さんの吊りのパフォーマンスで、大きな会場のかっこいい美術セットの中で舞うわかみほさんが死ぬほど美しくって、宙に上がった瞬間から号泣が止まらない感じ。でも途中平田敦子さんが出てきたところは大爆笑してしまった。そしてラストのわかみほさんのエアリアルシルクのパフォーマンスがこれまたため息が出るほど美しくって号泣。泣いて笑って忙しい観劇だった。わたしは美しい人を見ると泣いてしまう病気にかかったのかもしれない。いや、でも今日のわかみほさんは本当にめちゃくちゃ美しかった。終わってわかみほさんに泣いて化粧ぐちゃぐちゃの顔のままご挨拶して、飯田さんと近所のふくろという飲み屋に行った。そしたらママさん? か只の従業員かわからんけどお姐さんがすごい江戸前のかっこよさやって、今日のお芝居の中に出てきてそうな出で立ちと立ち振る舞いで、「あのお姐さんかっこよくない?」とこそこそ盛り上がる。途中でお姐さんを呼ぼうとすみませんというも、何故か呼んでいない隣の席のおっさんの方へ行って、じーっと手を見つめて、「手あげてるわよね。紛らわしい動きはやめてちょうだい」と怒ってるのかおちょくってるのか? 謎の応対をしていて、飯田さんとふたりで震える。梅水晶という食べ物をはじめて食べた。小説『裸の村』の飯田さんパートの部分に出てくるんだけど、わたしはその小説の中でしかしらなくて、どんな食べ物か見て見たいといって頼んだら、梅味のコリコリしたしょっぱい食べ物(鮫らしい)で、なるほど日本酒のアテって感じ? でも辛くておいしかった。けど辛すぎて残してしまった。そこで劇の感想などを話しつつ、概ね感想は同意やった。そして23日のIKAZUGOKEライブの打ち合わせをしていたら「もう閉店」とお姐さんにいわれたので、怒られる前にそそくさとお会計して店を出た。

3.14水
うーん、行こうか行くまいか、悩みながらでも行くなら今日しかない! てゆうんでいざ行こう川崎へ! 川崎ロック座へ! ちょっと前にぼんやりツイッターみていたら、元バレリーナ出身のストリッパーがいるとのことで、これは見ておかねばならんね? しかも香盤表を見たら倖田李梨さんも出られるとのことだし、なんだか2か月に一回くらいの周期でストリップを見たくなるみたい、わたし。ということではるばる川崎ロック座へ、ひとりでやってきた。東海道線で来たら、出口を間違えてしまい、ものすごく迷ってしまって、到着したら、もう、今、まさにボレロの音楽が流れている。急いでお金を払って会場へ入る。すると今まさに、お目当てのみおり舞さんという方が、一糸纏わぬ姿でボレロを踊っておられた。このボレロがめちゃくちゃかっこよくって美しくって、昨日に引き続きわたしは号泣。最近涙腺ががばがばで困るわ〜。しかし本当に美しかった。これが本物のボレロなんじゃね? と思った。ストリップ小屋ではじめて「ブラボー」という歓声を聞いた。(バレエではめちゃんこ素晴らしいものをみたら観客が「ブラボー」と声を発していい、定番の掛け声なのです)途中からだったけど、大感動した。ストリップというのはだいたい6人の踊り子さんがそれぞれ順番に一人15〜20分くらいの演目をそれぞれこなしていき、というのを一日4まわしやるのだけど、このボレロが2回目、演目のラストだった。のですぐに3回目がはじまった。3人目までは正直あまりピンとこず。そう、わたしはストリップだったらななんでもいいというわけではない。そもそも女子なので、お股を広げてくれたらオッケーみたいな感覚は皆無。お股よりも、演目の面白みや芸術性重視でそれを観にストリップに通っているのであります。4人目が倖田李梨さん。李梨さんの踊りはとにかく元気が出る。李梨さんも結構型破りな踊り子さんかと思われる、だいたいみんな、着衣で舞ってだんだん脱いでいくスタイルが定番なのに、李梨さんは逆再生の演目、即ち全裸で果てているところからはじまる演目をこの日もやっておられた。そして李梨さんの次に現れた、はじめてみる踊り子さんがこれまた素晴らしかった。武藤つぐみさんという踊り子さんで、少女か少年にしかみえない体型、で、踊りもすごくアバンギャルドで、確実にストリップの域を超えていた! 15〜20分くらいの演目中の半分以上を、ひたすらぐるぐる回るだけの踊りなんだけど、これも謎の美しさで、気が付いたら泣いていたわたし。あんなに長時間回り続けて身体は大丈夫なの? とも思ったし、彼女の少女のような少年のような身体の殆どが筋肉であるというのが最後に分かった! これはマッチョになるよ! 言葉に出来ない美しいものを見た。そして3回目のみおり舞さんの演目は、アイリッシュの恋占いという、これもバレエっぽいステップ、というか殆どバレエを見ているようで、ボレロの迫力とはまた違う、可愛らしく美しい演目だった。1〜3人目までは見なくてもいいかなってことが発覚したので、外出券をもらって一旦外へ出て、川崎の裏路地をぶらつく。安ホテルや銭湯なんかがあって、なかなか味わい深いいい町だな〜と思う。ベローチェに入って一服。1時間後に戻ると、3人目がちょうど終わるところで4人目が倖田李梨さん、李梨さんはカンパーイの演目をやっておられて、これまた元気が出る踊りだった。5人目があの武藤つぐみさんという謎の少女のような少年のような女の子。今度は客席後ろの扉から虫とり網もって麦わら帽子現れて、蝉の鳴き声の中、客席じゅうを蝉とりしながらひと舞いして、今度は「みかん」と書いた段ボールみかん箱を持って現れて、少年の夏休みのような演目。最後にはエアリアルシルク? わかみほさんがやっておられる宙吊りのくるくるまわるやつをやっておられた。同じ宙吊りでもわかみほさんの見せ方とは全然違うくて、どっちもいいなあと思った。そして最後がみおり舞さんの牧神の午後。牧神の午後はもともとニジンスキーが踊った古典バレエの作品で、日本ではバレエ作品としても上演されることはあまりない貴重な変わった作品なのだけど、それをストリップ小屋で見れるなんてね? 牧神の午後は、牧神が岩の上で葡萄を食べていたら7人のニンフが登場して水浴びをしはじめてそれをみて欲情した牧神はニンフを誘惑しようとするんだが怖がられてニンフは全員逃げてしまって、最後のニンフが忘れて行ったヴェールを岩の上に広げて牧神が自慰をしながら終わる、というクソエロい話なんだけど、それをみおり舞さんは牧神の役もニンフの役もどっちもやりながら、最後は布の上で白い絵の具広げて身体に塗りつけて終わるという衝撃のラスト! めちゃくちゃ素晴らしかった。こんなストリッパーさんが存在しているなんて! とストリップの奥深さに触れた一日だった。わたしがこの世で今いちばん美しいと思う存在って、ストリッパーさんかもしれない。はるばる川崎まで見に来て本当によかった。

3.15木
大バンドライブの日。物販の量が日に日に増えていてもはやトランクがないと持ち運べないのでトランクを出して写真集を詰める。今更ですが、紙って思いですね。16時入りでリハ。なんだけどお勤めしているメンバーが多い我らが大バンド、リハに来れたのはわたしとキーボードの榎本さんのみ! これじゃなんのリハやねん状態でPAさんにお詫びしつつ、一応位置の確認やキーボードのセッティングをした。リハ終わり、だいぶ本番まで時間があるので、わたしはパソコンを持ってきていたので近所のガストに入ってドリンクバーで原稿書く。実は明日、大事な、そして楽しみな対談があって、それの草案を某誌の副編集長へH川さんへ送る。それからずっと書きかけで進んでいなかった特選小説の原稿もちょっと進める。19時くらいに店を出て、センター街の方のダイソーへ、バットを買いに行く。そう、大バンド時は必須のバットを持ってくるのを忘れてしまったのであります。無事バット売っててよかったけど、100円じゃなくて200円した。楽屋に帰って、バットのシールをはがそうと奮闘するも白いねちょねちょがどうしてもへばりついて取れない。半ば諦めていたら、榎本さんがハンドクリームを塗ったり色んな裏技を使って綺麗にしてくれた。榎本さんに感謝〜。スタートしたくらいから、メンバーが順番に楽屋にやってくる。ちょっと諸問題が発生して、もめていたところも、キクイさんがスタッフさんに聞いてくれて解決。わたしたちは出番はラスト。やはりリハが出来ていない不安に駆られ、対バンさんのライブはちゃんと見れず。前の対バンさんが終わってセッティング。はじめてやる会場で、しかもリハなしで乗り込みでやるのはやっぱ無茶やったかもだな〜というのがわたしの感想でしたが、とはいえ、ライブは回数を重ねることが大事だなあと思った。思い返しても反省の弁しか出ません。うーむ。バンドって大変っすな。そんな大バンドでしたが、見に来てくださった方、ありがとうございました。そして写真集も無事初売り出来ました。買ってくださった方ありがとうございました。





(撮影・市川力夫)

3.16金
昨日まであったかかったのに、またしても冷たい雨。昼から池袋で某雑誌Nの対談。実は来月から新たに連載がはじまります! 内容はまだ内緒ですが、わたしの大好きな作家さんと毎月対談出来るオモシロ企画、実にN誌らしい企画です。というか憧れのN誌(厳密には増刊号ですが)で連載! ありがたすぎるー! そしてこの企画にご快諾いただけたS木さん、ありがたすぎる〜。お忙しいS木さん、対談中も原稿催促の電話が鳴り、2秒で切り上げるその瞬速の応対が怖くて厳しくてかっこよかった。ロープーだ〜って感じ。たのしく対談を終え、対談後はパルコのレストラン街でS木さん、S木さんのカメラマンCさんとでごはんを食べて、ごはんのあとはカフェでコーヒーを飲んで超超たのしい日だった。こんなに至れり尽くせりだったのだから、絶対おもしろい記事にしなければ。対談記事をまとめるというはじめての企画だけれど、がんばろう。

3.17土
朝から電車をいつもの反対側へ乗って、柴又の喫茶セピアへ。今日はちるめらさんとキャンディ・H・ミルキィさんのイベントのお手伝い。11時入りで会場へ着くも、本日のホスト役ちるこちゃんは忘れ物をして取りに帰っておられるとのこと。緊張しつつもキャンディさんと店主のマダムとおしゃべりする。キャンディさん、きさくで愉快なおじさんでよかった。喫茶セピアのマダムも去年わたしが友達とお茶しにきたことを覚えててくださって、話せてよかった。30分くらいでちるめらのおふたりが到着し、準備。座布団を敷いたり設営をお手つだいしてたらあっという間に会場時間。わたしもキャンディエプロンをつけてスタンバる。お客さんはもう下にいっぱいきてるのに全然上がってこない。下の階の喫茶セピアの可愛さに立ち止まってしまっている模様、そうだよね、わたしも去年はじめてきたときはあまりの可愛さに七転八倒して大変だった。開演は少し押す形で、わたしは受付係、入場料を受け取ってお名前を聞いたり、物販を売ったりする簡単なお仕事。可愛い子ども部屋にぎっしりの大人が埋まり開演。ちるめらのキャンディ・キャンディ演奏会からの、トークショー。キャンディさんの紙芝居もあっておもしろかった。キャンディ・キャンディわたしは読んだことも見たこともないけど、これを機に読みたいと思ったけれどもはや絶版で出回っていないという悲しみ。どこか漫画喫茶にあるんでしょうか。通って読み切りたい気持ち。イベント終わって、下の喫茶セピアでナポリタンを食べた。タコさんウインナがちゃんと乗っててケチャップが利いてて可愛くておいしい。正しいナポリタン。可愛いに囲まれて腹も満たされた一日でした。

3.18日
朝から洗濯して干して、調べものをいっこして、特選小説の原稿をまとめる。夜は錦糸町シルクロードカフェというところへ、近藤蛇口さん作演出でIKAZUGOKE相方飯田さんが映像と、音響照明オペをやっているお芝居『横殴りの成長痛』を見に行った。錦糸町、はじめて降り立った。蛇口さんは二回くらいお話したことがあって、興味深い人だなあと思っていたのでお芝居の初作演出をなさるとのことで期待していた。蛇口さんもはじめてとのことだったけど、主演のもりくんという方もお芝居ははじめてでしかも一人芝居という難しい挑戦。だがしかし、発声もたいへんしっかりしているし、身体も芝居の人っぽくて綺麗でうまかった。登場人物が少ないお芝居ってつまんなくなりがちだけど、一人芝居なのにつまんなく飽きなかったのは、こなれている感がこのお芝居のどこにもなく、ちゃんとずっと張り詰めていたからかなとか思った。相方飯田さんはパーペキな仕事ぶりをしていたし、蛇口さんの作風も要所要所に狂気を感じた。もりくん演じる主人公は演劇をやっていて、しかしいまいち芽が出ていなくて性格はやや潔癖で結婚していて、かなっぺという奥さんは格闘家で淫乱で、子どもがいて、お話は主に自宅の部屋を舞台に繰り広げられるんだけど、お弁当のおかずを地べたで拭きながら食べるところとか、金魚に話しかけるところとか、もしかして、かなっぺって金魚なの? という以前に、すべては妄想だったの? みたいな恐ろしさが残るお芝居だった。蛇口さんは詩人なので、セリフもリリカルでよかった。張り詰めたものを張り詰めたまま見せる、というのがいいなあと思った。て、何を偉そうに批評しようとしてんのわたし、という感じですね、すみません。演劇、またやりたいな〜と思った。