7.24〜30日記

7.24月
昼から飯田さんちに集まって、ブックレット会議。そう、今回出すIKAZUGOKEアルバムは、コンセプトアルバムなので、かなり込み入った伏線を自分らなりに張り巡らして作っていて、音源だけじゃなくブックレットの読み物を読んで、ほーなるほどーって、みなさんになってもらいたいなあって思って作っている。それの設定をふたりで色んな案を出し合って考える。すごく楽しい! ここにきて、ふたりで色んな別時空の物語を思いついてしまい、わたしも得意分野(犯罪、殺人鬼、猟奇事件など)のこととなるとノリノリで暴走気味になるのだけど、そういう枝葉の物語や設定、どちらが何を担当するかなどを考えてかなり盛り上がった。こういう時間がいちばん楽しい! だけど、三十路の女ふたりが平日の昼間から架空のヘンテコな物語の設定を考えてウヒョ〜と騒いでいる、なかなかお恥ずかしい光景である。。。だけど今更感もかなりある。ねえ。夜、飯田さんが小学校低学年の頃にお母様に読み聞かせられたという諸星大二郎の漫画を借りて帰る。わたしはほとんど漫画を読んで育ってこなかったのやけど、諸星大二郎を小学生のころから読まされてたなんて、本人は「ひどいトラウマだよ!」っていうけど、すばらしい英才教育やんか〜とうらやましい気持ち。

妖怪ハンター 地の巻 (集英社文庫)

妖怪ハンター 地の巻 (集英社文庫)

7.25火
朝から普通にバイト。特筆すべきことはない感じ。帰りにメガネやさんに行って、メガネがずれるのでネジをしめて耳の曲がる角度を調節してもらった。なんかたぶんこの2か月くらいわたし常にメガネずれていたと思われる。恥。帰って、早速昨日相談して担当を決めた、ブックレットの読み物を執筆。ついつい筆が乗ってかなりひどい物語を書いてしまってひとりでにやにやする。

7.26水
本当は朝から恵比寿の某所でばあさまたちと合唱の練習に参加するはずだったのだけど、朝からすごい雨&変な時間に気絶して寝坊、おまけに楽譜が見当たらず家じゅうを探してたら完全に1時間は遅刻する時間になってしまって、悩みながら家を出る。電車の中でC子せんせいからメールで、C子せんせいも今日はお休みしますとのこと、H代さんも今外国にいるので、まだ打ち解けてないばあさまたちの輪の中にひとりで入っていくのか、しかも遅刻してるし、とか思うとどんどん心細くなってきてしまい、すべてをあきらめて日比谷線仲御徒町で途中下車。お気に入りの喫茶丘でモーニングを食べて読書。しかしひさしぶりに雨がすごい。こんな雨の中でも、ばあさまたちはきっとちゃんと練習きてはるんやろうなあ、でもみんな渋谷区でご近所やとゆってはいたが。でも80超えたばあさまたちが行けて32のわたしが行けないほどの雨ではなかったはずや。と今更ながら反省しつつ、でも人見知りの北村さんが出てしまっているのも事実。反省モードで昼頃に帰宅。雨はちょっと弱まっている。家でわらびすこ舎仕事をやっていて、流通会社の営業担当さんに相談案件があったので相談。簡単にいえば、とある方の名前を引用したいときに、その方本人の許諾をとらないといけないのか?という問題で、担当さんのアドバイスでちゃんと事務所に許諾申請しましょうとなって、飯田さんと作戦を練る。わたしがひとまずお願いのメールを書いて、それを飯田さんに添削してくださいと送った。それからブックレット読み物その1の続きを執筆。やはり得意分野だとかなり筆が乗ってしまって、これはおもしろいんじゃない〜って思う気持ちと、ちょっといきすぎで読み手を選ぶかもしれないことや、本編とかけ離れすぎてるかなど、客観的にどうかわからないので飯田さんに送る。なんだかんだ、パソコンにかじりついていた一日やった。

7.27木
朝から普通に労働。今日は例の許諾申請の件で休憩中にも仕事するかもと思ってパソコン持ってきていて、ちょうど休憩中に飯田さんからの添削後のメールがきたので、それをしっかり頼らせてもらって書き直して、事務所さんに送った。わたしは思えばビジネスメールの書き方ひとつ知らずにここまでやってきてしまってて、だいたいは先方がもうわたしのパーソナルを知ってくださっていたりが前提だったりするので許されてきたのやろうけど、とはいえなんの知名度もない何の人だかもよくわからないわたしみたいな人から、いきなし許諾云々のメールがきたら普通は不審だから上に届く前に、事務のおねえさんとかにほかされるであろう。飯田さんはわたしと違って半年ほど社会人経験がある上に、今回ちゃんとビジネスメールの書き方をぐぐって添削してくれたらしく、本当に助けられている! ありがたく直してもらって書き直して、事務所の窓口に送信。お返事がくるかはわからないけど、とりあえずホッ。労働後、紀伊國屋書店海猫沢めろんさんの新刊『キッズファイヤー・ドットコム』を購入。群像に載ったときも読んだから二回目だけど、これはかなりおもしろかったので単行本でももう一度読みたかった。帰りの電車から早速読みだす。最強おもしろい。これは歌舞伎町のホストが突然ひとりで子育てをしなくてはならなくなって、頭の切れる主人公ホストは、まずこの子をゼロ歳児ホストとしてホストクラブにデビューさせようとするのやけど、これは敢え無く失敗。ホストクラブに通う姫たちは「わたしはここに夢を買いに来ているのよ」と怒ってしまって営業がどんどん傾いていく。困った果てに、ふと流行りのクラウドファウンディングシステムを知り、キッズファイヤー・ドットコムというサイトをオープン。すると炎上からどんどん広まっていって、テレビ番組からオファーが来たりして、どんどん伝説が出来上がっていき、奇跡の子が育っていくおはなし。めろんさんは実はわたし10年くらい前から知ってて、『ガール・ウォーズ』てアルバムのときは色々売り方とかを相談したりしててクレジットにも実は載せさせていただいているのやけど、めろんさんは確か出会ったときは家がない小説家やって、人の家を漂泊してはったイメージやけど、いつの間にかたくさん新刊を出しておられ、それも小説だけならず学術書っぽいやつとかも出しておられて、王様のブランチとかも出てたし、すごい。というか実際めっちゃおもろいお兄さんだし、文章もおもしろいし、しかもすごく色んな毛色の作品を書きはる方で、わたしは『愛についての感じ』の中の飛田新地のタマコちゃんを描いた純文学ちっくなやつが格別好きやったけど、今回は文体からしてもうちょっとラップみたいというか、リズムや韻をしっかり踏んでて読んでてかなり爽快! めろんさんは実際ホスト経験もあられるし、子育ても体験しておられたりするので、そういう生き様が全部昇華されてるってかっこいいなあと思う。ちょっと本筋から逸れたけれど、これは第二部はそのクラウドファウンディングシステムによって育った子ども視点のお話で、この子は常にドローンで24時間監視されてて、それをお金をだしてるパトロンたちはいつでもネットを通じてみられて、そんな風に育った子どもは6歳児ながらすごく頭の切れる子で、クラウドファウンディングの中に、エア家族プランというのがあって「死に際に手を握ってもらえる」というプログラムが組み込まれている故、6歳児にして、死を知ってしまう。そして、ぼくは死ぬときもみんなに見られて死ぬんだろうか、とか考えるようになっていき…みたいな色々なメカが開発されて何事もソーシャルになってしまってる昨今、ありえなくはないシステムで、しかしすごく残酷なことも教えられる、色々怖い本やった。でも超読みやすいし軽快なので、余計に残酷さが残る、すごくおもしろい小説やった。

キッズファイヤー・ドットコム

キッズファイヤー・ドットコム

7.28金
新文芸坐ですごい暗い映画の特集上映があるらしく、N釜さんに誘ってもらって熊井啓ていう10年前に死んだ映画監督の2本立て特集上映を見に行く。一本目は「日本の黒い夏 冤罪」というオウム事件の冤罪を取り扱った映画で、これはわりと最近ので(とはいえ2000年公開作品)遠野凪子(現:遠野なぎ子)が若くて可愛かったくらいしか残ってなくて、途中寝ちゃった。二本目の「サンダカン八番娼館 望郷」という映画がすごすぎてすばらしすぎて、ちょっとひさしぶりにガツーンと映画で喰らった感じがした。

わたしは全然しらなかったんやけど、昔は貧しい家の女の子は外国に娼婦として売られる「からゆきさん」というシステムがあって、その「からゆきさん」を研究している女性史研究家の女が、元からゆきさんで今は天草の部落の奥地の廃墟でひとりで貧しく暮らしているおばあさんの元に3週間共に暮らして取材する、という話なんやけど、わたしはこのからゆきさんという女性たちがいたこともしらなかったし、そしてそうやって売られたのに帰ってきたら親族はおサキが稼いだお金で良い家に暮らしてるのにおサキは四面楚歌で誰も助けてくれず、虫の湧くぼろぼろの家でひとり淋しく年老いて野良猫たちと貧しく暮らしている、そのおサキを田中絹代が演じていて、めちゃめちゃかっこよかった。真っ黒に日焼けしてるのか垢が溜まってるのかわからんけど、シケモクをキセルに差して何回も吹かして荒んでて、すごくかっこよかった。そして、こんな歴史があったことをこんなに堂々と映画にして、そして当時この映画はキネ旬1位、ベルリン映画祭銀熊賞、とかとってて、広く世の中に受け入れられてたのかーとか思うと感慨深く、あと、おサキの名前が偶然、北村おサキという、わたしかよ!という名前やって、そんなこともあって121分終始お目目ぱっちり大興奮して見た。教えてくれたN釜さん本当にありがとうの気持ち。しかし客席は見事におじいさんおばあさんで埋まってて(でも平日の昼間なのにかなり満席に近いぐらい埋まってた)トイレの列、だいたいみんな杖とか手押し車みたいなん押してるおばあさんばっかりでたぶんわたしあの劇場内で最年少やったんちゃうかな? とか思ったりした。終わってN釜さんが行きつけのスパイスとか輸入食品がすごく安く売ってるお店についていき、150円くらいのザクロジュースだけ買ったら、店主の外人さん気前よすぎで、賞味期限切れてるから、とかゆってスナック菓子を大量にくれた。そしてN釜さんに「今日はDVDはいらないの?今日は1枚50円、10枚買ったら1枚タダね!」とかゆいだして、N釜さんとDVDコーナーに行くも、何語かわからんし全部100%不正コピーなんやけど、おもしろそうっちゃおもしろそう、やけど中身の想像がパッケージからは全く出来ない! でもN釜さんは11本ちゃんと選んでいた。その後、これまた四川料理と韓国料理となんか異国の料理がごちゃまぜでお客も店員も日本人はひとりもいない感じの北池袋のごはんやさんに入って軽くごはん。ひつじの焼鳥(焼羊?)みたいなやつが一本88円とかで激安で、辛そうかとビビってたけど意外と辛くなくて食べられた。そこで映画の話や、最近の悩みなど色々おはなしし、N釜さんはT口さんから「俺の知り合いでいちばんのキチガイ!」と紹介されてたので心配していたのだけど、実はすごく空気を読むし、人間の観察眼がすごすぎて焦るほどで(例:この女優は前夜セックスしよったな、とか映画みててもわかっちゃうらしい)相手の話も聞いてくれるし、話してて楽しいし、温厚やし、すごく接しやすい方やった。わたしは今まで誤解していたよ、すみませんでした。だって、N釜さんの「カレー野獣館」とか一連の架空のゾンビ映画の対談小説とか、そのサントラとか、天才級にぶっ飛びすぎてて、円盤T口さんも脅かすし、絶対怖い人だと思っていた。ごめんなさい。ということですっかり友達になれた。最近数少なかった友達をひとりこの日記のおかげで失ったので(自業自得)、そしてN釜さんは本当に、大事だったお友達であり仕事仲間でもあった映画監督堀さんが亡くなったので、お互い新たにお友達が出来てよかっためでたし◎ その後、夜は飯田さんと飯田橋で待ち合わせして、飯田さんと飯田さんのお父様お母様と4人でお食事。というのも今日は神楽坂祭りというのをやってて、飲み屋さんとかの中にも阿波踊りの踊り手さんとかが回ってきたりする楽しい日ならしく、誘っていただいたのでありがたくお邪魔。しかしすっかり飯田さん家族の中にわたし一人他人が交じりこむという謎の家族ぐるみの交際をしていただいてしまって、わたしは自分の家族とほぼ絶縁状態なので、なんか不思議な気分だけど、飯田さんのお父様もお母様もとても愉快で楽しい方だから、もうすっかり馴染んでしまっている感じ。ありがたい。なんかすごくお洒落な神楽坂のバーで高そうなお酒を飲んで(わたしはジャスミン茶やったけど、あのジャスミン茶も何円だったかわからない…)そのあと、近くにミュージシャンのK澤M子さんが働いてるスナックがあって、そこも飯田さん父母はいきつけとのことで、はしごすることに。てきぱきと働くM子さんの気の利きようがすばらしくて惚れてしまった。カラオケはわたしは逃げたけど、飯田さんのお母様がオオカミ少年ケンのテーマを歌ってて面白かった。神楽坂のスナックは、綾瀬のスナックとも違うし、銀座のクラブとも違う、文化的だけど気取ってない感じで店内もかわいくて程よいお店だった。しかし何より、M子さんがかっこよかったねって、飯田さんと帰り道で言い合って帰った。なんか今日は色々と充実の一日やった。

7.29土
昨日も飯田さんと会ったけど、今日も飯田さんちへ。IKAZUGOKEアルバムを出すので、色々打ち合わせごとがすごくあるのと、あと単純に飯田さんと会いたいという公私混同もある。今日はアルバム&レコ発企画のチラシの打ち合わせをして、その後は母親教室ファイナルの打ち合わせをかなり綿密にやった。というか、我々がなぜこんな風に育ったかを分析しあって、そして次回8月25日は最終回なのでちょっと今までとは違ったまさかの要素を入れることになったので、それを作りこむにあたってかなり話し合った。とはいえ脱線もだいぶするから、気づけば今日も10時間くらい喋っていた。途中コンビニ行ったり、西友行ったりもして、結局は家飲みな感じになるよね〜。だけど家飲みだと、特に足立区だと物価が安いから、すごく安くつきますな。わたしはサンガリアのコーラを飲んでたので39円やった。飯田さんは西友の安いワインを買って、そしたらまた案の定コルクが開かず七転八倒したけど今日は30分くらいの奮闘でなんとか開いてよかった(前回は3時間くらい開かなかったし、コルク抜きや色んな文房具が片っ端から壊れて行った)12時くらいに自転車で帰宅。霧雨が降ってたけど、ちょうど涼しくなって濡れるのも気持ちよかった。

7.30日
朝から6月にちるこちゃんプロデュ―スでやったKAWAII OYUUGIKAIのDVDのパッケージを作る内職作業。こういう作業は嫌いじゃない。それからちょっと前に書いた小説をちょっと編集者さんに読んでもらえることになったのでもう一回見直したりして、あとわらびすこ舎仕事をしたりしてなんだかんだ結局一日パソコン仕事をしていた。はあ、しかし夏。突然旅に出たくなり、突然計画を立て、来週(もう今週)ちょっくらひとり旅に出ることにした。といっても近場でバスだけど。わたしは基本東京が好きだし、東京を離れる気はさらさらないけど、いきなり旅に出たくなる瞬間が最近ときどきある。けどこれはたぶん、現実逃避したくなってるのかもしれない。先週からちょっと色々、ただでさえ少ない友達を無くしたり(生きてるけど)プライベーツしんどいことが続いたし。