6.13〜18日記

6.13月
朝から普通に労働。のはずが、昨日までの濃厚な日々を引きづったままやったせいか、おもくそ朝から電車で寝過ごして気づけば代々木上原終点〜あわてて反対のホームで引き返す〜ぎり遅刻はせずに到着。しかし労働中は身体もだるいし節々痛いし、これは梅雨の気配なのか。朝、一緒に回しているおじいちゃんは最近週1しか会わないけどわたしの収入や医療費や生活を心配していくれており、「都営住宅に申し込んでみたらいいよ。優先的に入れるはず! 調べてみなされ!」と言われた。休憩は普通は本来40分なのやけど、気づいたら更衣室でわたし気絶してて、結局1時間も休憩取ってしまってみんなに平謝り。あああかん、あかんすぎる今日。と思いながら夕方仕事終えて、せめて元気が出るようにスイマーに行こうと奮起。そう、突然スイマーが閉店してしまうという恐ろしい情報が週末に入ってきて、わたしはかなりスイマーにお世話になってて、もう三十路にも関わらず現役ばりばりでスイマーの鞄や靴や財布や食器や文房具使ったりしてる人間なので、なくなってくれたら大変困るのであーる。だって、スイマーは安い。ニーズが小学生だからと思うのやけど、どれもこれも財布に超やさしく、そしてファンシーで可愛くてゆうことなし! の可愛い雑貨ブランドやったのに、なくなっちゃうなんて信じたくない。なので買い納めようと思っていったけど、既に品はあんまりなくなってて、ブラジャーとパンティの下着セット500円と、一枚100円のお花の形のお皿を三枚と、お薬入れにする小物入れみたいのを買った。靴は迷ったけどやめた。こんなけ買っても1000円。すごいねスイマー。そんな気持ちでスイマーの可愛いものにちょっと元気をもらって帰路。帰りながら、ふと、わたしのまだ買いたてホヤホヤの赤いアイホンさんを覗いたら、今日は全くブーンとゆってないことに気づく。普段絶対労働終わりにアイホン見たら、メールやLINEが何件か来てて(注:迷惑メールも含む)それが普通やのに、今日はなんも来てない。おっかしな〜と電車の中で色々探ってたら、突然急に、どばーっと防波堤が決壊したみたいにブンブン鳴り出して、LINEも32件とかなってて焦る。しかもその中には大事なデリケートな内容のメールもあって、それをわたしは全く読まずに丸一日過ごしていたことになり、途端に申し訳なくなって焦る。時差が出来ちゃったことを言い訳するのも変だし、それ以前の問題の内容やったので、しばし返信に悩み、悩んだ挙句あんまり気の利いた返信が出来ず。わたしはまだまだ人生の経験値が足りないお子ちゃまやと大変反省した。ああむつかしい。大人ってむつかしい。最近わたしを知った方は、北村さんて意外と社交的じゃんって思ってらしゃると思うのですが、これ、この1、2年の話なので、そう、三十路を超えてからの話で、それまでは貝のような、喋らないし人見知りしまくるめんどくさい子だったので、まだ人との距離の取り方とか、人を紹介したり、人に紹介されたりしたときの振舞いが全然わからない。しかも、オトナの世界には隠さなければいけない嘘もたくさんあって、わたしは自分のこととなると基本、それがどんな最悪な事実であっても、嘘で知らぬが仏にはなりたくない、真実を受け止めたい派やのやけど、世の中はそうは回っていない。やはり、潤滑に社会を処世してゆくには、そういった暗黙の了解の嘘を上手に使って乗り切っていかねばならんのやとたいへん勉強になって反省した一件がありました。ところでわたしのアイホンさんは急にどうしたんやろう。メールも勝手に受信しなくて、こっちから自分で更新しないと届かない。困った。

6.13火
今日はまず昼間から呪殺祈祷僧団のパホーマンスを経産省前に見に行き(ちょっと遅刻したけど)雨の中、揃いの黒装束を着て、リーダー上杉清文さんを筆頭に、超濃厚な面々がお経を読んだり名曲「海つばめ」を歌ったりして、かっこいい胸アツパホーマンスを拝見。その後、みんなで表参道へむかい、今夜はわたしは青山ブックセンター末井昭さんとトークショーがあるので、そのトークショーに恐ろしいことにこの呪殺祈祷団の面々がほぼ全員きてくださるとのことで、うれしいけど怖い! 入り時間まで2時間ほど、隣のビルのめがみやという居酒屋で錚々たる強烈な面々と飲んだ。ご病気をされてずっとおやすみしておられた秋山道夫さんという方とはじめてお会いしたけれど、話には聞いていたけれどすごい偉業をなしてこられた方で(この方はお坊さんではない)、でもニコニコとフランクに接してくださり、あとメニューの頼み方が大変うまく、料理のとりわけまでやってくださる気の利きようで、本来いちばん年端のいかないわたしがやるべき仕事を全部さささとやってくださって、恐縮やった。連合赤軍からレバノンへ逃亡して云云かんぬんでうまいこと帰国し、今は映画監督をしておられる足立正生さんともはじめてちゃんとご挨拶しておしゃべりした。TACOの山崎春美さんとかもいるし、もう色んな意味で怖すぎる軍団に交じり混んでしまったけど、でもみんなやさしくて狂っててずっと楽しかった。みなさんより少し早く抜けて、青山ブックセンターへ。チラシを席に並べたり諸作業をして、控室へ案内してもらい、末井さんと平凡社の担当編集Y田さんもいらして、しばし打ち合わせ。といっても、もう開場していて、あんまり打ち合わせもなく、そのまま壇上へ上がる形になったのやけど、なんやかんやでそこそこおもしろい90分になったのではないでしょうか? 一応、チーンて会話が止まった時に助け船を出してくださるよう、司会に編集者のY田さんが入ってくださってて、その安心もあってわたしは結構のびのびとおしゃべりさせていただいた、けど、ちょっとでしゃばりすぎやったかなあとあとあと反省した。たぶん客席は末井さんのファンの方が大半であったと思うので、突然よくわからん教養のない女が出てきて、きっとお前誰やねんって思っていらっしゃったでしょう。しかし、みんな温かい目で見守ってくださってて感激でした。本当に話が尽きなくて、あっちう間に90分が終わり、質疑応答してたらちょっとオーバー気味なくらいの盛り上がり、だった気がします。わたし、作家さんのトークショーってどんなものか全然わからないので、あんな感じになってしまたけど、ほんとはもっとインテリジェンスを匂わせるようなアカデミックなトークをするものなのでしょうか。末井さんは、わたしがヘンテコなこと口走ってもなんでも受け止めてくださる方だったので、その大きな胸に飛び込む気持ちであれこれ質問したり、離婚あるある結婚あるあるを話せて、個人的にはとても楽しかったです。お越しくださった方、そしてはじめて見た変な女の本をお求めくださった方、本当にありがとうございました。青山ブックセンターにはまだまだ大量に小説『裸の村』が残っておりますので、ぜひお手に取って見てください! しかし久しぶりに青山ブックセンター本店に行ったけど、良い本屋さんやね。品揃えもだし、陳列の仕方もいい! 読みたい本がちゃんと固まって並んでて、また近々ゆっくり本買いに来よ〜と思いました。終わって、末井さんと神蔵さんと編集者のY田さんと、最前列にいた例の怖い大御所さんたちが打ちあがっていらっしゃる中華屋さんへ合流。この怖くて愉快な大御所さんたちは末井さんの古くからの仕事仲間やお友達とのことで、改めて末井さんのその生き様というか、交友関係の幅広さといゆうか、でもそれも末井さんの人望や人徳のたまものなんやろうなあとしみじみ感じた。『素敵なダイナマイトスキャンダル』『結婚』あと『自殺』も読めば、末井さんが如何に凄まじい修羅の道を潜り抜けてこられたすんごい方かわかるのに、末井さんは常にとても穏やかでわたしみたいな若造にもちゃんと真摯に向き合って話してくださるし、そしてこの日が68歳最後の夜だったらしく、まもなく日付がかわるとお誕生日で69歳だとのこと! TACOの山崎春美さんの歌うブルージーなハッピバースデーでみんなで乾杯した。トークの中で、わたしがいちばん印象に残ってそして、自分にもたいへんためになるお言葉だと思ったのが、「人生はちんちん期以後ですよ!」という名言。まあちんちん期とかはわたしが勝手に言いだした言葉やけど、末井さんはご著書にもあるよう、もともとはすごく不倫しまくりで、それはちんちん期だったから仕方がなかったらしく、わざわざちんちんを満たすために、飲みの後女の子を送っていくよ〜と言いながら埼玉の奥地までタクシーでお金かけて送って行ったりしてらしたそうで、今は全くそうゆう気にならないからとても楽、とおっしゃっていた。そう、ちんちん期が過ぎた男性がわたしは好きなんやわ、ととても納得した。わたしは50、60よろこんでとよく言っておりますが、本当にそうで、50代60代(別に70代でもよいです)くらいの方と接しているんがいちばん楽しくて、恋に発展してしまうのだけれど、彼らはもうだいたいがちんちん期が終わってて、終わってなくても終わりかけくらいだから、ちんちん圧力で迫ってこない、そして経験値も知識も豊富やから、知らないことをたくさん教えてくれておしゃべりしててすごく面白い。よって50、60よろこんでなのですが、末井さんも、そこよくわかってくださってて、そうやねんそうやねんっとひとりで膝を打ちまくりました。打ち上げにいたC子せんせいに、「さきこ、おじいさんがたくさんいるけど、どれがいいの?」とか聞かれて、各種取り揃えておられますけど、みんな驚異的過ぎてびびりまくりでまだちょっと選べませーんと逃げました。だって、上杉清文、秋山道夫、末井昭足立正生、伊達政保、山崎春美、怖すぎでしょう! しかもみんなだいたい既婚者でらしゃるし。そう、わたし、歌の描写でよく「不倫してたんだね、お辛かったでしょう」的な言葉をかけていただくことがあるのやけど、一応、不倫の経験はありません! 相手のパブリックイメージを傷つけないためとか何かしらの理由でいつもこそこそしなければいけない恋愛に苦しんでいたのやけど、もうそのこそこそする系のは卒業! 堂々と隣を歩いてくれる人しか好きになりませーん! と、なんの告白やねんて感じですが、とにかく強烈な人々と1日を過ごさせていただき、楽しかったけどもうおなかいっぱいっすーて感じで帰路。表参道まで、C子せんせいと編集者Y田さんといつも見に来てくれるウェブデザイナーのO野くんと歩いてたのやけど、実はY田さんはわたしの大好きだった雨宮まみさんの担当編集でもあったことが発覚し、最後の最後にうっと胸が詰まった、ところで駅についてお別れになった。なんか色々すごい日やった。

6.14水
わたしがなんでこんなに毎日執拗に誰が読むでもない日記を書き続けているかというと、半分意地になってるのもあるけど、末井さんの『絶対毎日スエイ日記』の愛読者だったのでそれもかなり影響されています。今日は朝から足立税務署へ、意を決して高額医療費還付が今年は一円も帰ってこなかったのでそれの相談をしに行った。すると、それ以前に確定申告(今年はネットで印刷して自分で記入して郵送でやったから不備がちょいちょいあった)の中に源泉徴収の部分の記入漏れがったらしく、それがめでたく帰ってくることになった。結構わたしくらいの生活水準やと1か月の生活費にはなるくらいの金額でヤッホーという気持ちで手続き終了し、税務署を後にしたのやけど、はて、高額医療費の方の話はなんやかんやで濁されたままやんけっと気が付いて、しかしわたしは13時からとある映像の音楽お仕事の打ち合わせが入ってたので、とりあえずいいやってことにして、指定の喫茶店へ行く。北千住もサンローゼがなくなってからいい喫茶店が全然なくてどよーんだったけど、先方が指定してくれた珈琲物語という喫茶店は、なかなか格式高く高級感もあって、でも家庭的な感じもあって、良い喫茶店やった。そこで、1年以上前にオッファー受けて、色々作ってお渡ししたのやけどある時から突然音信不通になったので、企画倒れかなんかやろう、そしてこちらには連絡もなしの、まあわたし位のレベルの個人事業主にはよくある扱いやからあんまり気にもしてなかったのやけど、急転し、6月中に映像の音楽をちゃんとレコーディングしなきゃになったので焦って色々スケジュールを確認&予算を確認。録音をU波さんに頼もうと連絡し、録音場所も某所に決めて空き日を確認。しかしわたし自身が、あれっこんな曲作ったっけ?くらいに忘れてしまってるので、来週のレコーディングまでに早急に思い出さないといけない! 打ち合わせは1時間ほどでおわって、どうせなら今日はレディ―スデーやし、封切直後の人気作でもいつもがらがらでゆったりみれるシネコン亀有アリオさんへ行き、『22年目の告白⁻私が殺人犯です⁻』を見た。入江悠監督の作品は何本か見てるんやけど、特に代表作とされているサイタマノラッパーシリーズがわたしにはちょっと緩すぎてあんまり好みじゃなかったので、正直これ、どうなんやろうかな〜と疑い半分で見に行ったのやけど、結果的に、すごくよかった! ザ・商業映画な感じもしっかり取り入れながら、緊張感の途切れないサスペンスもんを入江監督が撮るのか〜と不思議な感じもしたけど、要所要所で川瀬陽太さんとか出てくるし、宇野祥平さんがすごいグッジョブな使われ方をしていて、宇野さんの魅力がしっかり伝わってて、別に他人やけど勝手に満足した。見に行ってよかった。亀有アリオさんはまともな本屋がないってことを除くと、なかなか良い施設で、映画館ものびのび見れるし、入ってる洋服やさんも、おなじブランドでも渋谷パルコとかにあったら絶対入らんような店が、ここだと途端に敷居が低く感じてふらっと入れて、なんか真っ黄色の厚底のスニーカーが1500円やったから買ってしまった。夜はネットで都営住宅について色々調べた。けど、家族世帯の募集は色んな区でやってるけど、独居の募集はほぼない。そらそうか、孤独死されるのが目に見えてるもんね。ということで、折角おじいちゃんが助言してくれた都営住宅案はなくなった。ちーん。

6.15木
午前中、飯田さんと高円寺円盤で待ち合わせて、一日みっちり内職デー。のはずが、前夜から店主T口さんに鍵の件でメールしても返事がなくて、悪い予感がしたのやけど、やっぱりいつもの隠し場所に鍵はなく、とはいえ1時になったら店も開店するからそれまでお茶でもしながら、今後の打ち合わせをしましょうと上島珈琲に入る。我々IKAZUGOKEは10月末目標に、ラップのアルバムを作ります! ちゃんとわらびすこ舎を復活させて、流通もします! 売れるかどうかはわかりませんが、でも、作ります! とこれくらい宣言しておかないと、気弱なわたしたちは、どんどん先延ばしになっていってしまいそうで、そういうのはいちばんよくないから、もう、何が何でも出します! だって曲はもう一応全部ある。ボーカル録りはしないとやけど、たぶん飯田さんちで出来るし、こういうのは思い立ってやる気が湧いてるときに動き出さないと結局止まってしまうことが多いから、もう、絶対に作ろう! という打ち合わせをして、わらびすこ舎の流通ルートブリッジさんの担当さんに連絡したりなんやり。そうこうしてたらそろそろ円盤も開店してる時間になったので移動。T口さんにメールの件を問うと、昨日突然携帯がクラッシュして全部データーが飛んで大変やったらしい。それはしょうがない。ちょっと開始が遅れたけど、飯田さんと二人、一心不乱に内職をしてて、シャム双生児(両開きで中の大きなページにつながる本の部位)を残り全部作った。たぶん100部はあったのでふたりでかなりがんばったぜ☆ でもこれでもう在庫も終わりか、いや、各店舗で大量に売れ残ってるのは目に見えてるのだけど、これはまあまあ良い出荷状態なのではないか! そうやって自分らを鼓舞するしかモチベーションが保てない。何故なら我ら著者はこの内職作業は時給ゼロ円でカニコーセン以下の身分だからであーる。まあ、たのしく内職してるからいいんやけどね。そんなこんなでおつかれってことで、18時半くらいに円盤を出て、近くの四文屋で飲んだ。奥に座敷があるいい四文屋やった。四文屋のにいちゃんに「おねえさん歌うたってる人っすよね」ってたぶん顔ばれした。わたしは今日は完全に気が抜けており、パジャマに限りなく近い恰好ですっぴんで寝ぐせもじゃってたので、急に恥ずかしくなった。四文屋で次回の母親教室の打ち合わせを結構根詰めてやった。飯田さんがあらかじめ自分のヒストリーを箇条書きしてくれてたからやけど、質問しながら、どうしてこんな風な飯田さんが形成されていったのか、その糸口がちょっと見えてきた気がした! ところらへんで、わたしが頼んだウーロン茶がまさかのウーロンハイやって、わたし気づかずにごくごくッと結構飲んでしまい、そこから身体に力が入らなくなって急激に眠くなってしまい、たったの一口でこんなにあかんねんや……と改めて自分の下戸っぷりを確認。まじでちょっと今日はあかん感じになったので、打ち合わせも中途半端やけど帰ることにした。

6.16金
朝、労働先に出勤すると、ニューメカが導入されており、今まで全部伝票も手書きで、厨房にオーダー伝えるのも口頭のみ、という原始的なシステムをとっていたのやけど、何故かどうゆう風の吹き回しかわからんけど、所謂居酒屋のようなパソコンがデシャップに鎮座しており、そこへ打ち込んで、でも喫茶店らしさを守るために何故か手書き伝票も同時に書かねばならず、要するに二度手間やし、おまけにそのメカの使い方をちゃんとわかる人がおらず、また聞きのまた聞き状態で、色々大混乱。おまけにランチタイムからは新人さんとふたりでそのわけわからんメカを操りながらランチピークを回さないとあかんくて、色々たいへんすぎて死んだ! いつもの4倍は働いた気持ち。ぐったり疲れ果てて帰宅。何をする元気もおきず、ベッドでK井K夫さんが貸してくれた本を読んでいたらこれがすごいドドドド変態でおもしろくて、宇能鴻一郎という人、わたし今まで知らなかったのやけどハマった!

異形(いぎょう)の白昼 (集英社文庫)

異形(いぎょう)の白昼 (集英社文庫)

ベッドに転がって、うおーとか感動してたら、宅急便が来て、今朝注文したニュートイピアノがやってきた! ひゃほーいっとテンション上がって早速あけてちんとんちんとん弾いた。見た目の可愛さも100点、音の響きも100点。いいもの買いました! でももう夜なのでさすがに自粛してベッドに戻った。
KAWAI アップライトピアノ ブラック

KAWAI アップライトピアノ ブラック

6.17土
今日は予定が一個消えたので全くなんにもないひさしぶりの日。ひきこもるぞーと決心。とはいえ、文章の宿題があるので、まだ締め切りは先やけど、張り切って書き始めると結構筆が乗ってきて、エッセイの原稿一個仕上がった。で、もう一個の方、こっちはお題が特になくてなんでもいいといわれており、そういわれると余計に書きにくいので断ろうかと思ってたけど、ほんとお金がないので、雀の涙とはいえ原稿料下さるんやったらなんでも書きますよって状態やので、脳みそ搾りだして、『裸の村』のスピンオフ小説を書いた。絞り出したわりに意外と面白い感じに書けた。し、少なからず本編『裸の村』の宣伝になればいいなあ。一日にふたつも原稿書いちゃって、わたしったら優等生やんかーと自画自賛して自分を鼓舞。夜になって、あーもう今週は唐組ないんや〜と突然唐組ロスのような心境になって、今頃は長野公演か〜。追いかけたい気持ちもあったけど現実的にお金が無理やな〜とか、ツイッター越しに流れてくる紅テント情報をよだれ垂らしながら見ていた。

6.18日
朝5時からお風呂で髪をざくっと切った。昨日書いた原稿を読み返して、これでいいっしょと思ったのでエイヤッと先方に送信。そのあと部屋を片付けたりして、その間窓あけっぱなしにしてたら(穴空いてるけど網戸は閉めてた)コバエがどんどん入ってきてて、気づけば家の中、コバエがいっぱい飛んでる状態。最悪。わたしは別に噛まない刺さない虫やったら怖いとかきもいとかは思わないのやけど、イチイチ顔の前にやってきてかまってちゃんしてくるのでコバエちゃんは鬱陶しい! 昼から長靴履いてはるばる元町中華街へ。神奈川芸術劇場通称KAATで、劇団サンプル最期の公演『ブリッジ』を見に行った。ちょっと早くついたけど雨やから赤い靴履いてた女の子見に行くのもあれやし、中華街の方になんとなく出てきたけど、ひとりで中華貪る気も全く起きず、しばし遭難してたら、喫茶ブラジルという古くて小さい喫茶店を発見し逃げ込む。小さいので最初、タクシーの運ちゃんぽいおっさんと相席やったけど、おっさんすぐ出て行ったのでわたしはゆっくり読書さしていただいた。この店、なんか色々おもろいなとおもたら、BGMが一切なく、無音やけどちゃきちゃき働いてるカタコトのおばあちゃんふたりが結構元気にずっとしゃべっておられる。それがもうBGMて感じで、おふたりはたぶん中国の方なのかなあ、しゃべるテンポやノリがおばあちゃんやのにすごい高速で、しかもたぶん怒ってるわけではないのやろうけど常にちょっと怒ってるみたいに聞こえて、ふたりの関係性なんかを想像してたら、姉妹? なのか、夕飯の相談をしはじめて、どうやらコロッケに決まったそうです。そんなこんなでBGMおもしろすぎて読書はあんまりはかどりませんでした。ええ頃合いになったのでお会計してKAATの方へ。KAATへくるのは二回目やけど、前もサンプルを見に来たときやった、そして、その日も確か雨やった。そんなことを思い出して、客席へ。舞台にはふんわりと白くておっきい不織布をぶら下がってて、越後妻有でご一緒したときの記憶が蘇った。今作『ブリッジ』はコスモオルガン協会という謎の宗教団体のセミナーぽくはじまり、教祖は古舘寛治さん演じるジョージ(でも突然神が憑依したときは名前がピグマリオン様に代わる、そして口調もべたべたの関西弁に代わる)で、ジョージは子どものときに事故で腸が破裂して豚のハナコの腸が半分くらい入ってるから、うんこからすごいなんにでも効く魔法のコスモパウダーが発明され、それを聴講者(=観客?)に事あるごとに売りつけようとしてくる。教団の他の人々も、自分がジョージ様と出会ったいきさつをそれぞれが説明してゆき、みんな「そしてわたしはジョージ様に救われたのです!」的なことを順番に説明してゆく、きっと大きな宗教団体や、あとアムウェイ的なビジネスのセミナーと似たようなことが展開されてゆき、なんか我ら観客はセミナーに参加させられてるような気分になってくる。この手の団体によくある(のであろう)みんな教団内部ではわりとみんなセックスしまくってて、セックス教団並みのことをしているのに、教団内で結婚という契りを交わした二人だけは、肉体的に交わってはいけないことになっていたりで、セックスってなんなんやろってだんだん思えてきて、あとすんごい特殊なセックス、うまく説明できないけど女性はぺニバンをつけて、お互い前の穴と後ろの穴を両方使ってするカタツムリの交尾を参考にしたらしい謎の体位のセックスとかあって、色々吹き出して笑う場面もあるのやけど、これ笑っちゃっていいの?感がやっぱりどっかにあって、あんまり客席、どかんどかんと受けている感じではなかった。わたしはわりと声出して笑った。でも今回、いちばんわたしがグっときたのは(辻さんを除くと)サンプル唯一の女優の野津ちゃんの、生き物としての切なさがすごいしょっぱなから出まくってて、野津ちゃんの変な動き(ダンス?)は見てる方がダンスと形骸化していいのかすらわからない、多動症の子供そのものにも見えるから、野津ちゃんに目が行くとすごいなんか泣けてきちゃって、最後、そんな野津ちゃんがマイクを握ってコスモオルガン協会10周年ありがとうございました!てゆって、おじぎしたらゴツンて頭打って、そして100年後の世界、みんなめでたくモツコスモの世界に行けてるのやけど、野津ちゃんだけがその外側で不思議な動きをしながら、モツコスモ(要するに肛門からひっくり返った腸の中に暮らしているということになります)の皮膜を触ってて、ひとりだけ外側に取り残されたんや、とか勝手に思ったらなんかめっちゃ泣けてきて、松井さん、最後の最後にこんな、泣かしにかかるなんてずるーい!とか思った。けど、これはわたしがちょっとサンプルに関わらせてもらって、普段の野津ちゃんと松井さんの関係を見ちゃってるからってのもあったのでしょう。なんかまだあと一週間公演あるのに堂々とネタバレを書いてしまった気もするけど、モツコスモてなんやんって感じで意味わからんと思うので、たぶんこれから見る方にも問題ないと思いますたぶん。あと美術はすごいシンプルなんやけど、影絵の演出とか、越後妻有でご一緒させてもらったときのを彷彿してなんか懐かしかったし、不織布やビニールや掃除機のホースのような所謂ゴミに近いものを大量に使って美術にするお決まりの感じも、あと、キャラバンてゆって、リヤカーみたいな上に団員たちが乗って運転手が自動車ごっこみたいに輪っかを回して、野津ちゃんがシャボン玉を吹き、羽場さんが日傘をさして進んでいく絵がすごくドリーミーで可愛くて、でもこれも過去のサンプル公演で本物のトラックの荷台を使ってやったお芝居(わたしは見れていない)の思い出めぐりみないな気がしちゃって、今作はほんとに、作演出の松井さんが劇団という団体としてやりたかったことの集大成なんかなあと思ったら、なんかそれもまた切なくなってきて、あかん、わたし涙もろいの? いつでも冷徹、冷血漢の北村で通してきたのに! 的な気持ちになってしまった。アフタートークで松井さんと、作家の村田沙耶香さんがゲストで出ておられて、ふたりはすごく色々親近感湧きまくりで意気投合しまくりなそうで、わたし村田さんの作品のファンなので、確かに『消滅世界』とこの『ブリッジ』は結構交差するところがあって、セックスてゆう行為の無意味性とかが同じ扱われ方をしてるなーて思ったりして、ほんでおふたりで話しながら松井さんが「あっ今の言葉すごくグっときました!」て突然他人事みたいな反応をしてから即撤回して「いや、今の俺が書いたセリフか、だからドキっとしたのか!」みたいにちょっと天然でボケてはって笑った。近くの中華屋さんでの打ち上げにも少しお邪魔させていただき、村田さんのものすごい早い性の目覚めの素敵な話をお聞きできたのやけど、これはさすがにこんなところには書けません! でも本当にめっちゃ衝撃的で、そんなことってあるのか!? 村田さんは芥川賞作家さんですが、やはり、本物は違う、もう出自から違うんやとしみじみ感じました。が、ここでも松井さんはすごく似たような行動をしておられたそうで、やっぱりこれだから本物はこわいっすーと思っちゃった(いい意味で)。しかしKAATは我が家からは1時間45分くらいかかってすごく遠く、帰りもいそいそと終電のため名残惜しくも先にお暇してしまった。帰りの電車で、松井周責任編集の雑誌「サンプル」を読んでたら、この10年の歩みが書かれてあって、その中にはわたしがお邪魔した越後妻有のことも野津ちゃんの日記に書いてあって、思い出したら懐かしくて、これまたちょっと泣きそうになっちゃった。わたしは決して涙もろい人間ではないのに。お芝居って、演劇って、映像と違ってあとに残らない、見た人の記憶の中にしか残らないから、すごく儚くてだからこそ魅力的で、わたしなんかは演劇の流れに慣れてないので、1か月毎日一緒に稽古していた人たちと結んだ関係性が(お話の中の関係性と一緒に)楽日が終われば消えちゃうっていう、その儚さに耐えられなくて、越後妻有から帰ってきてしばらくずっと淋しくて泣いていたのやった。こうゆう演劇くらいでしか繋がらないであろう関係性の中に、10年のうちのほんの1か月だけでも交ぜていただけたことを感謝やなあと、雑誌「サンプル」を電車で読みながら思ったのでした。